36.夏休み:こころちゃんとお出かけしよう②
『ぷいぷい!ぷいぷいぷい!』
モルモットとのふれあいコーナーで、たくさんのモルモットに囲まれたこころちゃんが地面に膝をつき、モルモットを撫でながら目をキラキラさせている。
・・・こころちゃんが差し出した手に撫でられようとモルモットたちが我先にとこころちゃんに押し寄せているのだ!
茶色と白のハムスター柄のモルモット、勲章をつけた白いモルモット、チョコ色のモルモット、毛並みがもふもふのモルモット・・・どれも皆可愛いけれどこころちゃんが一番かわいいね!
『ぷいぷい!』『ぷい~ぷい~』「ぷい!』
「はわ、はわわ!」
なんて思っている間にもモルモットは増え続け、ヘッドホンをつけたモルモット、救急マークのモルモット・・・モルモットの壁にこころちゃんが身動き取れなくなっていた。
これはちょっと助け舟が必要かな?
にゅーっと手を伸ばし、こころちゃんの両脇の下に手を伸ばしてひょいと抱え上げる。
・・・この状態のこころちゃんは小さいので簡単に持ち上げれてしまうのだ。
こころちゃんを抱えたまま、てくてくとモルモットふれあいコーナーを後にする。
こころちゃんを取り上げられてモルモットたちが目を潤ませてプルプル震えている。
「ご、ごめんねみんな!また遊ぼうね」
こころちゃんのそんな声に、モルモットたちがぷい~ぷい~と名残惜しそうな声をあげつつ手を振っていた。
「と、ところでしょうきちくん・・・あの、その、・・・恥ずかしいよぅ」
子供の様に抱えられたままのこころちゃんが、耳まで真っ赤になりながら涙目で訴えかけてくる。おっとごめんよこころちゃん。
すとん、と地面におろすと「ありがとう、ごめんね」と謝ってくるこころちゃんだったが、とてもかわいいこころちゃんがみれたので俺的には何も問題はないのだ。
そのまま小動物エリアでこころちゃんがハムスターを眺めているのを横目に、
飲み物を買いに行ってきた・・・んだが、なんでここはちみつしか売ってないんだ??
おまかせではちみーカタメコイメを2人分買って戻ると、
ハムスターの飼育檻の前でこころちゃんが立ち上がったハムスターと見つめ合っていた。
『頑張るのだこころちゃん。ここが勝負のきめどきなのだ!』
「えぇっ?!で、でも・・・私なんかより素敵な女の子がたくさんいるし」
『そんなの関係ないのだ。
こころちゃんはかわいいのだ!ぼくたちみんな応援しているのだ!』
良く聞こえないけど舌ったらずな子供の声がする。
こころちゃんが誰かと話しているのかな?
・・・でもまわりには俺達とハムスターしかいない。
幻聴かな、疲れているのよモルダー。
『今日はひまわり畑が満開なのだ!そこがおすすめなのだ!』
うーん、やっぱりどこからか声が聞こえる・・・・不思議だなぁ。
まさかハムスターが喋るわけないもんな。
「おまたせこころちゃん」
そんな事を考えながら、こころちゃんに後ろから話しかけると、「はわっ!」とびっくりした様子でぴょんっ!ととびあがるこころちゃんであった。
そんな俺たちの様子を、あと直立したやけに丸っこいハムスターがこっちをじーっとみていた。
「・・・ん?どうしたハムスター。」
じっとこっちをみているハムスターが気になったので声をかけてみた。
『へけっ』
「・・・へけっ?」
オイオイオイ今このハムスター普通に人語をしゃべったような気がするぞ。
気のせいかな?・・・気のせいだよな。
ハムスターはこちらに背を向けると、他のハムスターたちのところに帰って行った。
ねこたちのふれあいコーナーにいって、帽子をかぶっておおきなかばんを背負った女の子と仲良くなって一緒にねこと遊んでいるこころちゃんに癒されたり、
ここの長老格(?)ゴリラのイボンコくんに話しかけられたり(?)した。
『やぁしょうきち少年。今日は小さな女の子を連れているが合法だろうね?』
何が合法だ、ペッタンコにするぞこのゴリラ。
イボンコくんは俺が小中学生の頃からここにいる古株で、結構な歳の落ち着いたゴリラである。
まえはほのかや明日菜ともここにきていたが、その時もよく『モテモテだな、少年。だがお前たちが俺の翼エンドとかいったらムーンライトバタフライぶちこむからな』と圧をかけられていた(気がする)。
------------黒歴史かよハハハってかえしてたけどあの目は本気だったな。
そんな事を思い出しつつイボンコくんの前で足を止めた。
『しょうきち少年、君は彼女たちの心にきちんと向き合わなければいけないのではないか?』
イボンコくんに見つめられるとなぜか脳に直接イケボが響いてくる気がする
気のせいかもしれない・・・気のせいじゃないかもしれない・・・。
「何だよイボンコくん急に」
俺のそんな言葉に、イボンコくんはフフッ、と笑って親指を立てるとねぐらに帰って行った。
・・・うん。そうなんだよなぁ。
手を繋いでいる先のこころちゃんが、俺の様子に不思議そうに小首をかしげている。
「何でもないよ、こころちゃん」
そうして歩いた先には、一面のひまわり畑があった。




