どうにでもなれ
「ばあ!」
「ん〜、」
「わあ!」
「ん〜?」
「わああああああ!」
うるさいなあ
「ん?だれ?」
「え?だから、夜また来るよって言ったじゃん。」
「ああ、そっか、さっきの人か。」
突然のことで驚いた。どうやら勉強に夢中になって気づかなかったらしい。気づいたら女の子が部屋の中にいた。今の声で、お母さん起きてないといいな。
「静かにね、お母さん起きちゃうから。」
「全然気づいてくれないんだもん。さっきみたいになんとなくで気配を察知するとかできないの?」
「…集中してたから。できないよ。」
「まあいいや!じゃあ行こっか!」
「ん?どこに?」
「どこって、楽しいところだよ。」
「え、なんで?というか、ダメだよ。」
ダメというか、普通そうじゃない?子供は夜に外出ちゃダメだし、そもそも、知らない人と二人きりもダメだし、怪しすぎるよ。
「え?なんでダメなの?こんなところ居たって楽しくないじゃない。コウエンとか、オカシヤサンとかさ、楽しいじゃん?」
「何言ってるの?お母さんに許可取らないと外にでちゃいけないし、お母さんにバレたらダメだし、そもそも初対面だよ?怪しいし。」
よく分からなくて、正直に言った。
「え?そんなこと?隠せばいいじゃん。ていうか私、怪しくないし。」
怪しくないって言う人が一番怪しいと思うけど。
………これ、夢か。あのまま寝落ちしたのか。最悪だ。どうりで不思議な感じがすると思ったんだ。今が夢ということは、さっきの昼の出来事も夢?かなり現実味を帯びていたけど、気のせいか。
夢なら、どうでもいいや。どうせ起きたら朝なのだから、この子と外に出てもいいな。夜に外に出る夢なんて初めて見るな。
「じゃあ、行こうかな。」
「お〜、急にいく気になったんだ。なんでかは聞かないけど、まあ行こっか。」
そう言うと、何も持っていなかった女の子の手に突然自分の靴が現れた。いつの間に玄関から取ってきたんだろう。
と、女の子が靴を私の机に置いた。え?まさか、窓から出る気?
「え、窓から行くの?」
「うん、その方が早いし。」
夢だからいいか、と思い靴を履き、屋根の上を歩いた。かなり不安定だったが、何か、楽しい?
「どう?初めての夜の外出は。」
女の子が問いかける。なぜ今日が初めてだとわかるのだろうか。ああ、夢だからか。
「う〜ん、初めて見る夢だなあ、と。」
「夢?何が?」
「え、今が。」
「は?何を言ってるの?すごく、とても、当たり前に、今、現実だけど。」
女の子の言葉に少し焦る。
「そんなわけないよ。夜に外を出るなんて、ましてや屋根を歩くなんて、夢に決まってると思うけど。」
ぎゅ〜〜
急に女の子が私のほっぺをつねってきた。
「いひゃい。」
痛い。私は急に冷静になった。いや、今までも冷静だったんだけども。なんというか、夢から覚めたような冷静さになった。
「でしょ?」
「ふん、いひゃいかゃ、はやふははひへ。」
「あ、ごめん。ちょっと触りごごちが良すぎた。」
私のほっぺって触り心地良いんだ。そんなことを考えるほど冷静だった。うん、現実、うん。
「どうしよ。」
「遊ぼう!」
違う違う、そうじゃない。ああ、でも…
「もう、どうでもいいや…」
囁きに近い独り言を言う。
「ん?どうしたの?遊ぶ?」
女の子はにっこりと笑って言った全てを見透かすように。
「いや、なんでもない、いや、なんでもなくはないけど、でもまあ、なんでもないや。遊ぶよ。よく分からないけど。」
「ふふーん、決定だね!じゃあこっちに来て!」
私は何も考えず、フラフラと女の子についていった。
この前お母さんに蹴られちゃった足、痛いなあ。そんなことも、考えていた。