7月2日 塾
昼間のゆっくりしたこの時間が私は学校の中で一番好きだった。私たちはみんなに人気の屋上ではなく、体育館で食べていることが多かった。私は、スマホを見ながら、楓がトイレから帰ってくるのを待っていた。すると、ドンドンドン。後ろから走ってくる音が聞こえた。楓だ!!私は、後ろを振り返ると苦しそうな楓が私を見つめていた。
楓 「ホナ!!」
私 「どうしたの?」
ハァハァハァ。楓は、全速力で走ってきたみたいだ。私は、楓が呼吸を整えるまで待った。
楓 「那奈が通っていた塾ってわかる?」
私 「たしか、名法塾かな」
この塾には、那奈以外にも、林や藤岡たちも通っている塾だった気がした。
楓 「あぁ。それそれ。どこにあるの?」
私 「中学校の近くだよ」
場所を説明するのが難しい。
楓 「そうなんだ。どこだろー?」
私 「えっーとね。中学校の近くのスーパーのところ」
思い出せる限り説明してみた。
楓 「んー。なるほど」
あまりわかっているように思えなかった。
私 「わかった?」
楓 「大体ね」
なんで塾の名前を聞いたんだろう?
私 「入塾するの?」
楓 「するわけないじゃない」
軽く否定されてしまった。楓は、何が伝えたいんだろうか?
私 「じゃあ、なんで聞いてるの?」
楓 「那奈を探すためだよ」
やっぱりそうか。楓が頑張れるのは那奈くらいだもんな。
私 「そんなの塾わかっても無理なんじゃないの?」
楓 「もしかしたら、手がかりあるかなってね」
たしかに、先生に会えたら手がかりはあるのかもしれないな。
私 「どんな手がかり?」
髪をかき分けながら話を始めた。
楓 「どんな辞め方したのかがわかれば次に進めるかなと思っていてね」
私 「辞め方かぁ。たしかに、あるかもね」
でも、、、、、、。
楓 「でしよ?」
私 「もしかして、今日、行こうとしてるの?」
まさかの正解だった。間違いであってほしかったのが本音だった。
楓 「うん。だめ?」
私 「だめじゃないけど、そんなの教えてくれる?」
楓 「うーん。どうだろうね?」
勝算は、なさそうだった。
私 「普通、個人情報だから無理そうだけどね」
楓 「でも、待っていても那奈の情報はつかめないし」
どこか前向きな楓がいた。




