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ノウノネ  作者: 淀川市
第一章
3/11

何がおかしい?

 やはり遅く家を出ると他校の子と出会うようで、学校へ向かっているとこの前とは別の集団が話しているところを見かけた。

「次の日曜日何する〜?」

「私はお父さんにユウエンチに連れて行ってもらうの!」

「いーなー、うちは山登りだよ。なんだよ今時山登りって。」

「私は外に出るの嫌だから家でゆっくりユーチューブでも見るんだ。」

「いいね〜。」

と、まあこんな話を長々と続けていた。ほとんどの言葉の意味が分からなかった。今日お母さんにあの言葉の意味を聞いてみよう。

というか、土曜日と日曜日に勉強しないなんて、随分頭がいいんだろうな。もうすぐ受験なのに。

 結局この日もぼーっとしながら過ごした。お母さんに怒られたくないので起きてはいたが授業は全く聞かなかった。

 暇だなあ。なんで学校来てるんだろう。今すぐにでも帰って社会とか理科とかやりたい。

 暇を解消するため、アジアの国をぶつぶつと唱えていたら、前の席の人からうるさいって言われた。で、今度はヨーロッパの国を唱えた。これが意外と功を成して、気づいたら授業が終わっていて、みんな帰る準備をしていた。あ、ちなみにアフリカと北アメリカと南アメリカの国も唱えた。

 今日もまた誰かと話すでもなく、家に直行した。

「ただいま。」

誰かからの返事はない。当たり前のことだけど。

でも、二階から物音がしているのでお母さんがいるのだろう。

 たまに思うのだが、お母さんは仕事なるものをいつしているのだろうか。私が知る限りずっと家にいる。在宅ワークかな?とも思ったが、そんな気配もない。もしかしたらしていないのかな?まあ実際に聞く勇気なんて毛ほどもないし興味もない。あ、興味といえば、あれお母さんに聞いてみなきゃ。

 ささっと服を着替え、二階のお母さんの部屋に行ってみた。ドアの前に立ち止まり、中の音を聞く。何も聞こえない。寝てるのだと思う。

コンコンコン

「お母さん?入ってもいい?」

ガサっと音がした後、「何?」というくぐもった声が聞こえた。

「あのさ、聞きたいことがあるんだけど。」

「だから、何?」

寝起きのようだ。しかも、珍しく機嫌が悪くない。

「あの、ユウエンチって何?あとユーチューブも。」

「……」

?寝たのかな。

「どこでそれ知ったの?」

電撃が走ったみたいにゾワっと何かが体を通った。初めて聞くようなお母さんの猫撫で声。これは恐怖かな?不安かな?なんだろう…。

どちらにしろ、質問に答えなければお母さんの機嫌が悪くなることを知っているので答えるしかない。

「うん、えっと、今日学校行く時に他の学校の子の話が聞こえて…」

「ノウ?お母さんとの約束覚えてる?他校の子となんか話しちゃいけないって、お母さん言ったよね?ノウはお母さんの言うことが聞けないの?他の子はみんな聞いてるよ?おかしいよね?バカなの?悪い子だよね。」

実際には他校の子とは話してない。でも否定できなかった。怖かった。いつもなら怒られてもよかった。別にあれがいつも通りだったから。でも今は違った。怒り方が今までと違う。分からない。なんで怒っているのか。何が悪かったのか。体内の熱が一気に引いていくようだった。ドア越しの威圧感と恐怖から今にも逃げ出したかった。でも逃げたら、もっとダメだ。直感でわかる。こう言うときは、諦める。何もわからないんだから、対策のしようがない。

ドアが開く。あまりにも静かだ。

「ノウ、ユウエンチとかユーチューブはね、その話をしていた子たちの想像の世界のものなのよ。わかったらこの間渡した問題集、やってきなさい?」

「あ、え、うん、わかっ、た。」

よくわからず、無意識に自分の部屋に向かった。

怒られなかった。叩かれもしなかった。

悪いことでは、ないのかな?私の思い違いか…。

「…」

しばらく床に寝そべった。さっきの出来事が何か夢のように感じられた。一体あれはなんだったのだろう。


あ、問題集、やらなきゃ。

考えていも、しょうがない。今はどうしても別のことに頭を移したい。

その問題集は社会の問題。その横には算数、理科、国語の問題集。

 なぜ問題集ばかりしているのかって?塾に行っていないからだよ。学校のみんなは行っているらしいけど、お母さんが「あんなところに行ったらバカになるよ」って言ってた。行ったことがないから分からないけど。実際、私は学校で成績一位だから問題ないのかな?

 そんなことを考えながら鉛筆を動かした。戦国時代の戦い方、旧国名、産物、世界大戦、国際連合まとめ。三年生の時に全部やったものだ。こんな簡単なものを受験間際にやっても良いのだろうか。疑問には思ったものの、お母さんが準備したものなのだからこれで良いのだろう。

 そんな感じで過ごしているわけで、何一つ変なことはない日常だ。だがそんなものはすぐに壊れると決まっている。何か一つの些細なことで。

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