表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

4 74女?

「離せ!」

「ちょ、ちょっと、落ち着いて」

「うるせえ!離せ!」

「少しだから、ほら、動かないで」

「離せと言ってる!」

「ね?すぐ済むからさ」

「やめろ!」

「ほら、抵抗すると痛いよ?」

「殺すぞ!」

「大丈夫、やさしくし・・・・」

 急に顔が近付いてきたので、キスをするのかと思い、目を閉じた。

 それが、いけなかった。

 いきなり、鼻先を噛まれた。

「つ~、何すんだ」

 すると、腕を絡め取られた俺は、あっさりとひっくり返された。

「ああ、騎乗位が良かったのか。それならはや・・」

 いきなり、上段から殴られた。

「へ?」

「死ね」

 また、殴られた。

 いくら俺が紳士でも、女性に優しくても、いくらなんでもこれは無い。

「いい加減にしろ!」

 また、殴られた。

 手で鼻を拭ったら、血が出ている。

 頭にきた。

 調子に乗りやがって!

 俺の優しさに付け込みやがってと思ったのも、ほんの束の間だった。

 まったく、抵抗出来なかった。

「お前」

 何と言うか、凄んできた。少し、いや、これはかなり怖い。

 鬼か?

 鬼だろう?

「お前が具合が悪いから、私に家まで送ってくれと頼んできたと思うけど?」

「ええ、そうです」

「ならなんで、私を押し倒そうとしたんだ?」

「え?だって、部屋に入ったんなら、もう合意でしょう?」

 また、殴られた。

 更に殴ろうとしてきたので、俺は慌てて手で制した。

「ちょ、ちょっと待って」

「あ?」

「話しを聞いて。がはッ!」

 また、殴られた。

「なあ、お前」

 彼女は顔を寄せてきたけど、とても色っぽいシチュエーションでは無かった。

 目が、本気で怖かった。

「は、はひ」

「具合が悪いっていう人をさ、家まで送るのってさ」

「は、はひ」

「親切って言わないか?」

「は、は、はひ」

「お前は私の親切心に付け込み、部屋で乱暴しようとした」

 俺は必死に首を振ったら、また殴られた。

「ひ、ひはいはふ」

「そんな親切で優しい私を、お前は押し倒したよな?なあ、ひどくないか?」

「ひ、ひはひはふ」

「違わないだろう?」

 またも、殴られた。これって、暴行って言わないか?

「スカートを下ろそうとしたよな?」

 俺は首をふるふる振った。

 違う、スカートの中の下着を脱がそうとしただけど、この状況では何も言えない。

「誤魔化すなよ?」

 また、殴ろうとしてきたけど、何故かそこで止まった。

「チッ!」

 女性は舌打ちし、首をさすりながら俺の上から離れた。

 俺は涙を流していたようだ。

「今度こんなことをやったら」

 女性は俺の股間に足を置き、強く踏みつけた。

「!?○?☆?△×?↖↗?※?」

「潰す」

 女性はそのまま、俺を蹴ってから、部屋から出て行った。


 俺は一人、孤独に打ちひしがれていた。

「ひでーめにあった」

 俺は傷口に絆創膏を貼りながら、寂しさに負けて呟いてしまった。

「優しさって、なんだろう」

 俺はためいきをつきながら、心から思う。

「愛って、なんだろうなあ」

 すると、どこからか声がした。

「少なくとも、お兄さんにそんなのは必要無いと思いますよぉ」

 俺は咄嗟に、手で何かを掴もうとしたが、何も掴めなかった。

「残念です!」

 俺の目の前を、ぶんぶん飛んでいる虫がいた。

「チッ!74女か」

「はい、そうですけど、何で分かるんですかぁ?」

「前にそう言っていただろう?」

「私、お兄さんとは初めてお会いするんですけどぉ?」

「え?」

「初めましてぇ」

「ええ?お前この前の虫じゃないのか?」

「はい、そうですよぉ」

「また新顔か」

 顔はみんな同じにしか見えないけど。

「それで、何しに来た?」

「はい、お母さんから血を分けてもらうなら、お兄さんがいいって、そう聞いたので」

「はあ?」

「さあ、私に血をください!」

「断る!」

「ええ?お兄さんを助けたじゃないですかぁ?」

「はあ?いつ俺を助けた?」

「さっきのお姉さんの首筋を、噛んであげたじゃないですか?忘れたんですかぁ」

「へ?」

「結構、大変だったんですよ?殺気に満ちていたから。感謝してくださいね」

「本当か?」

「本当です。だから、私はお兄さんの命の恩人です。さあ、恩返ししてください」

「ふざけるな。あのままでも、俺は大丈夫だったんだ」

「あのままだったら、お兄さん死んでましたよぉ?」

「嘘言うな」

「だって、あのお姉さん本気でした。せーとーぼーえーで、やっとあの男を殺せるって神さまが教えてくれました。ところで、せーとーぼーえーって、何ですか?」

「え?」

 せーとーぼーえーって、正当防衛のことか?

 やっとだって?

「いや、そんな」

「あのお姉さん、本気でしたよぉ?」

「いや、いや、そんなことは」

「だって、お兄さんが抵抗出来なくなっているのに、何度も何度もお兄さんを殴りましたよね」

「ああ、たしかに」

「殺意で心が一杯でしたよ」

「本当か?」

「本当です」

「何で分かる」

「血を飲めば、分かるんですよ。偉いでしょう」

「え?本当?」

「だから、私は命の恩人です!」

 何かおかしいけど、実際、俺の股間を踏みつけていた時のあの女の顔は、どこか恍惚としていたような気がする。

 ・・・・・・・つまり、Sか?

「まあ、いい。でも、血はやらん」

「え~、どうしてですか?」

「嫌なモノは嫌だ」

「この恩知らず!」

「うるさい。お前、じゃなかった、お前の母ちゃんと、ええっと、ばあちゃんか?に、俺は酷い目に遭わされた。三度目はもうゴメンだ」

「言いがかりですよ、それは」

「言いがかりも何も無い。死にかけたんだぞ?」

「でも、クズじゃなかった、お兄さんは死ぬはずだったって、神さまはおっしゃってましたよぉ?」

 誰だ、その神さまは?

 と言うか、人のことをクズ呼ばわりか?

 人をクズ呼ばわりする奴の方が、クズじゃないのか?

 人の悪口を言う奴なんて、最低だと思うぞ。

 神さま失格だ!

 出てこい。

 いや、出てきたら怖いけど。

「だいたい、俺のお願いはどうなった?」

「お願いですか?」

「そうだ」

 虫は首をこてりと傾けているが、何と言うかシュールだ。

「私、知りませんけどぉ?」

「教えてやる」

「はあ」

「結婚相手が欲しい」

「はあ」

「俺にだけ優しくて家事が出来て、あと、Fカップで以上の巨乳で、スタイル抜群で、黒髪ロングヘアで清楚で美人な女だ」

「はあ」

「ああ、あと、金持ちな。これ、必須」

「はあ」

「はあじゃない。約束は約束だ。血が欲しければ、俺の願いをかなえろ。でなければ、殺虫剤を撒いてやる!」

「ちょ、ちょっと。私、聞いてませんよ?」

「知るか!俺は機嫌が悪いんだ!」

「自業自得ではぁ?」

「ああ?」

「ちょ、ちょっと、殺虫剤を向けないでくださいよ」

「殺されたくなければ、すぐに美人を用意しろ!」

「お兄さん、最低ですね」

「うるさい!俺は必死なんだ!」


 そう、俺は必死なんだ。


 誰か、俺に愛を・・・・。



 Fカップ美女を俺に

 






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ