朝食の風景
「コケコッコー」「コケコッコ」「コケコケコケッコッコー」「コケッコーコー!」「コケ」「コケッコーッコケ」
早朝からニワトリ達の大合唱が聞こえてくる。大変うるさいがウルススの家は街の郊外にあり。近所迷惑にはならない。
「ん、朝か……」
ウルススはソファーで眠りコケているのに気付き飲みすぎだなと自戒する。毎日自戒する。ソファーから身を起こし、強ばった身体動かす。ティアの好感度が上がったのか毛布がかけてくれたと思われるものが落ちた。酒量を加減しないと、そのうち凍死なんて笑い話にもならない。死んだら誰がティアの面倒を見るんだと反省する。そろそろ沢山ある空き部屋も掃除したりした方がいいのかな、とか思うのだが、ティアもウルススも掃除が下手だった。
そのティアは朝に弱くてニワトリのやかましい鳴き声でも起きて来ない。朝食の用意はウルススの役割だった。ティアは他の炊事、洗濯担当。
まだ薄暗い外に出て外にある井戸から水を汲み、手酌で一口飲む。二日酔いの時の冷たい水ほど、美味い水は無いな、とぼんやり思いながら。肝臓に活性魔法をかけてアセトアルデヒドを分解する。二日酔いの気だるさから抜けると、木製のバケツに水を移す。2つのバケツをを家に運び、台所の水瓶に移すという作業を何回かこなし、今日の朝食は何にしようかとかんがえる。
沢山のニワトリを飼っているが、毎日卵を産んでくれる訳ではないので、薄く切ったベーコンとサラダと保存が聞く固い黒パンと質素な食事の時はティアの機嫌が若干悪くなる。焼きたての白パンとプレーンオムレツとサラダにスープが付くとすこぶる機嫌が良くなる。
「俺は黒パンの方が酸っぱくて好きなんだけどなぁ……」
誰に言うでもなく呟くと街のパン屋まで買いに行く。これも好感度を上げるためだと思うとすこしも苦ではない、財布にはダメージが入るが必要経費だと割り切る。
「ウルススさん、いつも早いですね」
若いパン屋の女主人に声を掛けられた。
「うちで寝ているお姫様の為ですから。ここのパンがお気に入りなんですよ」
ウルススはティアの事を外ではお姫様と呼称している。奴隷の為に買い物に足を運んぶご主人様など世間一般では存在しないからだ。
「うふふ、嬉しい事を言ってくれくれますね。試作品が出来たのぜひ持っていって下さい」
「嬉しい申し出ですが、あいにく代金以外に返せるものが……」
「お姫様の感想で構いませんよ、的確なアドバイスが貰えますし」
「そうですか、なら遠慮なく頂いていきます」
「また、いらしてくださいね」
焼きたてのパンを手に家路を急ぐ、万が一でもティアが起きていた場合、空腹で機嫌が悪いくなるからだ。いちいちどれ奴隷を機嫌を気にするご主人様もこの世界にはほぼ、そん存在しないのだが、ほぼというか居ないと思うが、ウルススはティアにベタ甘だった。
「あとはニワトリが卵を産んでくれれば最高なんだが……」
ニワトリは15匹ほどいるが、その内2羽はオスだ。順調に育っているので飼い方は間違っていないはずとウルススは思っていた。
ニワトリ泥棒も出ていない。仮にその泥棒は墓の中だろうが、
「新鮮な卵を手に入れる為にニワトリを飼うために街の郊外に家を買ったのは良かったのか、悪かった判断に迷うなぁ」
鶏小屋を確認すると卵が3個手に入れることが出来た。自分の判断は間違ってなかったとほくそ笑むのだった。
「……ご主人様。……おはようございます~」
ナイトキャップに寝巻き姿の無防備なティアが目を擦りながら挨拶する。
その姿に一瞬目を奪われて、平静を装い、
「おはよう、ティア」
「……すみません毎日朝食の準備させてるしまって。……ご主人様は朝が強くて羨ましいです」
「ニワトリに起こされてるだけだよ」
(ここで夜の方も強いぞとか言ったらセクハラ発言だろうな)
「…丸焼きを所望します」
「うるさいからって祝福祭でもないのに食べようとするな、あと丸焼きより美味しい食べ方を知っているから却下だ、却下」
「……それはどんな食べかたですか?」
「気になるか? 乞食鶏と言って羽をむしったニワトリを泥に包んで土に埋めて、その上で焚き火をして蒸し焼きにする食べ方だ。滅茶苦茶、美味いぞ」
「……全て空腹が悪いんです」
「待て待て、それ食べる前提で話してるだろ、それ」
「お腹がすきました。早く朝食作って下さい」
「はぁ、二日酔いは治ったのに頭が痛くなってきた……。やるならオスのニワトリにしてくれよ?」
「……。善処します」