4 74女?
「離せ!」
「ちょ、ちょっと、落ち着いて」
「うるせえ!離せ!」
「少しだから、ほら、動かないで」
「離せと言ってる!」
「ね?すぐ済むからさ」
「やめろ!」
「ほら、抵抗すると痛いよ?」
「殺すぞ!」
「大丈夫、やさしくし・・・・」
急に顔が近付いてきたので、キスをするのかと思い、目を閉じた。
それが、いけなかった。
いきなり、鼻先を噛まれた。
「つ~、何すんだ」
すると、腕を絡め取られた俺は、あっさりとひっくり返された。
「ああ、騎乗位が良かったのか。それならはや・・」
いきなり、上段から殴られた。
「へ?」
「死ね」
また、殴られた。
いくら俺が紳士でも、女性に優しくても、いくらなんでもこれは無い。
「いい加減にしろ!」
また、殴られた。
手で鼻を拭ったら、血が出ている。
頭にきた。
調子に乗りやがって!
俺の優しさに付け込みやがってと思ったのも、ほんの束の間だった。
まったく、抵抗出来なかった。
「お前」
何と言うか、凄んできた。少し、いや、これはかなり怖い。
鬼か?
鬼だろう?
「お前が具合が悪いから、私に家まで送ってくれと頼んできたと思うけど?」
「ええ、そうです」
「ならなんで、私を押し倒そうとしたんだ?」
「え?だって、部屋に入ったんなら、もう合意でしょう?」
また、殴られた。
更に殴ろうとしてきたので、俺は慌てて手で制した。
「ちょ、ちょっと待って」
「あ?」
「話しを聞いて。がはッ!」
また、殴られた。
「なあ、お前」
彼女は顔を寄せてきたけど、とても色っぽいシチュエーションでは無かった。
目が、本気で怖かった。
「は、はひ」
「具合が悪いっていう人をさ、家まで送るのってさ」
「は、はひ」
「親切って言わないか?」
「は、は、はひ」
「お前は私の親切心に付け込み、部屋で乱暴しようとした」
俺は必死に首を振ったら、また殴られた。
「ひ、ひはいはふ」
「そんな親切で優しい私を、お前は押し倒したよな?なあ、ひどくないか?」
「ひ、ひはひはふ」
「違わないだろう?」
またも、殴られた。これって、暴行って言わないか?
「スカートを下ろそうとしたよな?」
俺は首をふるふる振った。
違う、スカートの中の下着を脱がそうとしただけど、この状況では何も言えない。
「誤魔化すなよ?」
また、殴ろうとしてきたけど、何故かそこで止まった。
「チッ!」
女性は舌打ちし、首をさすりながら俺の上から離れた。
俺は涙を流していたようだ。
「今度こんなことをやったら」
女性は俺の股間に足を置き、強く踏みつけた。
「!?○?☆?△×?↖↗?※?」
「潰す」
女性はそのまま、俺を蹴ってから、部屋から出て行った。
俺は一人、孤独に打ちひしがれていた。
「ひでーめにあった」
俺は傷口に絆創膏を貼りながら、寂しさに負けて呟いてしまった。
「優しさって、なんだろう」
俺はためいきをつきながら、心から思う。
「愛って、なんだろうなあ」
すると、どこからか声がした。
「少なくとも、お兄さんにそんなのは必要無いと思いますよぉ」
俺は咄嗟に、手で何かを掴もうとしたが、何も掴めなかった。
「残念です!」
俺の目の前を、ぶんぶん飛んでいる虫がいた。
「チッ!74女か」
「はい、そうですけど、何で分かるんですかぁ?」
「前にそう言っていただろう?」
「私、お兄さんとは初めてお会いするんですけどぉ?」
「え?」
「初めましてぇ」
「ええ?お前この前の虫じゃないのか?」
「はい、そうですよぉ」
「また新顔か」
顔はみんな同じにしか見えないけど。
「それで、何しに来た?」
「はい、お母さんから血を分けてもらうなら、お兄さんがいいって、そう聞いたので」
「はあ?」
「さあ、私に血をください!」
「断る!」
「ええ?お兄さんを助けたじゃないですかぁ?」
「はあ?いつ俺を助けた?」
「さっきのお姉さんの首筋を、噛んであげたじゃないですか?忘れたんですかぁ」
「へ?」
「結構、大変だったんですよ?殺気に満ちていたから。感謝してくださいね」
「本当か?」
「本当です。だから、私はお兄さんの命の恩人です。さあ、恩返ししてください」
「ふざけるな。あのままでも、俺は大丈夫だったんだ」
「あのままだったら、お兄さん死んでましたよぉ?」
「嘘言うな」
「だって、あのお姉さん本気でした。せーとーぼーえーで、やっとあの男を殺せるって神さまが教えてくれました。ところで、せーとーぼーえーって、何ですか?」
「え?」
せーとーぼーえーって、正当防衛のことか?
やっとだって?
「いや、そんな」
「あのお姉さん、本気でしたよぉ?」
「いや、いや、そんなことは」
「だって、お兄さんが抵抗出来なくなっているのに、何度も何度もお兄さんを殴りましたよね」
「ああ、たしかに」
「殺意で心が一杯でしたよ」
「本当か?」
「本当です」
「何で分かる」
「血を飲めば、分かるんですよ。偉いでしょう」
「え?本当?」
「だから、私は命の恩人です!」
何かおかしいけど、実際、俺の股間を踏みつけていた時のあの女の顔は、どこか恍惚としていたような気がする。
・・・・・・・つまり、Sか?
「まあ、いい。でも、血はやらん」
「え~、どうしてですか?」
「嫌なモノは嫌だ」
「この恩知らず!」
「うるさい。お前、じゃなかった、お前の母ちゃんと、ええっと、ばあちゃんか?に、俺は酷い目に遭わされた。三度目はもうゴメンだ」
「言いがかりですよ、それは」
「言いがかりも何も無い。死にかけたんだぞ?」
「でも、クズじゃなかった、お兄さんは死ぬはずだったって、神さまはおっしゃってましたよぉ?」
誰だ、その神さまは?
と言うか、人のことをクズ呼ばわりか?
人をクズ呼ばわりする奴の方が、クズじゃないのか?
人の悪口を言う奴なんて、最低だと思うぞ。
神さま失格だ!
出てこい。
いや、出てきたら怖いけど。
「だいたい、俺のお願いはどうなった?」
「お願いですか?」
「そうだ」
虫は首をこてりと傾けているが、何と言うかシュールだ。
「私、知りませんけどぉ?」
「教えてやる」
「はあ」
「結婚相手が欲しい」
「はあ」
「俺にだけ優しくて家事が出来て、あと、Fカップで以上の巨乳で、スタイル抜群で、黒髪ロングヘアで清楚で美人な女だ」
「はあ」
「ああ、あと、金持ちな。これ、必須」
「はあ」
「はあじゃない。約束は約束だ。血が欲しければ、俺の願いをかなえろ。でなければ、殺虫剤を撒いてやる!」
「ちょ、ちょっと。私、聞いてませんよ?」
「知るか!俺は機嫌が悪いんだ!」
「自業自得ではぁ?」
「ああ?」
「ちょ、ちょっと、殺虫剤を向けないでくださいよ」
「殺されたくなければ、すぐに美人を用意しろ!」
「お兄さん、最低ですね」
「うるさい!俺は必死なんだ!」
そう、俺は必死なんだ。
誰か、俺に愛を・・・・。
Fカップ美女を俺に