30.
病院の中を歩いていると、元モヒカンくん----今はモヒカンをやめたギャレンくんとあった。
モヒカン君の中に見たことのある顔がいるなぁと思っていたけれど、やっぱりギャレンくんだったようだ。
なんでもサヨちゃんは多羅篠の配下にいた九尺という男に弄ばれて心身を傷つけられて、この病院に入院しているらしい。
サヨちゃんが九尺に告白されて付き合うかどうかをギャレンくんに相談しにきたとき、ギャレンくんは好きにすればいいと素直になれない答えをしてしまいそのことがサヨちゃんが傷つく原因だったと、ずっと後悔していたそうだ。
あの時、サヨコが好きだから九尺なんかと付き合うな、俺と付き合ってくれと言えなかったのが俺の罪だと語っていた。。
でも九尺を倒して、ついでに九尺の手下にいた辛味噌事件の脱糞野郎君も倒して、ギャレンくんはサヨちゃんに向き合う事に決めたらしい。
サヨちゃんがまた笑顔を取り戻せるまでサヨちゃんに寄り添うそうだ。
俺もまた元気になったサヨちゃんに会いたいから、と応援している。
そんな事を思いながら病院の屋上でベンチにすわってぼーっとしていると、
誰かが隣に座った。
「何たそがれてるんだ村正ァ」
「おう、明日菜ァ」
そこにいたのは、明日菜だった。
「具合は良さそうじゃん」
「まぁな、というか俺が一番軽症な位だ。全治半年の久我斗兄貴の方が心配だよ」
そんな俺の答えに、ケラケラ笑う明日菜。
「兄貴は大丈夫だって、殺しても死なないような奴だし!」
どこの世界でも妹ってお兄ちゃんに辛辣なのかなぁ、久我斗兄貴カワイソス。
「えっと、さ。その・・・。」
なんだか明日菜がもじもじしている。
「どうした明日菜、おまえらしくもない」
そんな明日菜を横目に見ていると、明日菜がくちを結んだあと、居住まいを正してこちらを見てくる。
なんだよ急に、明日菜らしくないな。
「改めて、助けに来てくれてありがとう。すごく嬉しかった」
「んぁっ?・・・おー、どういたしまして?といっても俺は大して何もできなかったし、誘拐に気づいてくれたのはテツくんのおかげみたいなもんだしなぁ・・・あっ、テツくんあの後大丈夫立ったかなぁ」
そう言いながら頭をかく。
実際あの場で明日菜を助けられたのはここに入院している皆や村雨たちのお陰ってのが大半だ。
「・・・そういうことじゃなくて、あの!えっと・・・ハァ、まぁ、いっか・・・」
溜息をついてなんだかがっくりした様子の明日菜。
今日の明日菜はやけに挙動不審だな。
「そういうところだぞ、村正ァ」
何故かジト目でみられるが、そんな目でみられる理由がないぞ?
「まぁいいや、この話はまたいずれ、そのうち、きっといつか。・・・それじゃ、安静にしてるんだぞ!」
そう言うと明日菜は椅子から立ち上がって、兄貴の顔みたら帰るねーと歩いていった。。
変な明日菜。




