31.
軽傷だった俺は一週間ほどで退院することができた。
退院後は、起こした事件が事件だからそれなりの罰則は覚悟していたが、
俺に与えられたのは停学3日と反省文という予想よりもはるかに軽い罰だった。
ちなみにこの誘拐騒動に関わった皆はほぼその程度、申し訳程度の罰ですんでいた。
いやぁ・・・明らかにこれちょっとおかしくないかなぁ、
と思ったところでまもねーちゃんに何かした?と聞いたら
「・・・ちょっと言えないコト♪」
と笑顔で返されてしまった。
・・・うん、深く追求するのはやめておこう。
多羅篠の両親から俺たちに何かを言われるという事もなかった。
正直、多羅篠さん家のよし君を再起不能に追い込んだのでそちらからも何かを言われる覚悟はしていた。
ちなみに入院中に事の次第を父さんに話しておいたが、父さんは話を聞くとクワッと鋭い目つきになり、
「ふウン・・・その程度の問題など、俺は今まで何度でも乗り越えてきた!全速前進だッッ!」
と頼もしい言葉を返してくれていた。
同席してくれていた秘書さんも「決闘開始ィ!」とやる気に満ちていたのだが、
そちらも予想外だった。というか父さんいつのまにかそんな重役になっていたのね、
全然仕事の話をしないから知らなかったよ。
・・・家に帰ってきても全然そんな話をしないからなぁ。
ちなみにまもねーちゃんに何かした?と聞いたら
「・・・ちょっと言えないコト♪」
とすごくいい笑顔で返されてしまった。
やっぱり深く追求していくのはやめておこうね!
まもねーちゃんの笑顔にスゴ味が増した気がするなぁ。
学校では、軽傷で簡単な検査だけで済んでいたテツくんや、全くの無傷だった(やっぱりすごい)村雨と過ごすことが多くなった。
剣道部員がほとんど病院送りになって、部員のお見舞い以外は自主鍛錬だけの村雨が帰り道に一緒に買い食いしたりしてくれるのはちょっと新鮮だった。
そんなこんなで今日も男三人で仲良く帰っていた。
そんな折、テツくんがぼそり、と教えてくれた。
「多羅篠世志男は、ビルから転落した際に頭部をぶつけて、その際に眼球が破裂し脊髄も損傷して一生盲目の寝たきりになったようです」
-----------うわぁ、因果応報とはいえ悲惨だな。
「落下の際に顔面もぶつけたため自慢の顔もツギハギだらけで二目と見られぬ顔になり、今では視力を失いしゃべる事も出来ず、自分自身では身体を動かすこともできない状態になっただけでなく、股間もガラス片でざっくりと抉っていたため切断されて失ったようです。本当に、ただ生きているだけの状態みたいですね」
多羅篠に関しては同情はしないが、悲惨で惨めだな、という憐みの心は感じてしまう。
「それと、僕は知立先生にすべての資料を渡していません」
・・ん?
「・・・そして渡してない資料は『僕が僕の意志で』扱います」
・・・んん?
そんなテツくんの言葉に、なるほど、と笑う村雨。
「そうか、成程。知立先生達『は』手を出さないということか」
んん?どういう事だろう。
「----------つくづくお前が味方でよかったと思うぞ、テツ」
「ありがとうございます。村正君は僕らが守護らねばならぬ、なので」
テツくんと村正が何か俺の頭上でコミュニュケーションしてる。
「わからないままの村正くんが可愛いですよ」
とテツくんはくすっと笑っていたが、
時々ドキッとする色気をだすんだよな・・・。
ちなみにそれからしばらくして、多羅篠一家が芋づる式に逮捕された。
・・・んんんー??
そして多羅篠一家が逮捕されたことが世間を賑わせているある日の夕方、
チャイムが鳴ったのではいはいと返事をして玄関に行く。
今日はちょうど父さんも家にいて・・・とうより、ここ最近は毎日家に帰ってきている。
なんだかんだで心配してくれているのがわかって、嬉しい。
家でもなんかカードゲームのカード見て俺の嫁・・・とかニヤニヤしてるのはちょっと怖いけど。
そんな父さんを横目に玄関に移動してドアをあけると、そこにいたのはほのかの両親だった。
あと少しだけ山があるんじゃよ




