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6月28日 卑下

 久しぶりに見た夕日だ。こんな色だっけな?金色に光り輝く空を見ていて思った。あと、5分ほど歩いたら家に着く。ここの道を通うのも、もう3年目かぁ。いよいよ明日は、体育祭。不安よりも嬉しさの方が大きい。別に応援合戦ができるとか、そういうことじゃない。あと1日で終わるという安堵感だった。クラスのみんなは、優勝したい、勝ちたいという想いなのだろうけど。

 優勝してなんになる?それが私の本音だった。でも、こう言ってしまうと何にもしなくなるし、ただの言い訳にしかならないつまらない人間になるのがオチだった。自分は、誰かに何かを言われるのが嫌なのではない。自分で自分を卑下してしまうのが嫌なのだ。

 私は、母が死んでしまって以降、誰かを信じることはやめた。真紀、那奈、楓たちと一緒にいることは私にとって、とても心地がよかった。でも、彼女たちが一生私の近くにいて支えてくれるわけではない。どこにいっても、最後は自分で自分をなんとかするしかなかった。

 しかし、それは最も楽な方法だけど、最も成功率が低いのだ。自分をもってるとか自信があるとか聞こえはいいけど、そんな簡単にそんな状況にはならないのだ。結果さえ出していくと、周りからはいろいろ称賛されて後付けされてしまうのだ。それが悪いわけじゃないけど、そんな声を鵜呑みにしてても仕方がないということに多くの人が理解していない。

 ただ、そんなことを考えている私がよくないのかもしれない。残された高校生活を毎日楽しんで、高校生活が終わってからそんなことを考えたらいいのかもしれない。でも、今の自分にそんなことを考える余裕はなかった。なんで余裕がないんだろう?一生懸命、勉強してるわけでもないし、部活動をしているわけでもない。応援団長としても、本気を出して取り組んでいるわけでもない。

 おそらく、毎日が楽しくないから心の余裕がないのかもしれない。楽しくないから、誰かや何かを卑下してしまう。そうなれば心もやる気もなくなってしまい、心の余裕なんてなくなりただ卑下するのが日常と変わる。今みたいな自分がこれからも続くんだと思うと、何もしたくなってしまう。

 だから、今の自分があるんだろうな。今日も今日とて頭がバンクそうになるくらい何かに混乱していた。私は、リュックを背負いながら一歩一歩進んでいた。私の住んでいるマンションが見えてきた。昔は、大きく見えたマンションも今となればあまり大きく見えないあたり、自分も大きくなったと実感する瞬間だったのだ。

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