◾︎第3話 柚希が家にやってきた
「ふぅ...大体こんなもんでいいだろう。」
俺は柚希との電話から数分後、部屋の片付けをしていた。
それにしてもきれいになったなぁ。これなら柚希が来ても大丈夫そうだな。
普段、俺の部屋はいろんな本(主にライトノベル)やゲームのパッケージで散らかっている。いつも結衣に片付けろと言われていたのだが、普段はめんどくさくてやっていなかったが、実際に片付けてみると、散らかっているよりも整理していたほうが心が落ち着く気がした。
ピンポーン───
「はーい」
どうやら柚希がやってきたようだ。結衣が俺の代わりに出てくれるらしい。
「結衣ちゃんお久しぶり~!元気にしてた?それにしても成長したね~」
そうか。最近柚希とあんまりウチで遊んでいなかったから結衣とも会ってなかったのか。2人は何年ぶりに会ったんだろうか。
「...!?柚希さんお久しぶりです!今日はどうしてウチに?もしかしてお兄ちゃんが何かした...?」
俺に対して信用なさすぎでは?まぁ、俺の日頃の行いが悪いのかもしれないが。
「んー。まぁそんなとこ。詳しいことは後で話すね。」
そこは否定してくれよ柚希。どちらかといえば柚希が何かした方だと思うんだけど...。
「そうでしたか。どうぞあがってください!」
「おじゃましまーす。」
「あ、柚希さん!」
どうやら結衣が柚希を呼び止めたようだ。
「んー?結衣ちゃんどうしたの?」
「後で飲み物持っていきますね!」
結衣が飲み物を持っていく提案をしたようだ。出来た妹だな。
「ありがとう!出来たら今から10分後くらいに持ってきてくれると助かるな。」
おそらく柚希は10分間の間に俺の状態を確認するのだろう。
「わかりました!」
そうして、結衣は元気よく返事をしてキッチンの方に向かった。
トッ、トッ、トッ───
柚希が二階に登ってきた。
コンコンコン───
「希ー。入るよー。」
「ういー。」
俺はいつもと同じようにやる気のない返事をする。
ガチャッ───
「ッ...」
...?柚希どうしたんだろう。顔がニヤニヤしている。
「...希。」
柚希が俺の名前を呟いた。どうしたんだろう。もしかしてどこか悪いのか?それなら早く家に帰って休んだほうが...。
「かっっっっっわいい〜!!」
「っ...!?」
俺がかわいいだって?確かに窓に反射した自分を見た時はかわいいとは思ったけど...。他人に言われると流石に恥ずかしい。
「よしよし。思ったよりも成功だね。...ところで抱きついてもいい?」
柚希は頷きながらとんでもないことを口にした。
「はぁ?何言ってるんだよ。まずは先に俺の状態を確認してくれ。」
俺は柚希の抱きついていいのかという問いに対して否定つると柚希は少し頬を膨らませながら
「えぇー。希のケチ!ケチケチケチケチケチケチケチ!」
と言った。
こうなった柚希はもう何を言っても聞かないので俺は仕方なく抱きつくことを許可した。
「あーもう。それなら好きにしな。」
「わぁ〜い。希やさしい~!ん〜!いい匂いするぅ〜。」
匂いは嗅がないで欲しい。さすがに恥ずかしい。
あと色んなところ(主に胸)が当たっている。
1分後───
「っと。気を取り直して、一応検査するね。」
流石にこの状態から気を取り直すのは無理がある気がするが、このままだと進まないので検査してもらうことする。
ところで検査ってエッチな...
「ほら、はやくお腹出して?」
「あっ、はい。」
数分後───
普通の健診だった...。いやいや、なんで俺はガッカリしてるんだ?
「よしよし。特に健康状態には何も問題ないから。安心して過ごしていいよ。」
「いや、安心できないわ。」
正直、女の子としてどうやって生活すればいいか分からないのだ。
「...。希は何が安心できないの?」
「このまま一生女の子として生活するということに安心できないんだよ。」
俺は至極真っ当なことを柚希に話した。さすがの俺もこのまま女の子で生活したくないしな。
「なるほどね。でも、一つだけ勘違いしてるみたいだね。」
「勘違い...?」
柚希は俺が何か勘違いをしていると言っている。俺がどこで勘違いをした...?
「そう。勘違い。希は男の子に戻れないことを心配してるかもしれないけど...。大丈夫!希が飲んだ女の子になる薬は早くて半年、長くて2年くらいで効果が切れるようになってるから!」
「そうか。それなら良かった...。ってなるかぁ!」
「えぇ!」
俺が突っ込むと柚希は困惑した声を出した。
「なにが長くて2年だよ!流石に長過ぎる!別にいいけど。」
2年間くらいならゲームをして引きこもっていればすぐ過ぎるだろう。まぁ青春は無くなるが(元々ない)。
「あ、いいんだ。ふーん。」
「よーし。これからはゲーム三昧だ!楽しい日々を過ごすぞぉ!」
今は女の子の見た目だから学校にもいけないだろうし、どうせならゲームして楽しんだほうがいいよね。
「あ、そのことなんだけど、これからもいつも通り学校に行ってね。」
柚希は何を言ってるんだ?俺は女の子の見た目になったから学校には行けないはず...。
「俺は今、女の子の見た目なんだから学校なんて行けないだろ?」
「希は私の父が誰か知ってるでしょ?」
そうか、柚希の父親は俺たちの通っている学校の校長と幼馴染だったっけ。昔に何度か柚希の父親と話したことがあった気がする。
「あ、あぁ。俺たちの通っている校長と幼馴染だったよね?」
「そうそう。もう既に話は付けてあるから、月曜日からは女の子として学校に登校してね。」
嘘だろ...。家でゲーム三昧しようとしていたのに。もしかして柚希って鬼?!
「はいはい、失礼なこと考えない。」
そう言って柚希は手に持っていたバインダーで俺の頭を叩く。
「いてっ。」
コンコンコン───
「お兄ちゃん〜!入るよ〜!」
どうやら結衣が飲み物を持ってきたようだ。ちょうど柚希が来た時から10分経っていた。
「結衣ちゃん、入っていいよ〜!」
なぜこの幼馴染みは俺の部屋をあたかも自分の部屋のように過ごしているんだ...。
ガチャ───
「...ッ?!」
結衣がドアの後ろに隠れてしまった。
「結衣ちゃん、紹介するね。この可愛い娘は結衣ちゃんのお兄ちゃんである希だよ。」
「え...?お兄ちゃん?」
まぁ、急に昨日まで男の子だったお兄ちゃんが翌日に女の子になってたらびっくりするわな。
かくかくしかじか───
それから数分かけて俺に説明したことと同じことを柚希が結衣にも説明した。