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6月1日 中間テスト

 今日から、中間テストが始まった。中間テストは、2日間ある。1日目の今日は、数学、理科、社会だった。勉強は、苦手だが、テストで早く帰れるのは嬉しかった。今日は、12時半頃には学校をでれるだろう。

 そんなことを考えながらテストを受けていた。私のクラスは、国公立志望。佐々木さん、高田さんといった学年トップクラスの学力を持つ生徒が集まっていた。

 私は、蒼井、楓、那奈の4人でいることが多い。特に、蒼井とは中学校から一緒ということもあり、とても仲がよかった。しかし、GW前に、那奈が学校に来なくなっていた。それを追うように、楓も私たちと距離を置くようになり、誰ともつるまなくなっていた。

 那奈がなぜ、学校に来なくなったのかはわからない。しかし、クラスの中で一人は彼女の様子を知っているのではないかと考えていた。

 私が、疑っているのは五人。一人目は、定本君。もともと、那奈とは席が近くて話していたのを見ていた。しかし、普段は、野球をしていて忙しい。本来は、遊ぶ時間がないくせに、急に那奈の誕生日パーティーに来たいと言ってきて、彼に違和感を感じていた。

 二人目は、楓。楓は、下田さんの誕生日以降、下田さんの話題を彼女から聞くことはなかった。明らさまに、彼女の態度が変更したのだった。

 三人目は、寺崎。寺崎は、クラス委員長ということもあり、いろんな情報を握っている。平和主義ということもあり揉め事を嫌っている。以前、私が藤平と揉めそうな時も真っ先に止めに入っていたくらいだ。

 四人目は、林。林は、高校1年生の時に那奈と同じだった。クラス替えをした4月、久しぶりに同じクラスになったことを喜んでいたのを覚えていた。林は、友達も多く、那奈を知る友だちも多いとふんでいた。

 五人目は、世田。世田は、那奈の幼なじみらしい。クラスで二人が話しているところを見たことはないが、家が近所ということもあれば何か知っていそうだ。

 社会のテストを解き終えると、15分ほど時間があまった。すると、斜め前にいる定本君の話を蒼井としていたのを思い出した。


 ー5月6日の夜ー


 私 「真紀、那奈の誕生日に定本君来てもいい?」

 蒼井「えっー。それは困るかな」

 私 「なんで?」

 蒼井「定本君がっていうより、知らん人と話すの苦手で‥‥」

 私 「そういうのあるよね。じゃあ、来ないようにするわ」

 蒼井「ごめん‥‥」


 蒼井は、少し申し訳なさそうにしていた。


 私 「なんで、謝んの?定本君は、男子やし。女子会にはいらんやろ」

 蒼井「私、時々怖くなって」

 私 「何に?」

 蒼井「自分がこれから生きていけるのか」

 私 「そうなん?」

 蒼井「うん」

 私 「何が心配?」

 蒼井「今の学校生活もやけど。これから、自分がどういう風になるのか不安で。自分に自信がなくなって」


 蒼井は、私にとって今まで出会ったことがない人で、とても新鮮だった。


 私 「私は、将来のことも考えるけど、今のことでせぇいっぱいかも」

 蒼井「ホナは、強いと思う。私は、弱いや」

 私 「なんで、そう思うの?」

 蒼井「別に、いじめられてるわけじゃないし、勉強が嫌いなわけじゃないけど‥‥。学校に行くのが怖いって感じる時があって」

 私 「学校行く時?」

 蒼井「朝、家出て駅のホームに立って、次の電車に乗ったら学校に着いちゃうって考えるだけで、自分の心が押しつぶされそうになって‥‥‥‥‥‥‥」

 私 「‥‥」

 蒼井「このまま飛び降りたら、怪我して学校に行かなくてよくなるかなとか考えちゃって」

 私 「‥‥」

 蒼井「ホナとか楓とか那奈とか、友だちもいてるし、相談ものってくれる。それだけで充分恵まれてると思うけど‥‥」


 ありふれた幸せに、私自身が気づけていなかった。


 私 「‥‥」 

 蒼井「心の中にあるフワッとした想いが消えなくて」

 私 「‥‥」

 蒼井「この想いは、さすがに私以外では、理解できないかなって」 

 私 「‥‥」


 蒼井の質問に上手く返さないでいた。


 蒼井「わかってくれる人がほしいとか、相談したいっていうことじゃなくて」

 私 「‥‥」

 蒼井「ただ、この想いを考えると無性に虚しくて苦しくて」

 私 「‥‥」

 蒼井「学校休みたくても、働いてくれてる親に申し訳なくて、休みたいなんて絶対言えないし」

 私 「‥‥」

 蒼井「死にたいとは思わないけど、誰にも気づかれず静かに消えたいっていう気持ちが、時々芽生えてしまって‥‥」

 私 「‥‥」

 蒼井「私って変かな?」


 蒼井の言葉は、決して他人事ではなかった。決して口に出すことはないが、蒼井と似たようなことを感じる日々がある。そんな中で、いつも言葉で話せる蒼井は、とても羨ましかった。


 私 「そんなことないと思うよ。誰でもさ、いろいろなこと考えるのはあると思うよ。今のこと聞いて、マキに何かしてあげることはできないかもしれないけど‥‥。素直に言ってくれたのが嬉しかった」

 蒼井「ホナも考えることとかある?」

 私 「あるよ。いっぱい」

 蒼井「例えば?」


 心に溜めていた想いがスッとおりてきた。


 私 「学校でいったら、スクールカースト的なやつかな笑」

 蒼井「スクールカースト?」

 私 「スクールカーストわかる?」

 蒼井「わかるよ。学校の中での階層みたいな感じのやつちゃう?」

 私 「そうそう」

 蒼井「それの何が不安?」

 私 「私よりも、ずっと上にいる人みたいになりたいなって思う時があって」

 蒼井「ホナって、そんなん考えるんや」

 私 「おかしい?」

 蒼井「おかしくないけど、意外やなって‥‥ふふ笑」

 私 「笑わんといて笑」

 蒼井「ごめん、ごめん笑」

 私 「でも、おかしいよな笑」


 蒼井と久しぶりに深く話をしていた。


 

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