6月17日 応援メンバー
私の足はたちすくみ、みんなの方を見ていた。誰も手を挙げてくれないんじゃないかという恐怖と戦っていた。緊張のあまり、上手く言葉が出てこない。今日は、体育祭の応援メンバーを決める日だった。
すると、後ろの席から手を挙げる者がいた。凛々しい顔立ちで私の方をじっと見つめる。まさかの"寺崎"だった。昔から、寺崎は苦手で、あまり話すことがなかった。それだけに、少し驚かされた。打算で動く寺崎だから、応援メンバーをするのは何か別の意味があるのか?
「新谷!!」。横から担任の山田先生の声が聞こえてきた。私は、"寺崎さん"と名前を呼んだ。なぜ、寺崎が手を挙げたのかよくわからなかった。寺崎のことは、周りからよく聞いていた。聖徳高校3年の女子は、BIG3の高田、矢田、篠木が一番有名だった。寺崎は、その次くらいに出る名前だった。同じクラスの林や藤岡。他クラスでは、宮城や渡邉などとセットで名前が出ていた。
何か嫌なことをされたわけではないのに、なぜか好きになれなかった。寺崎がメンバーに確定した1分後に再度、立候補がいないか呼びかけた。すると、今度は、5人くらいが一斉に手を挙げていた。手を挙げたのは、林友紀、西野佳奈、藤岡優姫、山川楓、蒼井真紀。その中でも、楓と真紀は、私が困っているのを見て挙げてくれたのだろう。後の3人は、寺崎が手を挙げたからだろう。誰か男子が挙げるだろうと予想していただけに、この結果は想定外だった。
先生「新谷。どうやって、決めるんだ?」
私 「えっ‥‥」
もし、寺崎がメンバーに入ると、真紀が困る。でも、寺崎が入らなかったら、林、西野、藤岡はメンバーからおりるだろう。昨日の真紀の話を聞いていただけに簡単にメンバーを選ぶことは難しかった。
先生「今、5人手を挙げてるぞ」
私 「は、はい」
すると、寺崎が立ち上がった。
寺崎「もし、よかったら明日このメンバーで決めたらいいんじゃない?」
私 「‥‥」
先生「そうだな。新谷、それでいいか?」
私 「はい」
先生「じゃあ、新谷も席に戻っていいぞ」
私 「わかりました」
5人が手を挙げるとは‥‥。まさかの結末だった。私の斜め後ろの席にいる真紀に目を合わせながら席についた。どうしよう?真紀は、何て言うのだろう?真紀や楓とやるなら3人でもいいかもしれない。そんなに人数がいても意味がないのではいかと勝手に考えるようになってきた。




