34.
ほのかのお父さんとお母さんが帰った後、
父さんが造ってくれたパスタを2人で食べながら色々な話をした。
「あの凡骨も昔、幼馴染を寝取られていた。
幼馴染を寝取られる痛みは知っていたはずなのだがな、
自分の娘には甘かったようだ。
人には色々な面がある。
見えている所だけがすべてではないという事もあるということだ」
そう言う父さんは昔を懐かしむような、惜しむような表情を浮かべる父さん。
「・・・そうだね」
俺自身もほのかの別の側面を見抜けなかったのだから。
そんな事を考えていたら、あんまり寝付けられなかった。
----------それからの毎日は、今まで通りの穏やかな日常だった。
ほのかだけがいなくなった日常は、それでも1日、2日、10日と過ぎていく。
そうやって、ほのかがいないことに慣れていく自分を感じた。
まもねーちゃんとその家族が(恐らく)色々な方面に(手段を択ばず)手を打ってくれたような気配を感じるけど、おかげさまで俺たちの学園生活は思ったよりも早く、
日常のあるべき姿に戻っていった。
ところでまもねーちゃんは来年うちの学校に赴任してくるそうだ。
何かすでに決定事項のようにいっていたけど・・・不思議だなぁ。
「どうした村正ァ!目の下にクマが出来てるぞ村正ァ!」
「おう。おそろいだな・・・おそろいだな?」
そういう明日菜の目にしたにもクマが出来てる。
「スマホでホゲモンがサービス開始したからそっちでもやってたんだけどさー、どうして皆中央を譲らないのかなぁ」
「よくわからんがいつも通りで安心したよ」
そんな風に、朝の教室で明日菜と“いつも通り”のやり取りをしたり。
圧倒的な腹囲の巨体の女の子が、地響きを立てながら向こうから歩いてくるのに遭遇したり。
「しょうきちくぅん、おはよぉ~!」
「こころちゃん!退院したんだね!」
無事、退院してきたこころちゃん(ハート様のすがた)を見て元気になる。
「うん!もう元気だよぉ!・・・はわわ」
会話の途中で、物陰にダダダッと移動するこころちゃん。
どうしたんだろう?
当然後を追いかけるぞ!
「むぐむぐ・・・かろりーがたりなくなっちゃったよう・・・」
人目につかない物陰で、
ちいさくしぼんでしまいったこころちゃん(こっころのすがた)が急いでパンを食べている。カワイイヤッター!
「はわっ?!うううっ、はずかしいよう、みないでしょうきちくんっ・・・」
耳まで真っ赤にしているこころちゃん(こっころのすがた)。
こころちゃんは大きくても小さくてもカワイイ!ので何も問題ないんだぜ!
一応、学校では大きい姿で通すつもりだそうだ。
こころちゃんは学園の平和の象徴だからいろいろと大変なんだなぁ。
何かあったら手助けするつもり1000%だ!となったり。
夏休みも間近に迫ったある日の学校の帰り道、
テツくんと並んで帰ったり。
「テツくん、最近村雨見ないんだけど知ってる?」
「最近ネット小説にハマったらしくて、
異世界に行って竜と闘うために次元を絶って別次元に移動しようとしていたらしいですよ。
間違えて通りすがりの部員を異世界送りにしてしまったそうなので、
今は連れ戻しに行ってます」
いつも通りの表情で、さらっと冗談を言うテツくん。
「えぇー?!・・・なんて、テツくんも冗談言うんだね」
そういってけらけらと笑っていると、
テツくんが小首をかしげて不思議そうな顔をする。
「え?」
「え?」
・・・えっ?
そんなこんなで賑やかな友人たちとの過ごす日々は続き、今日は終業式。
明日から、夏休みだ。
休みの前だからだろうか。
朝早く目が覚めたのでなんとなく、新聞を取りにポストを開けた。
そこには無地の封筒が入っていて、宛先には俺の名前が書かれていた。
見慣れたその文字は、子供のころから見知った人物が書いたもの。
「・・・ほのか」
封筒を開けると、中にはSDカードが一枚だけ入っていた。
そのSDカードからは、不思議と不穏なものは感じなかったが・・・
それでも、どうしてもそれを今、見る気が起きなかった。
いっそほのかを忘れてしまいたい、という気持ちもある。
俺はSDカードを封筒に戻し、部屋に戻ると机の引き出しに入れた。
さて、今日の終業式を終えたら・・・夏休みだゼーーーーーーーーーーーット!!




