6月5日 手がかり
那奈の情報を探しはじめて、3日目の朝がきた。6月末に、那奈の家に行くことが決まったことは良かったが、現在の那奈の情報は何もない。誰か、那奈の情報を知っているということすら疑い始めていた。
知っているだろうと思っていた、定本や楓から何も聞きだせずにいた。情報をもっているかもしれないと思っているのは残り三人になった。
今日は、日曜日ということもあり、この三人に会うことはほぼ不可能だった。私は、ノートにその三人の名前を書き、どのように声をかけるか考えていた。
寺崎美桜。寺崎は、バレーボール部。バレーボール部では、キャプテン、クラスでは委員長。どこにいても、みんなをまとめる役割だった。真面目で明るい性格だが、厳しい口調で話すことが多い。そのため、女の子の中では、寺崎に対してビビってしまう人も多い様だ。私は、今年、初めて同じクラスになったということもあり、あまり話す機会はなかった。那奈は、寺崎と話す場面はあまりなかった。
林友紀。林は、男子テニス部のマネージャー。クラスでは、真波に続く可愛さで男の子と話すことも多い。明るくいつも話しているイメージだ。私たちのクラスには、男子テニス部が4人ほどいて、その子たちと話しているのだ。那奈は、時々、林と話をしていた。
世田優斗。世田は、帰宅部。クラスでは、とても静かで、いつも本を読んでいる。本当に那奈の幼なじみかと思うほど、タイプが違う。3年生になって、彼が話しているところは、ほとんど見ていない。 しかし、那奈から聞いている世田の印象は全然違う。本当は、明るくて面白い子。会うと、いつも最近あった面白い話をしてくれるらしい。
この三人の中では、寺崎と林であれば情報を引き出せるかもしれないと思った。しかし、話をしたところで、何も知らないという可能性も高い二人だった。
そうなると、最も大きな情報を握っているのは世田になる。しかし、世田と話をするなんて、よほどのことがないと無理だろうと考えていた。
定本と楓から聞いた話をふまえて、自分なりに仮説をたててみた。すると、ある一つの疑問が浮かんできた。それは、
那奈が今、何をしているかということだった。楓と、6月末に那奈の家に行くことに決めたが、那奈は、家にいるかわからなかった。もし、家にいるのであれば何かしらの目撃情報と入るのではないかと思った。
定本は、那奈の連絡先を知っていた。しかし、何をしているかは知らないと証言をしていた。楓は、那奈の連絡先は知っている。そして、5月1日までやりとりをしていた。しかし、連絡していたやりとりの内容は不確かなものだった。
〈情報〉
・定本健太郎
→ 連絡先○
→ 何をしているか知っている?
・山川楓
→ 連絡先○
→ 家にいないと思っている?
・寺崎美桜
→ 連絡先○
・林友紀
→ 連絡先○
・世田優斗
→ 連絡先○?
定本や楓には、何か知らないかと、なんとなく質問をしてみたのがよくなかった。こちらが受け身になってしまうと、向こうに主導権がいく。間違ってもいいから、仮説をたてて話してみようと思った。
恐らく、定本と楓は、どちらも那奈について、情報を知っている。しかし、私には教えてくれない。二人からの話を合わせると、那奈が言わないでほしいと二人に言っていることが考えられた。
もし、そうであれば、定本や楓に、無理矢理言わせる方法をとるしかなかった。彼らと話すには、彼らの知らない情報を持つしかなかった。
昨日、楓と決めた那奈の家に行くという話。先に一人で行ってみようと考えた。そうすれば、昨日聞いた話以外の情報が手に入るのではないかと思った。
那奈の家は、八代市の桑折町にあった。私の家から、自転車で30分ほどのところにある。しかし、家の場所がわからない。那奈は、八代北中学出身。同じ、八代北中学の人に聞けば知っているかもしれないと考えていた。今度は、八代北中学出身の人を考え始めた。
〈八代北中学出身〉
・篠木七海
・世田優斗
・西野佳奈
・大野友芽
・佐野美嘉
那奈のことを考えていると、気づけば夕方を迎えていた。明日から月曜日。那奈についての調査が再び始まる。




