8月10日 一刀両断
看護師「意識戻ってきたみたいね」
私 「まだ話せないですけどね」
昨日の夜から、定期的に目を覚ましていた。しかし、まだ話すことはできていない。
看護師「もう少しでよくなるかもしれないよ」
私 「そうだといいんですけどね」
昔、お母さんも亡くなっているからあんまり医者の話は信用していなかった。
看護師「心配なの?」
私 「はい。早く戻ってほしいですし」
私の表情から何かを察したようだ。
看護師「他にあるの?」
私 「私、お父さんいなくなったら終わりなんで」
素直に話してみよう。この看護師に。
看護師「どういうこと?」
私 「私、お母さんいなくて」
この看護師は微動だにしなかった。
看護師「そうなんだ。一緒だね」
私 「ワカさんもいないんですか?」
意外とシングルの家って多いのかな?
看護師「うん。いないというか早く離婚してね」
私 「そうだったんですね」
離婚かぁ。離婚と病気で亡くなるのとは、また別の感情なんだろうな。
看護師「親ってなんで離婚するんだろうね?」
私 「うーん、、、、、」
こればかりはわからない。好きで結婚したのに、別れる。これがおかしいのかおかしくないのか。
看護師「お父さんは、新しい人作らないの?」
私 「そんな余裕ないんじゃないですか?」
お父さんが新しい彼女を作るイメージなんて1ミリもわかなかった。けど、お父さんも寂しいんだろうな。
看護師「大切にされてるんだ」
私 「それは知らないですけど」
自分が大切にされてるか?そんなのは言われなくても一番よくわかっていた。一人娘にあんなに尽くしてくれる親はいない。
看護師「大事にしなよ、親も自分もいついなくなるかなんてわからないから」
私 「はい」
ゆっくり頷いた。
看護師「早いよね、人生なんて」
私 「私は長く感じますけど」
ワカさんの考えには賛同できなかった。
看護師「それは、ちゃんと集中してないからでしょ」
私 「集中?」
看護師「もっと目の前のことに集中してたら変わるよ?」
首を捻りながら考えた。
看護師「何かに熱中してないでしょ?」
私 「まぁ、そうですね」
看護師「もったいないからやめな」
私の考えを一刀両断した。




