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48.そしてまた春が来て

あの夏の日から、秋が来て、冬が来て、そしてまた春が来ました。

あの後、連れ戻された私はしばらく病院に入院していましたが、

今はこうして家に帰ってきて、お薬を飲みながらですが、

自分の部屋で勉強をすることが出来るようになりました。

両親の計らいで、通信制の高校に編入することができた私は、

家事を手伝いながらテキストを片手に、一人勉強をする毎日を送っています。


思い出の詰まったあの街を離れて住むようになったこの街。

まだ一年も住んでおらず思い出は数えるほどしかないけれど、

それでも少しずつ、この場所での日々がすぎるごとに記憶もまた積み重なっていきます。

2階にある私の部屋の窓からは、大通りの桜並木が良く見えるんだよ?


しょうちゃんと歩いた桜並木の思い出を--------


ぽろり、ぽろり、となみだがこぼれ落ち、便箋の文字を滲ませている。

・・・いけない。

どうしても、何かがあると楽しかった思い出を思い出してしまうのだけれど・・・それはもう、おしまい。

わたしの手から消えてしまったのだから。

その想いは私をこうして今も縛っているけれども、

それは私だけの問題で、その事にしょうちゃん自身はもう、関係ないのだから。


だからこうして、出すことのない手紙を便箋に書き、

そしてそれをシュレッダーにいれるのは、

私が私に与えた罰。

これは償いにもならないけれど------それでも、

こうやって、私は私自身の心があふれそうになったとき、

誰も見ることのない手紙に込めて・・・そしてそれを紙断裁機にかける。

歯車が紙を巻き込む、ガリガリという音を立てて手紙が咀嚼されていく。

そうして飲み込まれた手紙は、ゴウン、ゴウンと断裁機のドラムが回る音と共に、

細くちぎれた紙くずに変わる。

そんな光景を最後まで見た後、私はため息をついた後、背伸びをした。



しょうちゃんは元気でいるかな?

季節の変わり目にはいつも風邪をひいていたけど、

身体は壊したりしてないかな?



・・・でもきっと、大丈夫だろう。

しょうちゃんのまわりには、しょうちゃんと助け合っている沢山の人がいるのだから。

私は幼馴染だったからしょうちゃんの隣にいることができたけれども、

幼馴染だったからその場所を手放してしまった。


それは私の、どうしようもない私の、ぬぐいきれない後悔と、過ち。


もう、私はしょうちゃんには会わない。

これから先、また、誰かを好きになれるかはわからない。

けれども、しょうちゃんのいない世界で、それでも私は生きていく。


後悔も、悲しい気持ちも消えてはいない。


だけど、私はしょうちゃんのいない世界で、『これから』を私は生きていくと、自分自身に、誓ったのだから。


---------だから、せめて、前を向いて生きてこう。


精一杯、胸を張って歩けるように。

もしも私がいつまでも下を向いて、

ただ昏く生きているだけだと知ったら、

きっとしょうちゃんは自分の事のように、傷つくと思う。

・・・私が前を向いて、一人で立って生きていないかないと、

しょうちゃんは安心できないと思うから。

だからもう、しょうちゃんがいなくても大丈夫だよと、

1人でも大丈夫だよ、と。

そんな気持ちを込めて。


「いろんなこと、たくさんごめんね、しょうちゃん。

私はもう、一人で大丈夫だから-----------」


--------------私はここで、新しい自分をみつけるから。

いつかきっと、幸せな自分になるから。


そう、開け放たれた窓に向かって、小さく呟くのだった。




---------------------そこから遠く離れた、ある街の、ある学校の前の桜並木。

少年が、2人の少女と並んで歩いていた。

何かに呼ばれた気がして振り返った少年は、小さく、誰かの名前を呟く。

それから空を見て、舞い散る桜の花びらを見て、

どこか安心したように、微笑む。

そして少年は振り返ることなく、2人の少女の待つ方へ、歩いていくのだった。





大変お待たせしましてすいません。

少し活動報告で振れましたが、ブラックな企業から自由になることができ、

やっと時間がある程度撮れるようになったので小説を書くことが出来るようになりました。

幾つかの短編等でリハビリをしながら、

無事拙作の完結に至ることが出来ました。

読んでいただいた皆様の、

誤字脱字訂正をしていただいた皆様のおかげです。

本当にありがとうございました。


よもやまこそこそこぼれ話や、その後アフター的な単話小話はあるかもしれませんが、

本編としてはこの話での終わりとなるため、完結とさせていただきす。


無事完結を迎えることが出来たのは、本当に、本当に皆様のおかげです。

約一年、お付き合いいただきありがとうございました。


ほのかちゃんのラストに関しては、色々と考えなおしたり悩むこともありましたが、

当初の予定通りのエンディングになりました。

高校生からしたら人生はまだまだ先が長く、

これから立ち直って、しっかりと生きていく未来もあると、私は思います。

そのあたりは、またこぼれ話などで触れられたら良いなと思います。


少しだけ宣伝ですをば、

このイケメンモデルの1年前の物語をひっそりと書いていますので、

そちらもこの本編と合わせて、

時間のある時の暇つぶしにでも読んでもらえたら幸いです。

「失恋俺氏と、CV若本わかもとちゃんと!」

https://ncode.syosetu.com/n6519hy/

ざまぁ要素が比較的薄いので学園ラブコメになっています(NTRや浮気が無いわけではないですが)、エンタメと楽しんでもらえればと思います



それではまた、何かの作品でお会いできましたら、幸いです。

ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >失恋俺氏と、CV若本わかもとちゃんと! これ消えたのかなぁ?
[一言] 完結お疲れ様でした。 そしてブラック企業からの卒業おめでとうございます! これからも楽しんで書き続けてくださいね!
[良い点] 完結お疲れ様す [一言] 間隔が空いたお陰か読む側にもすっかり時薬が効いてほのか頑張れと思ってしまった 作戦成功w ブラック企業からのエスケイプ記念おめでとうw
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