7月23日 紙袋
私は、真紀と教室で掃除をしながら話しこんでいた。
真紀「ホナ、これいる?」
私 「何これ?」
真紀「楓から」
真紀の腕は、私の方に伸びてきた。
私 「何が入ってるの?」
真紀「なんか、お土産じゃないの」
私は、紙袋を横に開いてみた。そこには、箱の形状のような物が何かに包まれているみたいだった。
私 「ふーん」
真紀「いらない?」
私がなかなか、受け取らないから少しイジってきたみたいだ。
私 「じゃあ、一応もらっとく」
真紀「わかった」
心優しい真紀は、なんとなく私の表情を見ている気がした。
私 「最近、楓はどんな感じなの?」
真紀「那奈がいないから、そんなに元気じゃないと思うよ」
最近、楓と話をしていない。わざと話していないというわけではない。それ以上に、那奈は、何をしているのだろうか?
私 「那奈って、何してるか知ってるの?」
真紀「知ってるわけないじゃん」
私 「だよね」
いつもより口調が強く感じた。ちりとりでゴミを取った私はゴミ箱に捨てた。
真紀「那奈は、もう戻ってこないかもしれないっていう噂もあるし」
真紀の目は、どこか真剣だった。
私 「‥‥‥」
口から言葉が出てこない。
真紀「知らなかった?」
私 「私は、そんなことないと思うけど」
知らなかったことはない。なんとなく、そういう噂は耳にしたことはあった。
真紀「えっ?どういうこと?」
私 「那奈は、帰ってくるよ」
根拠はない。願望でしかないけど、そうあると信じたいと思っていた。
真紀「どうして?」
私 「なんとなくだよ」
直接口にして言うことはなかった。
真紀「えー。なんか、知ってるんじゃないの?」
私 「私が知ってたら、楓も知ってるでしょ」
真紀「そうなのかな?」
真紀は、対人関係に疎いからあまりわからないのかもしれない。
私 「根拠はないけど、帰ってくる気がする」
真紀「うーん。そうなのかな」
これから先もずっとそう思ってやっていく。それは変わらない。
私 「今は、いないけど。待ってればきっと」
真紀「だといいけど」
私の好きな返答ではなかった。少しイラっとした私は、真紀のお腹を見た。
私 「じゃあ、これ貰うね」
真紀「あっ、うん」
真紀からもらった紙袋を持って立ち上がった。




