表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/80

8月8日 病院

 まさかだった。こんな状態になるなんて。薄暗い廊下を照らす蛍光灯の光にそって歩いていく。もう少し歩けばもっと綺麗な明るさになる。いろいろ重なりすぎてなんとも言えなかった。昨日、私が家にいてかかってきた電話は、病院からだった。まさか、お父さんが倒れるなんて想像もつかなかった。お父さんは、出張で東京に来ていたので、私もすぐに新幹線で向かったのだった。病院の電話では、突然倒れたので、緊急手術を行うかもしれませんと言われたのだ。急にそんなことを言われると、私は固まるしかなかった。

 なんでお父さんが倒れたのかは、病院の人もまだわかっていなかった。電話では、野外で倒れたところを誰かが発見し救急車を呼んだらしい。とりあえず、ICUに入れられていると言われて私は一気に焦ってしまった。どうやら、なんで倒れたかがわからないからどうしようもないと言われていた。もし、緊急性があればこちらに向かっている最中に手術をしていいかという質問があった。そんなに急に言われても答えられるものではない。もし、緊急でして死んだらどうしてくれるのだろうか?

 いろんなことが頭の中をかけめぐる。それでも、何もないままお父さんが死んでしまうのは心配だった。白い壁には、時折、患者やその家族に向けられたチラシが貼られている。俺が見たところには残された遺族へと記載されていた。読んでいくと、死ぬ前にしっかりと遺族へと手紙を書きましょうというものだった。もしかしたら、お父さんが私に何かを書いているのだろう?病院の冷たい空気は、暑さをかきけすようだった。

 1日たったけど、まだお父さんはよくわかっていなかった。本当に大丈夫だろうか?私の不安を誰かに和らげてほしい気持ちだたった。静寂の中に、看護師たちの明るい声が響きわっていた。遠くから聞こえるモニターのビープ音に震えながら、私は時がくるまで待っていた。時間がゆっくり流れているかのようで、落ち着かない。私がいる部屋には、お父さん以外誰もいないから、余計緊張感が漂ってしまう。なんだろうな、この感覚。なんとも言えない。

 お父さんの病態によっては長くいなければならないけど、着替えもそんなに持ってきていない。どうしようかな?すると、部屋の扉が開く音が響く。ギギギッ。私の緊張感は、一気に高まっていく。そこには、看護師が顔を出してきた。看護師は、私の不安をかき消すかのような優しい顔をしてくれたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ