6月9日 数学
昨日、世田と話をしてから、那奈のことを考えるのはやめた。那奈に会いたい気持ちを抑えて、今日も朝から授業を聞いていた。一時間目の数学では、三角関数の授業だった。私は、数学が苦手な上に、三角関数の単元があまり理解できていなかった。
特に、最後の問題、θの動径が第2象限にあり, tanθ = 3とき、sinθとcosθの値をそれぞれ求めよ。という問題が解けずにもがいていた。そんな私を気にすることもないようにチャイムが鳴った。
今日は、数学、古典、日本史、美術、理科、総合だった。放課後は、吹奏楽部の練習もあった。数学の問題が解き終えずにいると、クラスメイトの蒼井がやってきた。
蒼井「ホナ」
私 「ん?」
蒼井「那奈と連絡繋がったよー」
私 「そうなんだ」
私は、あまり嬉しくなかった。
蒼井「あんま、興味ないの?」
私 「うん」
蒼井「この前まで、結構、興味もってなかった?」
私 「そうだね。なんていうか、那奈だったら、そんなに心配しなくていいかなって思えてきて」
嘘を並べて答えた。
蒼井「なーんだ。そっかぁ」
私 「ごめんね」
蒼井「ううん、大丈夫だよ」
私 「次の時間の宿題した?」
私は、必死になって、話題を変えた。
蒼井「古典のやつ?」
私 「うん」
蒼井「なんか、やってみたんだけど、合ってるかわかんないんだよね」
私 「だよねー」
私は、真紀と話している時、昨日の世田とした話が気になっていた。ただ、那奈のことを心配したところで、何か変わるわけではない。結局、私自身、人に影響されているだけで、自分は何も変わっていなかった。
本当は、誰かを心配するのではなく、自分自身が変わらないといけないんじゃないかと思えてきた。最近までは、3年4組の蒼井真紀、下田那奈、山川楓と仲が良かった。しかし、那奈がいなくなってから、楓とも話さなくなり、私の周りには、真紀しかいない。那奈も楓も、真紀がいたから友だちになれた様なものだった。
そんな真紀と一緒にいれるのも3月までだ。これから、新しい環境になった時、私は、誰かと仲良くなれるのだろうか?そう問いかけると、自分に自信が持てなくなっていた。
そんなことを考えていると、私は、那奈を詮索するのではなく、楓と仲良くなることの方が大事だということに気がついた。楓は、寂しそうに、窓ガラス越しに映る雲を見つめている様子だった。