SIDEこころ:こころがんばる!
もうすっかり日が暮れたなぁ、と思いつつ空を見上げていると、
今しがたなぎ倒した悪い人たちをモヒカンさんたちが縛り上げている。
女の人に酷いことをしようとして襲い掛かっていたところをモヒカンさんの一人・・・連蹴くんが見つけて、運よく助け出すことが出来たのだ。
夜道はちょっと怖い。
けど、最近この街に悪い人たちが出没するようになったと、モヒカンのみんなたちから聞いて、じっとしていられなかった。
私は街の平和のためにこうして悪い人たちをやっつけてまわっているけれど、実際による見回りをするようになるとこんな状況に出くわすことが珍しくなくなってしまった。こころ、悲しいな。
しつこく女の人をナンパする、というのは序の口で、女の子を攫おうとしたり、無理やり酷いことをしようとしたり----中には男の子にも---する人たちがどこからか入り込んできているのだ、
そんなの絶対、許せない。
街の皆の平和は、私がまもっちゃうんだからっ!
そう、決意を新たにふんす!と鼻息を荒くする。
「それじゃあっしはコイツらを交番に突き出してきますぜ・・・ヒャッハァーッ!」
肩パットをつけた男の子、狩栖くんが、ニヤァ・・・と笑い、
気絶し縛られた人を担いで運んでいく。
・・・うーん、今夜はたくさんカロリーを使っちゃったから、いつもよりいっぱいカロリーをとらないと!体型を維持するのはカロリーから、だからねっ!
そんな事を考えていると、モヒカンさんの一人で、一年生の無礼怒くんが思い出した様子で話しかけてきた。
「そうだ、ハート様。俺気になる事があったんですよ」
もう、ハート様は恥ずかしいからやめてよぉ、とブレイドくんを軽くビンタすると、ふき飛ばされて壁に半分めり込んでしまった。いけないいけない、ちょっと力が入りすぎちゃった・・・ごめんね、ブレイドくん。ヒューヒューいってるけれど生きてる、良かったぁ。
「コヒュー・・・コヒュー・・・ゲホッ、あ、それでその事なんですけど、俺と歯車連先輩が商店街の方を見回って時に、その時に藤島サンを見かけたんです」
藤島さん・・・ほのかちゃん!?
でもほのかちゃんって夜遅くに出歩くような子じゃないよぉ?
「うぅん、見間違いじゃないのぉ?」
「俺もそう思ったんですけど、あれは絶対藤島サンでした。しかも、村正クンと違う・・・なんか顔はまぁいいんだけどなんかいけすかない男とイチャついてたんですよね・・・ねぇギャレン先輩!」
そういってブレイド君があたりを見回すとギャレンくんがいない。あれ、っと見ると物陰から少しだけモヒカン頭と顔をのぞかせてこちらを見ている。
「ナズェミテルンデス・・・アンタトオリハ・・・ナカマジャナカッタノカ・・ヴェッ!」
さっき壁にめり込んだダメージが思った以上にひどかったのかなぁ、息も絶え絶えになりながらギャレンくんに話しかけるブレイドくん。
「もう、ブレイドくん。ギャレンくんはね、少し照れ屋さんなんだよぉ。人は、みんな違って、いろんな個性があるの。だからお互いの個性を大事にしてあげないと、だよぉ」
そう言ってブレイドくんの頭をしかりつつ撫でると、
ゴキゴキと首の骨の音を鳴らしながらブレイドくんの頭が360度くらいくるくる回る。
「う・・・うん、そうっすね・・・俺が悪かったです」
そうやって、反省した様子のブレイドくんに、めっ!としておく。
プラプラした首を元の位置に治しながらブレイドくんがにこっ、と笑いながら言った。
「それ、村正くんが言っていた事ですよね。俺達みたいなはみだしものにも分け隔てなく接してくれたかっけー先輩っすよね」
正吉くんを褒められると、何故か胸の奥がとても、ぽかぽかする。
「うん・・・えへへぇ、しょうきちくんはぁ、かっこいいんだよぉ」
「ヒューッ!ハート様、乙女ってるぅー!」
「そ、そんなことないよぉ~」
照れて、ブレイドくんの肩をえいっ☆とはたくとブレイドくんが首まで地面に埋まってしまった。
「さ・・・さすがハート様・・・マジパワフルガールっす・・・ガクッ」
ああっ、耐久力が限界を超えたのかブレイドくんがきぜつしちゃった!
よいしょっ、とブレイドくんの頭を鷲掴みにして地面から引き抜いて、肩に担ぐ。
しばらくしたら、目を覚ますよね!
「だが・・・あれは間違いなく藤島ほのかだった」
物陰からギャレンくんが言ってきた。
「・・・そうなのぉ?本当なんだね・・・」
ギャレンくんは、騙されやすくてヘタレやすいけれども嘘をつくような男の子じゃない。ギャレンくんも言うのなら、本当なのだろう。
「・・・いったいどうしちゃったんだろう、何かあったのかなぁ、ほのかちゃん」
正吉くんとほのかちゃんは幼馴染同士、とってもラブラブなカップルで、とっても応援しているのだ。ほのかちゃんと一緒にいる正吉君は、とても素敵な笑顔を見せてくれる。そんな正吉君の笑顔をみてると、なんだかとっても胸がドキドキしちゃう・・・不思議だなぁ。
「あの男は多羅篠世志男・・・モテ系で売ってるモデルだ。随分とヤンチャをしている女たらしで、良くない話も漏れ聞くが親の金でもみ消してるという噂だ。手を出した女を妊娠させたという話を聞いたのは一度や二度じゃない」
そういい、ギリッ、と歯噛みするギャレンくん。
「・・・その人を、知っているのぉ?」
どちらかというと物静かなギャレンくんが、こんなに怒っているのははじめてみるのでびっくりしてしまう。
「多羅篠との直接の縁はないが、その取り巻きに九尺という男がいる。その男に縁がある。九尺に・・・俺は幼馴染の佐代子を弄んで捨てられた。・・・いまもあいつは、佐代子は・・・病院から出てこれない」
そういい、拳を握りしめてふるえるギャレンくん。
「・・・その話、詳しく、聞かせてくれるぅ?」
女の子を傷つけるなんて、ゆるせなぁい。
それに、そんな事をする人とお友達の人とほのかちゃんが一緒にいただなんて・・・なんだか、心配。
正吉くんが知ったら、きっと悲しむよね。正吉くんの悲しむ顔なんて、みたくないなぁ・・・。
そう思うと、よし、と心に活をいれる。
正吉君やみんなの笑顔を護るため、こころ、がんばります!