29.仲良く病院送り
「へぇ、入り口の前にもヒグマみたいな奴がいたのか」
「はい。俺とそこのアクセルの2人で相手をしていたんですが普通に負けました。
結局、助けに来た部長が倒してくれましたが。・・・俺も鍛えなおさないといけませんね」
「バイクに2人乗りしながら木刀で竜巻起こしてあの巨体を打ち上げてから一刀両断してたッスからね・・・あの人本当に人間なんスか村正兄貴ィ」
「ハハハッ、俺はアッサリやられちまったからな--------立つ瀬がないぜ」
俺と、キョウスケ君と、赤い髪の少年----ほのかとのデートの時に助けた赤い髪の少年でアクセル君というそうだ-------と久我斗兄貴の4人は、仲良く4人部屋で入院していた。
アクセル君は多羅篠側の人間なのだが、
俺達がヒグマとやり合っている間にビルの入り口でキョウスケ君達と一緒にヒグマの兄弟と戦ってくれていたらしい。まもねーちゃんの采配で俺たちと同じ個室にいれられた。
でも兄貴呼びは恥ずかしいからやめてほしいところ。
以前助けたことのお礼を言われたり舎弟にしてくれと懇願されたが固辞した。
ちなみに俺が一番軽症で、キョウスケ君とアクセル君がそこそこ、
一番重傷は久我斗兄貴だった。
お見舞いに来た明日菜に、
兄貴がヒグマをきちんとやっつけていたらこんな面倒くさいことにならなかったんだから口だけ馬鹿兄貴と滅多糞に言われて悲しそうな顔をしていたがあまり兄貴をせめないでやってほしい。
こころちゃんが言っていたが、誰かがヒグマの頭部の耐久値を限界まで削っていてくれたから最後の一発で終わらせることが出来たといっていた。
多分それは兄貴のおかげなんだろうけど・・・久我斗兄貴は笑って、俺は負けちまった情けない奴だ、と誤魔化すだけだ。
あの大騒動のあと、多羅篠一味は捕縛されその最中に怪我をした連中は俺を含めてこうして病院に入院している。入院中も刑事が聞き込みに来たりしていたが、やはり多羅篠は逮捕されたらしい。テツくんが処分される前に様々な証拠を回収していたらしく、テツくんいわく余罪がありすぎて有罪に事欠かないと言うほどに色々なものが出てきたそうだ。それらはまもねーちゃんがお父さんがなんとかしてくれるのに有効活用する、と言っていた。
正直停学なりは覚悟のうえで明日菜を助けに行ったし、ここにいるキョウスケ君や村雨達、そしてモヒカンくんたちももなんらか罰は覚悟していてくれたらしい・・・が、まもねーちゃんが「おねーちゃんに任せておいて」とウインクしていた。
ちなみにこころちゃんは女の子なので個室だ。
俺は出歩ける程度の怪我なので、たまにこころちゃんの様子を見に行くのだが、顔を出すとぱあぁっと素敵な笑顔で出迎えてくれる。
いつも俺の怪我の様子を心配してくれるけれども、怪我の度合いで行けばこころちゃんの方が酷いんだから俺のことよりも自分の身体を大事にしてほしいな。
そんなこころちゃんだけれども、
ヒグマとの戦いの後は小学生の頃の小さな姿になってしまっていた。
灰色の長髪の、どうみても小学生にしか見えないような華奢な女の子の姿をみていると、悲しい気持ちになってしまう。
カロリーをたくさん摂取すれば短時間は見慣れた大きい姿になるから大丈夫だよっ!とにこーっとしながら言っていたけれど、こころちゃん(こっころのすがた)とこころちゃん(ハート様のすがた)みたいなものだろうか。
一応、あの場にいた人間はこころちゃん(こっころのすがた)の事を知っているが、このことは秘密にしていくみたい。学校にいる時は日々蓄えたカロリーでまた身体を膨らませるそうだけど、こころちゃんが秘密にするならもちろん俺も全力で手伝うぞ!
こころちゃんが学園の平和の象徴みたいなものだからね!




