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プロローグ

 こんにちは。初めまして。初めてここのサイトで小説を出した者です。・・・堅い話はここらにして、この物語の概要から。

 第一に、転生はありません!以上!・・・だけだったら怒られるんでしょうね、きっと。

 

 それでも、ここのサイトの小説や、それを題材にした漫画などで色々読ませてもらっている身としては、「転生物ではない」という大前提がある小説は割と少ないような印象があります(社会経験の少ない自分が何を言っているんだか、とは思ってはおりますが)。

 それでも、面白い事には変わりありません。ただ、今の流行りが「令嬢物」であるのも事実、一昔前では「ざまあ」・・・だったりするのでしょうか(今でも多い訳ですが)。そう考えると、この作品のジャンルでもある「SF」は、割と薄い印象があったりするのでしょうか・・・(シャンフロやリュートさんの宇宙傭兵などの話は別ですよ?!)。とはいえ、書いてしまったのも事実。ならいっそ、読んでもらえればと。

 という訳で、SF軍記物語、「ネメシスの空」、開幕いたします。読者の皆様、どうか暖かい目で見守ってくれたら幸いです。それでは、それでは・・・。

「ええい、このポンコツ!」

 そのパイロットは悪態をついた。無理もない。これは彼―カルロスにとって初めての「空気の壁」だったのだから。機体の制御がうまくいかず、手動の操縦系が暴れるように反応する。エースパイロットの彼が大気圏突入ぐらいでパニックになっていたら、滑稽に映っているのかもしれない。記録映像を見る後世の人々には、だが。


 ブルージェット。それは宇宙空間に向けて放たれた雷の一種で、カルロスを追い詰めた根本的な原因だった。ただ、それはあくまで自然現象であったから、悪態をつくしかなかった。たかが雷。それも大気圏突入中ときた。カルロスはおろか降下作戦に参加している他の同僚パイロットでさえ経験したことのない事態だった。


 しかしながら、実害があったのはカルロスの機体の電子機器及び制御機能のケーブルの一部が焼き切れていたのみで、同僚の機体には何ら影響はなかったが。後日、絶縁体で覆っていなかったことが判明し、昇進が決まったとばかり思いこんでいた設計者・・・ミッチ・ハーグレイブ大佐は全責任を押し付けられてしまうこととなるが、そんなことはカルロスが知る由もなかった。


 高度計にも視線が映る。だが、それは想定値どころか、もはや意味を成さない。はっきりと「誤り」と言える数値だった。

「高度マイナス五千メートル?!駄目だ!狂ってやがる! どうして・・・どうしてこうなった?」


 そして「ポンコツ」呼ばわりされた戦闘機や操縦系統、制御補助AIに対する怒りをカルロスは抱きながら重いハンドレバーを一気に引き、必死になって内部温度を確認した。九〇度。それは戦闘機にしては―というよりも人が乗っている上では絶対にありえない数値だった。戦闘機の耐久性がその温度を完全に防ぐことができていない証拠であったためである。


「畜生!なんで!なんで!なんで・・・なんでこうなってんだよおお!」


 これに加えて皮肉なことにパイロットスーツの内部ですら五〇度越えのサウナだった。完全宇宙活動仕様ではなく、あくまでも「戦闘中に不快感を与えない」という名目のもと、極限までに軽量化した戦闘服であったためである。ここまでだと聞こえはいいが、実際は軍部があまりそういったところで予算を使いたくないからだった。


 一〇分くらい経ったであろうか。彼には、もう悪態をつく気力すらなくなってぐったりしていた。が、暑さで薄れゆく意識の中、一つの叱責が彼の意識を再び現実に呼び戻した。


「カール!!入射角度!このままだと消し炭よ!」

 いつもは口うるさい味方のパイロット・・・レベッカの忠告に、カール、と呼ばれたカルロスは心外ながらも感謝した。彼女もまた、降下作戦に参加していた。


「あれ・・・あったろ。あのボトル・・・ビールが一〇本くらい残ってるやつ。コールと二人で山分けしても・・・いいぜ。」

「ちょっと!それ絶対に死んでしまうドラマの親父みたいなのセリフじゃん!馬鹿!早まらない!・・・そんなにまずいの?」

「大したことはない・・・ただ機体の内部がありえないくらい熱くなってしまっただけだ。すぐ直る。」気力なしに言ったカールの声は枯れていた。


 いつの間にか、自分の元にあった端末、〈ホワイトスクエア〉が起動状態になっていた。それはあまりにも遅すぎる目覚めで、大気圏がもうすぐ終わるところに来ていた。


「畜生、遅いじゃないか。おおい、ホワイトスクエア。」

 ディスプレイに表示される画面の右端が白を基調とした、ルービックキューブのようなロゴが表示された後、そのロゴが話しかけてくるかのように、

「はい、お帰りなさいませ、ご主人様。」と。ふざけているのかそうプログラムされているのかはわからない。とにかく「半死人」の彼にとっては予想以上のイヤミでしかなかったが、反論することでさえままならなかった。

 もし元気だったら、三〇パーセントの皮肉と七〇パーセントのイヤミでただの機械相手に愚痴を言い続けるのだろう。機械相手に。


「ホワイトスクエア、軌道をこのままキープ。メーターを再設定。そして・・・着陸までのすべての動作権限を一時的に譲渡する。」

「了解」


 そんな無機質な音声でAIは言い放つのと同時に、彼は死んでいるかのように気絶してしまった。

「カール!カール!応答して!!」

 大気圏突入で周りの音がうるさいせいなのだろうか。僚友の声がしなくなったことに気づいたレベッカの悲痛な叫び声だけが、虚空に響いていた。そして諦めがついたのか、レベッカは自分の操縦に注意し、他の味方の様子をうかがった。幸い他は雷のあおりを受けなくて飛行には影響はなく大丈夫そうだった。

 

 それに、カールの機体の姿勢も安定していた。あいつ、AIに制御を任せて寝ているな、とレベッカは思った矢先、カールの機体は徐々に離れていくではないか。

「ちょっと、え?!どういうこと?!カール!いい加減にして!予定進路を大幅に超えてるわ!どこ行くかもわからないのよ!・・・もう!」


 レベッカは母艦の艦長に無線でこう報告した。

「カールの機体に雷が接触!進路がずれてしまっている模様!これよりレーダー捕捉による強制飛行コントロールの必要性を訴えます!艦長!許可を!」

「構わない!巻き込まれて死ぬなよ!」


 と公で言ったのはここまで。これは無線を切った後に言ったセリフである。

「ミッチの豚野郎が!あいつの設計したポンコツでカールの奴が死んだらどうする・・・!」と。これが流出したのはカールたちの母艦・〈マーシャル6〉が解体された時で、ブラックボックスにあったものだという。


「全く、こういう時だけがさつなんだから・・・カールは!」

 レベッカはそう悪態を吐いて、その任務を実行しようとした。


 この雷があったか無かったかで未来が変わってしまうことには皮肉が禁じ得ない。それも、降り立とうとしているのは地球ではなく、別の惑星・・・人類は、これを第二の地球と勝手に言ってはいるが。これは念願の降下作戦でもあり、人類の希望を背負っているものでもあった。ここで死なせるわけにはいかない―レベッカはそう思った。そして、カールの方向へ思い切りハンドルを握った。


 これは、過去幾ばくも無い程繰り返された歴史のサイクルの一かけらになるのだろうか。栄光か、繫栄か、そして破滅か。今、それを知るものは「神」と呼べる存在なのかもしれない。だが、今は誰にもわからなかった。

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