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二人っきり




「光魔法」


 そう呟くとともに指の先に小さな光ができる。その光によって一人の女の子が照らし出された。


 腰くらいある髪は真っ白で、その瞳は若葉色に輝いている。


 しかし、髪はボサボサで、服もぼろぼろ。情報だと十三歳なはずだが身長は130センチあるかといったところ。口調も幼い気がする。


「磨きがいがありますね。幼さも、純粋さがあって…いい……!」


 ふと見ると、女の子が私から離れていた。どうして…。


「怖がらせてしまったようで申し訳ございません。私はモイラといいます。失礼ですがお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。お嬢様」


「エ、エリーゼっていうの。お姉ちゃんは酷いことする…?」


「たまらないですね…」


「え…?」


「失礼しました。私はあなたに仕えたくてあなたに会いに来たのです。酷いことをするなど言語道断です」


「でも、あの人たちは私にね。酷いことばかりするの」


 チッと内心舌打ちをする。今まで散々ひどい目にあったのだろう。警戒心が強いようだ。やっぱあいつらはごみだな。生かす価値がない。


「私はそんなことはいたしません。それで、私でいいのであれば、あなたにお仕えする許可を頂きたいのです」


「え、ん…うーん?いい、よ?」


「ありがとうございます。では最初に()()()をしてもよろしいでしょうか」


 私の質問に小さな顔をコクンと傾ける。かわいい。 


 さて、お掃除を始めよう。ついでに自分の考えの答えも聞きたいところだ。


 天井裏から最初の部屋へと戻る。部屋へと近づくと同時に女の使用人の艶やかな声が聞こえてくる。


「最ッッッ低ですね…」


 さすがに部屋へ直接入るのは嫌なので廊下の上に穴をつくる。扉から入るほうが幾分マシだ。


 コンコンとドアをたたく。メイドっぽさと、何故誰もいないはずの屋敷から音が…という不気味さを醸し出す素晴らしい演出だ。


 どうせビビって来ないのですぐに扉を開ける。ベッドの上に、先程話をしていた二人がいた。


「お嬢様の許可を得たのでお屋敷のお掃除にきました。それと、あなた達に聞きたいことがあったんです。新しい領主というのは公爵家の財産目当ての親類と言ったところでしょう。そのゴミ共としても公爵の娘に死なれるのは都合が悪いはず。となれば食費などの仕送りも少なからずありますよね?先程、残飯をお出ししていたようですが、そのお金はどこへ?」


「ざ、残飯ぐらいのお金しか送られて来てないんだ…!」


「フフ、突然のことに状況も理解できてないでしょうに、真先に保身に走るとはどうしようもないクズですね。それにこの部屋を見てると説得力が皆無ですよ」


 ハァと溜め息をつき、一歩前へと進む。勘がいいのだろう、いやナイフ持ってたら誰でもわかるか。相手が女だからか脅すように話しかけてくる。


「ま、待て!俺を殺すと仕送りがなくなるぞ!あんたにとってもそれは不都合なはずだ!」


 ふむん。それはたしかにそうかもしれない。まあ今はすこし腹が立っているので関係ないけど。


「残念ですが、あなた達の死は決定しています」


 そう言うと使用人達の身体がバラバラになった。ベチャッと、顔にいくらか血が飛んでくる。見事なサイコロステーキの完成だ。


 死体は放置して、鍵のかかった部屋へ急いで向かう。とりあえず癒やされたい。


 ドアノブを回して扉を開ける。バキっと音がする。あらあら、女の子にも開けられるなんて鍵が壊れてたのかしら…!


 扉の先、部屋の中にいた少女はビクッと動くと、扉を開けたのがいつもの人間ではないことに気づいたのか、近寄ってくる。


「お姉ちゃん!血!怪我したの!?」


 おっといけない。顔を洗うのを忘れていた。教育に悪影響がでてしまう。


「大丈夫です。それよりも…」


 私は中腰になり手を差し伸べた。


 何かを感じ取ったのだろう。その手をじっと少女は見つめる。その手を取ろうとするが、しかし少女は手を引っ込めてしまう。


「私、外に出ちゃ、駄目って…。お前なんかお父さんとお母さんと一緒にいなくなればよかったのにって…」


「外に、出たくないんですか?」


 少女はブンブンと頭を横に振る。長い髪が大きく揺れた。


「なら、それでいいんです。もっと自分の気持ちに正直になっていいんです」


 扉から差し込む光が、少女の顔を照らす。若葉色の瞳がキラキラと輝く。


「行きましょうか」


「うんっ!」


 笑顔でうなずいた少女の小さな手を握り締め、二人で広い世界へと歩き出すのだった。



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