7 むしのおんがえし
「やれやれ」
「あ!神さま!」
「おや、こっちにきたんかい」
「はい!もうたくさん子供を産みました!」
「ああ、そうかいそうかい」
「ところで、あのお兄さんはどうなりましたか?」
「ああ、お前さんの願い通り、なんだったっけ?胸が大きくて、よく尽くす女性と巡り合えるようにしたさ」
「まあ、神さまありがとうございます!」
「その後は、当人次第じゃの」
「良かった。あのお兄さんの人生って、不幸しかないって聞いていたから、不安だったんですよ」
「自業自得じゃと思うけど」
「でも、でも」
「うん?」
「私を助けてくれたんですよ」
「そうなのかい?」
「はい!」
神さまはあごの髭をしごきながら、首をかしげていた。
「偶然じゃないのかい?」
「いいえ、確かに私を見ていました」
「ほ~」
「私が血を吸い終わるまで、ジッと待っててくれたんです」
「ふ~ん」
「その後、お外に逃がしてくれました」
「そうかい、そうかい」
「だから、恩返しがしたかったんです!」
「そうかい、そうかい」
「神さま、ありがとうございました!」
「もう、行くのかい?」
「はい、お母さんが待っていますから」
「じゃあ、気を付けるんじゃよ」
「はい!」
虫は空に、飛んで行った。
どこまでも青い空の彼方へ。
ちなみにあのお兄さんの彼女になった女性は、実は大金持ちの一人娘で、彼の為に猛ダイエットに励み、ついに美女になり、二人は幸せになりましたとさ。