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6月13日 死

 昨日に続いて、今日も学校が休みだったので、朝から勉強をしていた。家では、どうしてもやる気がそがれてしまう。私は、数学の問題を解きながら、余計なことを考えていた。


 ある正方形について、1辺の長さを4だけ長くくて、もう1辺の長さを 3だけ長くした長方形の面積はもとの正方形の面積の2倍となる。このとき、もとの正方形の1辺の長さを求めよ


 もとの1辺の長さをyとおく。

 すると、y+4の辺とy+3の辺ができる。

 もとの正方形の面積の出し方は、y×y=y ²

 長くした長方形の面積は、もとの正方形の面積の2倍だから、(y+4)×(y+3)=2y ²

   y ² +7y+12=2y ²

   ーy ² +7y+12=0


 しかし、この方程式の解が出ない。私は、一気にやる気がなくなってしまっていた。やる気がなくなった私は、スマホを見つめていた。

 今日は、日曜日ということもあり、部活をしていない、真紀や楓も勉強しているだろうと思っていた。私は、真紀に会う連絡をするか迷っていた。お互い、勉強しないといけない時期でもある。ただ、私自身、集中が切れて、リラックスしたい時間に入っていた。

 「穂波ー」。下から、父が呼んでいた。私は、マンションに2人で暮らしている。私が、高校1年生の時に、母はこの世を去った。まだ、43歳という若さだった。とても明るい母だった。どんな逆境にも前向きで、「大丈夫」が母の口癖だった。私は、母が好きだっただけに、とても悲しかった。だが、私以上に父は落ち込んでしまっていた。私がいる時は、なんとか元気に振る舞っていたが、私が寝た後は、いつもビールを片手にストレスを発散していた。強くて優しい父が、母の葬式であんなに泣いていた。

 人生なんて、何が起こるかわからないもんだと初めて気づかされた日でもあった。母が亡くなってから、私の人生も大きく変わった。入っていた部活もやめ、勉強も放り出し、大切な友だちとも縁を切った。何もかもが嫌になり、頑張るのをやめてしまっていた。

 母が死んだとて、私の人生が終わるわけではない。母が亡くなってそろそろ2年が経過しようとしていた。父は、なんとか前を向き歩き出してくれたのはよかった。大学に行くお金も、なんとか準備できそうだということも教えてくれた。

 だが、肝心な私はというと、心が空っぽのままだった。当時、仲良くて、今もいるのは真紀だけ。私の母が亡くなったことは、ごくわずかな人間しか知らない。真紀、楓、那奈の3人だけだ。もともと言うつもりもなかったが、話の流れでつい口が滑って言ってしまったのを覚えていた。

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