目出し帽子のヒーローは雪山を望まない
「第5回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」への応募作品です。
たぶん最初にかぶったのはニットのボンボン帽子。
古びた写真の中で、母の腕に抱かれたオレがかぶっていた。
辛うじて覚えているのは幼稚園の時の黄色い通学帽
ハッキリ覚えているのは、小学生の時、赤白帽子を両側とも引っ張り出してツバで角を作り、ヒーローやお侍を真似た。
けっこうマジでなりたかった。
皆を守る正義の人
皆からたたえられるヒーロー
野球チームの帽子もかぶったな……好きな選手を真似て目深にかぶった帽子のツバをちょっと持ち上げて打席に立った。
しかしバットは空を切るばかりだったので……
当たれば儲かる漫画家を目指した。
ベレー帽をかぶりGペン持って斜に構えると芥川龍之介並みにイケていた!!
でも女の子にモテるのはミュージシャン!!
同じ黒でもディランやレノンが被っていたキャスケットよりスラッシュがかぶっているシルクハットの方がクールだと思ったのに!!
「チンドン屋か?バカ!!」と野次られ、そいつの頭にギターを振り下ろした。
「ジーンシモンズが持ってた斧の様なギターならもっと良かったのに!!」と公判でイキがっていたら保護処分期間が延び、それだけ虐められる期間が長くなった。
そんなオレの保護司になってくれた社長は……オレの事を公私共に本当に良く面倒を見てくれた。
オレの両親なんかよりよっぽど親身で……今、思い出しても泣けてくる。
だからオレは目出し帽をかぶる。
そして雪山を見上げる代わりに御大層な銀行の看板を見上げる。
社長! 本当にゴメン!!
でも、どんな金でも金は金だろ?!
意識の無い社長の代わりに、オレが茜ちゃんを守るよ!!
あいつらクソ人非人どもから!!
今時の銀行にどれだけ現金があるかは知らねえが……銃、ぶっ放しゃ!“身請け”の金くらいなんとかなる!!
バカな死に様で構わない!!
オレ自身が納得できるヒーローにオレはなる!!
間抜けな目出し帽のヒーローに!!
お馴染みの“月曜真っ黒シリーズ”でもあります。
エロなし! R15なし!!で
今週も乗り切りました(^^;)
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