8月6日 いってらっしゃい
私は、お父さんを見送るためにちゃんと6時に起きて様子を見守っていた。お父さんは、私を一人置いてこの家を出るのが不安で仕方がないみたいだった。不安そうなお父さんに対して、元気な声で"いってらっしゃい"と声をかけた。
いずれこういう日はくるから気にしなくていい。お母さんがいなくなった高校1年生の頃から、なんとなく周りを見下す様になっていた。特に、私が嫌だったのは"BIG3"。ほぼ同時期に、篠木の親も亡くなったらしい。
そんな篠木に私が抱いた感情は、共感ではなく嫉妬だった。"BIG3"なんと言われるアイツらと私にあるモノが何もかも違うくて納得がいかない。同じお母さんがいなくなったのに、篠木は常に前を向いている。一方、私は何もかも失くなり、いつしかその場から動かなくなってしまう。私は、何をしているのだろうか?そんな自分に毎日嫌気がさして、今日までやってきていた。
篠木とは同じクラスになったことはないから、話したことはない。どんな人かも噂しかしらない。そんな篠木への嫉妬が、いつしか高田に向いていた。なんで高田に同じ感情を抱いてしまっているのか自分でもわからない。けど、誰かにその感情を抱かないとやってられなかった。蒼井は気が弱いし、楓はよくわからないし、那奈はいなくなるし。私を満たしてくれる人もモノも近くにはないようだった。
これから、大学進学したら何か変わるのだろうか?高校2年生までしていたSNSもいつしかやめていた。もう、何もかも目を逸らしたい。完全に闇堕ちしたインキャだった。自分がインキャだということも認めたくないし、そういう自分にしかなれないのもいやだ。なんかもう、こんなことも考えたくない。学校のことを考えていると、気分が下がってしまう。私は、リビングから歩き出した。
この時期は、朝から暑い。お父さんが家を出てから私は何をするか迷っていた。外の天気を見ると、晴天というわけではないが、暑さは感じてしまう。とりあえず、家にいてもいいことがないと思ったから夏休みの宿題をもって、カフェにでも行こうかな?カフェも混んでるかな?高校生は確実に図書館にいることはわかっていた。今は、あんまり誰とも会いたくない気分だった。カフェなら、会う数を減らせると思えた。ペットボトルに入った水を喉にいれて、自分の部屋に戻ることにした。いつか、私も。そう思い私は動き出した。




