6月30日 一番
体育祭から一夜明け、私たちは、いつものように集まって話をしていた。真紀は、シャーペンを持ちながら何か書いており、楓はスマホを見つめていた。
真紀「昨日、残念だったねー」
私 「まぁ、仕方ないんじゃないかな」
真紀は、何やらノートに書き記していた。顔をあげて答えた。
真紀「そう?」
私 「そんな練習もしてないんだし」
昨日のことは、あまり考えたくなかった。
真紀「それは、そうだね」
私 「何してるの?」
話を変えた。
真紀「これはノートだよ」
私 「ノート?」
それは見ればわかる。何のノートなんだろう?
真紀「うん」
私 「何のノートなの?」
真紀「それは、ひみつー」
そう言ってノートを閉じた。私は、そのノートを無理に開けることはしなかった。他の人だったら、閉じたノートをすぐに開いたのかもしれない。でも、そういうことをする人は、私は苦手だった。
楓 「開けたらダメよ、穂波」
私 「わかってるよ」
楓は、私に釘をさした。近寄ってきた楓は、私の目を覆うように手を当ててきた。
私 「やめてよー」
楓 「ハハハハ」
楓な、いつにもなく笑顔だった。
楓 「でも、何が書いてあるかは気になるよね」
私 「気になってるの、楓じゃん」
やっぱり、あのノートが書いてあるかは気になった。
真紀「だから、秘密だよー」
私 「まぁ、いいや」
諦めて、私は、口を閉じた。
真紀「それより、昨日だよ」
私 「そう?余裕で負けたんだから何ともだよ」
真紀は、昨日が気になっているみたいだ。私の中では、もう終わった出来事という認識だった。
真紀「でも、一生懸命やってたじゃん」
真紀が言っていることがよくわからない。
私 「ハハハ。もう、真紀おもしろすぎるよ。一生懸命なんて団長してるんだから当たり前じゃん」
楓は、真っ直ぐ私の方を向いた。
真紀「そうだけど。当たり前にできるのすごいよ」
私 「そうなのかなー?」
当たり前に、できるすごさはあまり感じていなかった。
真紀「だって、こんなすごいクラスの一番だからね」
私 「別に1番じゃないよ」
真紀は、何か勘違いしているように感じる。応援団長をしているだけで、別に凄いわけではない。でも、真紀にとったら、そうじゃないのかもしれないみたいだ。




