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お姉ちゃんでよろしくお願いします




 時間があまりないので急いで目撃情報のあった森の中まで来た。


 ワンちゃん、と呼んだのはデッドウルフという名前の魔物だ。そしてこの魔物は少々扱いが特殊なのだ。


 冒険者の階級は基本的に上級、中級、下級と分かれているが、当然のことながら一つの階級にも実力差が存在する。それによりだいたいの目安も設定されている。


 さて、デッドウルフの目安は中級中位から上級下位となっている。そう階級を二つ跨っているのだ。


 なぜこのようになっているかというと、それぞれの色で強さが異なるからである。下から白、赤、黒となっている。もともと白かった毛が、段々と獲物の血に染まっていき、最終的にはドス黒くなるのだ。要するに戦闘経験豊富で負けなしってことだね。


 ちなみに今回の依頼は最高の黒だ。そう考えると、さっきの男がまともに思えてきた。なんか、申し訳ない。


 しばらく森の中を走っていると目標を発見した。その毛は真っ黒に染まっている。孤高の黒狼…かっこいい。


 相手もこちらに気がついたのか、一歩後ろに下がり威嚇の姿勢を取る。


 とりあえず、飛び道具のナイフを投げてみよう。ナイフを生成し、指と指の間に挟みかっこよく投げる。


 速度はそこそこだがデッドウルフは動かない。あれは認識できていないんじゃない。おそらく避ける必要がないのだろう。


 案の定、毛に触れたナイフはカキンッという音ともに弾かれてしまった。


「ふむん、黒く固まった血が鎧となっていますね。ナイフでも斬れないことはありませんがこれは…」


 デッドウルフは私の攻撃が効かないとみるに、たんだんとこちらに近づいてくる。しかし、油断はしていないのか不規則に左右に動いている。到達まで残り四メートルといったところ。


「黒くてかっこいいので手懐けてペットにしたいところですが、今はお金がないので…」


 残り二メートル。私は見逃さない。デッドウルフが今までと違い、脚に力を溜めているのが分かる。

―――――――来る!


「闇魔法 影」


 一瞬で影が動き、形をとり始める。作られたのはナイフではなく私の身長くらいある真っ黒な大鎌だ。


 一閃。


 ボトリとデッドウルフの身体から首が落ちる。大量の血が噴水のように首がなくなった身体から吹き出す。さながら顔なしマーライオンだ。


 吹き出す血を背景に、大鎌を構えるメイド。かっこいい…!



※※※



 今、大量の魔物に囲まれています。さっきの余韻に浸ってたら血の匂いに誘われたのかわらわらと集まってきたのだ。


 フィーバータイムだ。影を私を中心とした半径10メートルに展開。下から1メートルくらいの針を等間隔で生成する。


 黒かった地面が一転、段々と赤く染まっていく。


 それと同時にゴブリンやデッドウルフなどが次々と串刺しになっていく。そして殺したそばから、すかさず収納する。


「こんなものですかね、おや?」


 少し離れたところに、反応が複数。何かを囲むように立っている。


 これはあれだ。お姫様救出イベントだ。今日はツイてる。


 案の定、森を少し抜けた先に貴族らしき馬車が止まっている。護衛の人間も何人か倒れているようだ。とは言ってもこのまま行けば勝てなくはないだろう。


 せっかくだしナイフを何本か投げておくとしよう。投げたナイフは六人いた賊のうち狙えそうだった三人の脳天に命中した。


 数的に有利になったからか護衛が残りの賊を押し始め最終的に勝ったようだ。さて、そろそろ帰るとするかな。


「そこにいる人!礼がしたいので出てきてくれないか?」


 面倒だけどもしかしたらかわいい娘が出てくるかもしれないので応じてみるか。あとこれは浮気じゃないから。呼ばれたから仕方なしにだ。


「メイド…!?いや、今は関係ありませんね。助けて頂きありがとうございます」


「ふん、かっこいい王子様かと思ったらただの給仕じゃない。伯爵家の人間である私を助けたことを光栄に思いなさい」


 護衛の人は真っ当なのにクソガキがでてきた。偉そうな態度に金髪ロール、顔はいいのにナシだな。


「帰ってよろしいでしょうか。というか帰りますね」


「あっちょっと!…」


 なんか後ろから甲高い声が聞こえてくる。お淑やかな娘しか興味はないのだよ。


 急いでギルドに戻った私は討伐依頼達成の報告と素材買い取りをしてもらった。なんか特級がどうとか言われた気もするが気の所為だろう。


 今回の報酬はなんと金貨20枚だ。この世界のお金は銅貨1枚でパン一個分だ。銅貨100枚で銀貨、金貨となっている。ワンちゃんとこの他で稼げすぎではなかろうか。


 しかし、これなら公爵家に適した物を買うことができるだろう。急いで街中を回り買ったものからじゃんじゃん影に入れていく。


 早く帰るとは言ったものの帰って来たときには街の家々は太陽の光を受けてオレンジ色になり影を落としていた。


「ただいま戻りました」


 反応がない。まさか、と思い部屋を確認していく。すると最後の部屋、最初にエリーゼと出会った部屋にエリーゼは座っていた。襲撃ではないと分かり内心ほっとする。


「エリーゼお嬢様、こちらにいらっしゃったのですね」


「もう、帰ってこないと思ってた…寂しかったよぉおおお…」


 私が帰って来なくて寂しかったからか若草色の瞳を潤々と輝かせ、泣き始めてしまった。


「かわよゴホンッ、今日はもうどこにも行きませんから」


 そう言って年齢にしては精神が幼い少女を抱きしめる。何かに目覚めそうだ。これが…母性というものだろうか。この娘を…守りきってみせる!


「それとお嬢様、モイラ、モイモイ、お姉ちゃんどれがいいですかね」




 そしてここから三年の月日が流れる。



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