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6月3日 スクールカースト

 今日から、テスト期間から通常の授業にもどった。昨日まで、中間テストということもあり、1日目に行われた数学は、テストが返却された。私の数学は、62点で何とも言えない点数だった。周りにいた、蒼井や篠倉は、80点以上をとっていた。特に、学習に対するモチベーションが高いわけではないないので、点数は気にしていなかった。

 それよりも、私は、那奈のことについてガサ入れを始めていた。今日は、昼休みの掃除の時に、話をもちかけた。


 私 「定本くんー」

 定本「どうした?」

 私 「この机、運ぶの手伝ってくれない?」


 物が入った机を利用して、定本に声をかけた。


 定本「ちょっと待ってな」


 定本は、持っていたホウキを床に置いて、私の目の前のところまで来てくれた。そして、書類が入った机を運んでくれた。


 私 「ありがとう」

 定本「うん」


 私は、そのまま話続けた。


 私 「定本君は、クラスで誰と仲良いの?」

 定本「クラスだったら、沢田とかな中沢じゃないかな」

 私 「確かによく話してるもんね」

 定本「でも、野球部が一番仲良いかな」

 私 「四組に野球部いないもんね」

 定本「そうなんよ」

 私 「野球部がいい?」

 定本「野球部が恋しい」


 定本の無邪気に返答する姿が可愛らしかった。


 私 「女子は?」

 定本「女子は、そんなおらんけどな」

 私 「真波とかよく話してない?」

 定本「あれは、共通の友だちがおるからだけやで」

 私 「そうなの?じゃあ、寺崎さんとかは?」

 定本「寺とか林は同じクラスになったことがあったからかな」

 私 「そうなんだ。じゃあ、那奈は?」

 定本「下田さん?」

 

 定本の表情が、少し歪んだように見えた。


 私 「うん」

 定本「下田さんは、学校来てないからわからんかな」

 私 「そうなの?」

 定本「そうやで」

 私 「でも、定本君って下田さんの連絡先知ってるでしょ?この前、那奈から聞いたよ」


 本当は、那奈から何も聞いていない。定本がなんて返信するのか。内心ビクビクしていた。


 定本「‥‥。うん、知ってるよ。でも、連絡はしてないからな」

 私 「そうなんだ。また、那奈のことについて何か知ったら教えてよ」

 定本「うん」


 おそらく、定本君は、那奈について何か知っていると確信した。ただ、今いろいろ聞くのは不信感をもたれるかもしれない。それより、残りの4名と話してから、やりとりを進めることに決めた。問題は、どのようにやりとりするかだ。

 私にとって、三年四組で仲のよい人がいないのは、不都合だった。また、蒼井と5月に話していたことを思い出していた。

 

 ー5月6日の夜ー


 新谷と蒼井は、女子のスクールカーストをつけ終わった。


 私 「やっぱり、上の5人は、変わらんね」

 蒼井「そうやね。特に、高田、寺崎、林は動かんな」

 私 「真波は、凄いよねー」

 蒼井「真波は、特別すぎる」

 私 「じゃあ、次男子のカーストつけよ」

 蒼井「えっ‥‥」

 私 「いや?」

 蒼井「別にいいよ」


 そう言って、二人は、再びノートに男子の名前を書き出した。


〈私〉

 1沢田亮二

 2荻野由馬

 3辰巳慎之介

 4中沢健人

 5藤平武

 6定本健太郎

 7矢沢鳴

 8土井星矢

 9高橋蓮

 10齋藤学

 11内田真

 12柴木雄介

 13世田優斗

 14近藤祥哉

 15羽月世那

 16片山蒼

 17田中衛

 

〈蒼井〉

 1沢田亮二

 2荻野由馬

 3辰巳慎之介

 4中沢健人

 5定本健太郎

 6藤平武

 7矢沢鳴

 8土井星矢

 9高橋蓮

 10齋藤学

 11世田優斗

 12柴木雄介

 13内田真

 14近藤祥哉

 15羽月世那

 16田中衛

 17片山蒼


 二人は、書いたノートを見せ合った。女子同様、男子の時もあまり変化はなかった。


 蒼井「こんな感じかなー」

 和 「真紀って、好きな人とかいるの?」

 蒼井「急やな」

 私 「あんまり、学校やと聞けへんから」

 蒼井「好きな人は、いないけど。カッコいいなって思う人はいるよ‥」

 私 「誰?」

 蒼井「ひみつー」

 私 「誰よー」

 蒼井「教えないよ」

 私 「教えてよ」

 蒼井「じゃあ、ホナ先に言ってよ」

 私 「えー。私いないよ」

 蒼井「絶対いそう」

 私 「じゃあ、真紀が教えてくれたら、考えるわ」


 私は、交換条件で、蒼井に交渉した。しかし、予想外の返答がかえってきた。


 蒼井「私は、嶋内君かな」

 私 「えっー。そうなん。もっと静かな子がいいのかと思ってた」

 蒼井「別に好きとかではないけど、みんなからイジられてる感じとか微笑ましく感じる」

 私 「まぁ、でも嶋内君とかホントに愛されるなって感じるよね」

 蒼井「あと、中学校の時に話したことがあって」

 私 「一緒のクラスになったことあるんや」


 蒼井の意外な過去が明らかになった。


 蒼井「一年生の時やねんけどね」

 私 「どんな感じで話したん?」

 蒼井「話したっていうより、シャーペン貸してもらって」

 新谷「シャーペン?」

 蒼井「一年生最後の時、私が、筆箱忘れて、シャーペン貸してもらったの。でも、それ以降、返すのできてなくて」

 私 「真紀が使ってる青いやつ?」

 蒼井「そうなの」

 私 「それ嶋内君に言ってないの?」

 蒼井「さすがに、五年経ってるからね‥‥」

 私 「5年かぁ‥‥」

 蒼井「今さら、あの時のシャーペン返すっていうのもね‥‥」


 蒼井が使っていたあのシャーペンが、まさか、嶋内から借りたものだとは知らなかった。


 私 「でも、真紀が使ってたら、気づているくない?」

 蒼井「そうなんよね。気づいてるんじゃないかなと思うけど。なかなか聞けなくて」

 私 「じゃあ、私聞いてあげよっか?」

 蒼井「やめてよ、私が気にしてるのバレるよ」

 私 「真紀が気にしてるっていうのバレずにするから」

 蒼井「だって、ホナ仲良くないから怪しまれるよ」

 私 「私じゃなくて、男子に聞いてもらうの」

 蒼井「誰に聞いてもらうの?」


 私は、とっさにある顔が浮かんだ。


 私 「矢沢君!」

 蒼井「確かに、ホナは、矢沢君とよく喋ってるね。でも、別にそこまでして返したいわけではないなから大丈夫」

 私 「真紀、行動しないと何も変わらないよ」

 蒼井「えっ‥‥。何が‥」

 私 「今のままだと、このまま何もなく学校生活終わるよ」


 まるで、自分に言ってるみたいに話をしていた。


 蒼井「そんなん言われても‥‥」

 私 「この先、不安に感じるんでしょ。さっき、真紀の話聞いてて、素直に自分の気持ち言ってくれた嬉しかった。でも、自分と居ても楽しく感じてないんかなって思って悲しかった」

 蒼井「ホナと居て楽しくないっていう意味じゃないよ」

 私 「でも、学校来ることに不安な気持ちが強いんでしょ?」

 蒼井「そういう気持ちはあるよ」

 私 「私も学校行くことは、しんどいよ。でも、真紀とか楓とか那奈がいるから頑張ろって思えるよ。真紀は、私たちと居てもそう思わないんでしょ?」

 蒼井「不安があるのは、ホナのせいじゃないよ」

 私 「私は、真紀が学校に来たいと思ってほしいよ。真紀が感じる不安を少しでも和らげれる友だちでいたい‥‥」


 蒼井と真っ直ぐに向き合った。


 蒼井「‥‥」

 私 「真紀‥。これからは、私が真紀の学校生活を楽しくする。だから‥‥」

 蒼井「‥‥」

 私 「だから、頑張ろ」

 蒼井「うん」

 

 私と蒼井。二人をつなぐ物は、もしかしたら嶋内のシャーペンなのかもしれない。蒼井がシャーペンを返した時、二人の関係性は変わってくるのかもしれないと思っていた。

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