35.夏休み:こころちゃんとお出かけしよう①
夏休みの初日。
天気はよくセミの鳴き声も煩くって超暑い。
まだ8時前何だな、これが。
布団から出てリビングの冷蔵庫を見ると、ものの見事に食べるものが何もない。
机の上には昨夜父さんが仕事でもらったと動植物園のペアチケットがおいてある。
「これどうしたもんかな・・・」
キョウスケ君とセレンに譲っちゃうかなーと思案しつつ、
コンビニに買い物に出かけることにした。
コンビニで買い物を済ませて帰る途中、ズゥン、ズゥン・・・と足音が聞こえた。この足音は・・・
「こころちゃん、おはよう!」
「しょうきちくぅん、おはよぉ~う!」
振り返ればそこにこころちゃんがいた。
退院してすっかり元気な様子で、スポーティーな格好だからジョギング中かな?
今日もにこにこ元気な笑顔と重低音の声だなぁ・・・ん?
「そうだ、こころちゃんって明後日・・・今週の土曜は暇?」
「?特に予定はないけど、どうしたのぉ?なにか、手伝うことぉ?」
そういって小首をかしげるこころちゃん。
そういえばこころちゃん、いつも色々と皆のために頑張ってるよな・・・よし。
「いや、動植物園のチケットペアチケット貰ったからこころちゃん一緒にどう?
ほら、子供の頃から動物の面倒見るのとか好きだったでしょ」
俺の言葉に、え、えぇぇぇ?!えぇぇぇ~~~~?!ととっても驚くこころちゃん。
「わ、わたし?私なんかよりあの、その」
しどろもどろになって巨体を揺らしてはわわ軍師をしている。・・・かわいいね!
むむむ、こころちゃんに「私なんかなんて」言葉は似合わないぞ!
「でもこころちゃん動物好きでしょ?折角だし一緒にいこうよ」
と言うと、はうう・・・と顔を真っ赤にして頷いてくれた。
よーし今週はこころちゃんといっぱい動物をもふもふするとしよう。
「で、でもわたしおっきいから・・・動物さんがびっくりしちゃうよぉ」
「大丈夫だって、こころちゃんはかわいーーんだから、力を抜いてありのままの自然体でにこーってしてれば問題ないでしょ」
「か、かわ・・・?!力を抜いて・・・ありのままの自然体・・・はわわ、それって」
「ん?」
なんだか驚いた様子のこころちゃん。
?よくわからないけどまぁ土曜日が楽しみだな!
そして土曜日、待ち合わせの時間。
駅前のベンチに腰掛けてこころちゃんを待つ。
ギラギラ照りつく夏の日差し!もう夏真っ盛りだなぁ・・・
そんな事を考えながら待ち合わせの30分前について待ってると、
凄く小さな女の子に声をかけられた。
「お、お待たせ、しました・・・」
身長140㎝、体重35kgで薄灰色の髪をストレートにしたかわいらしい女の子は・・・
「こっころちゃん!」
んん?いつもの大きい姿じゃなくて
--------------小学生の頃に引っ越していく前の姿じゃないかこれ
今日は肩を出した白地に花柄のワンピースに、つばの広いフェルトハット。
うさぎさんのポシェットをたすき掛けにしている。
・・・ランドセル背負っていたら小学生にしか見えないぞ。
「ふぇえ?ど、どうして驚いてるのぉ?」
「今日はちいさな姿なんだねて思って!その姿も可愛いよ!」
「えぇっ、力を抜いてありのままの自然体で・・・って、
この姿でってことじゃなかったの・・・?はわわ、私まちがえちゃった・・・」
そういってしょんぼりするが全然間違いじゃないぜ!
こころちゃんはハート様のすがたでもこっころちゃんのすがたでもどっちも可愛いんだから全然問題があるはずがない!問題があるなんて言う奴いる?
いねぇよなぁ!?
そんなこんなで、はわわしたりしょんぼりしているこころちゃんは、
同じ歳なのに妹でもできたみたいでついつい頬が緩んでしまう。
ついつい頭に手が伸びてしまうので、なでなで・・・なでなでなでり、と頭を一杯撫でると、ふわあああ・・・と目を細めて嬉しそうにしている。
なんかすっごい癒される・・・
よーし、じゃあ今日はこころちゃん(こっころのすがた)をめいいっぱい甘やかそう。
そうしよう。文句ある奴はいる?
いねぇよなぁ!?(本日2回目)
その後エキチカの動植物園に2人で移動して入り口でペアチケットを出したら、
受付のお姉さんが「あら、兄妹でなんて仲良しなのね~」といいながら、
でもこのチケットは高校生以上2枚よ、
といって1枚分を小学生料金として差額を払い戻してくれた。
説明しようと思ったけれどお姉さんに、
にこにこしながら
「優しいお兄ちゃんでよかったわね~、楽しんできてね~」
と上機嫌に送り出されてしまった。人の話を聞かない人だな・・・。
「小学生・・・小学生・・・妹・・・ううっ、わかってはいるのですが・・・」
こころちゃんも凹んでいた。
よしよしとこころちゃんの頭を撫でるとくすぐったそうに目を細めた。
こころちゃん(こっことのすがた)はなんかすごく小動物っぽいぞ。
さて、最初はどこから回ろうかなぁ
ウキウキソワソワしながら、看板地図を見るこころちゃんの小さな背中をみながらほっこりした気持ちになるのであった、まる。




