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第十三話 えふをぶいにかえていーえす

 英語の奥さんの複数形はWivesである。あってるよな。

 享隼は女として吾を求めていた。

 親父様は手掛けにしてやれば良いと気軽に言う。自分はまだ持ってないのに。

 貴凰は後世の為に五人は必要だし、親の格が低くとも多様性の確保だと、覚えたばかりの言葉を使いたがる。

 佳鷹は寝る前に精気を入れて貰える組なら良いと、霊気量も歳もカップも下の娘に吾の背中を譲るそうだ。寝る前にちょっとだけしてるのは、組なのか?

 猟蜂には発言権ないから。ちょっとだけ組に入ってるだけでもありがたいと思え。

 そして、この世界に高志くんのお手掛けさん一号が誕生した。


 与力組の時とか今回とかどうも妙な気がするので、神殿に相談したら、創り神のご配慮が終了したのでしょうと言われた。

 赤ん坊の体に大人の魂が入った混乱を和らげる処置がされていたようだ。思い返せば新生児なのに変に冷静だった。化身獲ったんで親離れしたと見なされたか。

 これからはまったく自分で判断して生きないといけないんだな。帰って話したら、それじゃ何するか判らないから、しばらく紅ヤンマ、利爪、佳鷹、享隼、猟蜂をローテで連れて行くように言われた。

 

 双身組は斬蹴鳥獲りの修行で一緒に走らせるが、猟蜂は背負って行く。


「若様に背負って頂けるようになったのですね。背負わせて頂いたのが、つい最近のようです」


 などと、ババアみたいな事を言う。つい最近じゃないが負ぶわれなくなってまだ五年経ってない。こないだも負ぶって連れてったし。

 一月程やってると、口にはしないが自分だけ特別待遇みたいに思っている。

 妹キャラ付け上がらせるとめんどくさいので、猟蜂に孤狼を獲らせてみた。

 跳狼戦もやらせているので威圧咆哮にも怯むことなく、口中に闘気弾を撃ち込み、執拗に片目を狙って勝利してしまった。

 今日からお前も自分の足で走れ。お前とは言わないが。


 帰ったら親父様に猟蜂の母親の「孕み前の腹直し」を頼まれる。猟蜂が双身持ちになれたら次の子を産みたいと言っていたのだが、妊娠前に霊力の高い精気を入れてもらう風習があるのだそうだ。

 今までは一門の者は親父様がやっていたが、双身持ちでも招かれ人の方がご利益があるんじゃないかと。

 もうその辺は慣れたので引き受ける。異世界母娘丼である。

 同衾組がみんな(猟蜂含む)いる中で、真っ裸(別に珍しいものではない)になって、お願いしますと仰向けになる。予防注射で腕出してるのと変わらない。

 

 それを見ていた享隼が自分の母親にもやってくれと言い出す。これを引き受けるのは、上の者のほぼ義務らしい。マグロ入り母娘丼おかわりである。


 少し前には考えられなかった早さで双身持ちになれた猟蜂には、負ぶわれ役御免の不満は無かったが、一番年下だった猟蜂が双身持ちになったので、元祖初子組から不満が出る。

 直接言って来るわけはないが、隊長の佳鷹が察してやって欲しいと言う。親父様も危険が無ければ戦力強化はして欲しい。

 元祖初子組に限って、隠猫以外の好きな方を獲らせる。二身格の武器防具を持たせ、背負って行けば獲れないはずもない。

 親父様に優しく肩を掴まれる。


「出来るだけ、やらせてやってはくれまいか」

「はい」


 としか答えようが無い。十五歳以上を十四歳以上に引き下げた。

 二身格を獲って来て、装備させて、背負って連れて行く。それだけのお仕事。始めてしまえば該当者はそんなにいない。一門だけならね。ご大父様の血族も混ざっている。懸河一門だからね。

 次の魔窟殲滅までに終わった。化身持ちの群れで魔窟に襲い掛かる。主討伐を吾一人にやらせてみてはどうかと貴凰が親父様に提案して了承された。


 二身格の角製長巻を握り、隠走からの喉への斬り上げ、仰け反った首に返す刀を振り下ろす。

 首なんて切り落とさなくても、半分切られたら死ぬので、死んだ。

 貴凰が近付いてきた。


「此の方と二人だったら、化身玉が出ていたな」

「そうだね」


 魔窟殲滅の底上げはもう意味もなかろうと思う。初撃が不意打ちなのを考慮しても、斬蹴鳥に負けるはずがないと、討伐許可が出た。

 貴凰と利爪を縁の少し上で待たせて、斬蹴鳥の生息域に行く。孤狼身では縁まで逃げられない。

 斬蹴鳥は足は鳥にしては太く、鱗で覆われていて、恐鳥類より鳥頭でちゃんと翼のあるナントカラプトルと言った見た目をしている。伸びれば体高は三メートルを越す。

 色は暗い赤、青、緑、青緑、緑青がいる。日本人には青緑と緑青の区別って付け難いけど。


 ちょっと暗い緑色がいた。何色なのかは気にしない。自分用なので隠れる必要はない。


「斬蹴鳥の、あほやーい」


 こっちを向いてから闘気弾を撃ち込んで逃げる。後ろ向きでもパッシブレーダーで付いて来るのが判る。

 予想以上に足が速い。二人の所まで持ちそうもないので、殺れるところで殺ってしまう事にする。

 振り向きざまに長巻を一閃、当たる距離ではないが避けるように飛び上がった。この鳥は飛ぶ方が遅い。

 跳躍で足に斬り付ける。突っついてくるので首を狙ったら嘴で受けられた。でも霊力と武器の質の差で打ち勝つ。

 バランスを崩して落ちるのに合わせて振り下ろした刃が肩口に当たる。よろけている内に迫って首の付け根を斬り上げた。

 骨に当たった感触があって、恨みがましい目で睨まれる。お前さんには何の恨みも無いが死んでもらう。

 喉だって、骨まで達してればほっとけば死ぬんだけど、傷口に闘気弾を撃ち込んで倒した。やっぱり曲剣だと当て難い。

 化身玉は体色より明るい緑だ。大きさは孤狼とそんなに変わらない。


「化身、生成」


 膝から下は大き目の鱗にしておく。足は前三本で後ろの二本は出来るだけ太く。踵の代わりにこれで蹴る。

 人間とも鳥とも違うが、後でも多少弄れるようなので、走り辛ければ変える。

 手は平爪を意識する。一身格からは意識しないと鉤爪になる。

 背中に生えた翼は風切り羽根を長めに。斬蹴鳥の名の通り、この羽根が非常に鋭い刃物になっている。ヴォーパルウイングである。


「化身、現出」


 第三の化身を手に入れた。これでまた虹男に近付いた。

 試しに浮いてみる。夢の中で飛んでるみたいで、意識だけで移動できる。待たせたら悪いので走って行く。

 貴凰が仁王立ちしている。


「獲ったのか!」


 見りゃ判るだろうが。


「ああ、途中で追いつかれた。誘き寄せを試すから、もう少し奥に行ってくれ」

「よし。赤いのな」

「え、同じのじゃないの」

「赤いの!」

「判ったよ」


 今日も三歳年上の腹違いの叔母が我がままだ。


 生息域をうろついていたら、青いのに目を付けられたので狩ってしまう。骨の感触も無く首が落ちる。これが一身半か。

 邪魔臭いので赤いのが見付かるまで見えないように歩く。隠行発動しっぱなしなので、わざと見付かろうとしなければ大丈夫。それも確認できた。

 赤い(と言っても柘榴石色)のの前を少し距離を取ってうろうろしてるのに、追い掛けて来ない。なんだこいつ、みたいに見てるだけ。

 あほやーいをしても化身玉にならなくなるので、ちょっと我慢。しばらくちょろちょろして、やっと、うざいなこいつで追い掛けて来た。


 大木の陰から貴凰が飛び出して来る。


「うおりゃあ!」


 ばかか。不意打ちしろよ。でも鳥は貴凰よりばかで、横向いて長葉槍で足払われてすっ転んだ。

 頭に闘気弾を一発。走り寄って強撃で振り下ろした幅広の穂先が首を斬り落とす。

 やっぱりこっちが正解か。長巻に拘るの止そう。

 取り出した化身玉は、やはり体色より明るい赤。洗ってやる。


「手の指、平爪な」

「おう」


 赤い鳥頭が現出する。事前に話し合ったので、風切り羽根と足は同じ。

 

「利爪やってみるか。危なかったらすぐ入るから」

「はい、やらせて頂きます」


 この化身なら追いつかれないので、縁まで下らせる。色はなんでもいいと言ったが貴凰が「赤じゃないの」と言いやがった。

 吾の周囲の女が赤を持つのは許さないようだ。お姫様かよ。ご大父様の娘は、公式でも姫か。

 吾のよりは少し明るい蒼っぽいのがいたので、連れて来る。利爪は隠跳で跳んで足を払った。

 縮地でよかったと思うけど、隠行系で仕掛けたらどうなるかの検証にはなったね。後が普通の攻撃ならば何を検証したのか判らないけど。

 縮地の高速移動に乗せた斬撃と刺突で、負ける心配はなかったけど、長い戦いが終わったら膝を着いた。


 化身を現出させた後、背負って帰る。最近は頻繁に行き返り背負っているので、騒ぎにはならない。

 親父様にも一当てはさせてみると承諾を得ていたので、怒られも呆れられもしなかったけど、与力組の隠猫持ちが一身半獲ったのは、騒ぎの元になった。

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