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第八話 後

 アマネたちが病院に着くと、そこはひどい騒ぎだった。野次馬とパトカーが所せましと集い、警戒線が張られている。明神とアマネはその光景を後部座席の窓から見ていた。

 「どうやら二人の患者が誘拐されたらしい」

 「朱里さんと、真湖……」

 「攫ったのは竹上だ。君を手に入れるために二人を監禁したんだろう」

 「……なんで竹上はそんなに私が欲しいの?」

 「君はホモデウス・プロジェクトの唯一の成功例。君の身体の仕組みを応用すればあらゆる人をホモデウスにすることができる。不老で、不死で、病にならない完璧な身体を手にすることができる。竹上はそれを独占したいんだ」

 「そもそもどうして……」

 「分からない。それにどうでもいい。肝心なのは奴の身勝手な欲望のせいで、多くの人が苦しむ未来が確実に訪れることだ。そして、それに抵抗できるのは私たちしかいない」

助手席に座っている明神の側近が、明神にスマホを見せた。

 「竹上の所に送り込んでいる部下からだ。やはり加々美朱里と米内真湖を監禁しているようだ。今、私に要求をするための準備をしている最中らしい」

 「どうするの」

 「こちらの準備は済ませてある。地下だ。行くぞ」


 明神のスマホが鳴った。

 『もしもし』

 低い老人の声。明神は目つきを鋭くさせる。

 「竹上」

 『そちらに立松アマネはいるな?』

 「ああ」

 『取引だ。お前が立松アマネをこちらに差し出せば、私は政界から引退しよう。次の総選挙も君が勝てるよう取り計らう。どうだ?』

 「取引になってないな。私にとって都合が悪いのは、お前が生きていることだ」

 『それはお互い様だろう。今回は手を引いてやると言っているのだ』

 「ここで決着をつけた方が互いのためじゃないか?」

 『勝てると思うのか? お前が? 私に?』

 押し殺した笑い声が聞こえる。

 『お前が抱えていたホモデウス対策用の組織が壊滅したそうじゃないか。え? 戦える人材もいないだろう』

 「お前さえ殺せば終わる」

 『甘いな、若造。私が倒れても第二、第三の私が現れる。ホモデウスの研究はそれほど素晴らしいものだ。手にした者が全てを握る』

 「俺が全て終わらせてやる。そう言ってるんだ」

 『そこまで私に立松アマネを渡したくないのか。あの研究の唯一の成功例を。だがな、お前が拒んでも立松アマネ本人はどう言うか』

 「……どういうことだ?」

 『立松アマネの関係者を捕らえている。唯一の友人らしいじゃないか』

 「まさか」

 『彼女に繋げ』

 「…………」

 『繋げと言っている』

 「繋いでくれ」

 明神は部下にスマホを渡す。

 『……もしもし』

 『もしもし』

 『私の友達に指一本でも触れたら殺してやる』

 『君が大人しく私の言うことを聞けば、何も手出しはしないよ』

 『…………』

 『私の言っていることが分かるね?』

 『分かった。どこへ行けばいい?』

 『住所を言えばいいのかね? そうだな、明神と────』

 「ここでいいの?」

 くるりと回った視界。ぼとんと落ちた音。

 「死ね。クソジジイ」

 竹上の首はあっけなく落ちた。



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