27.審判(2回目)
「最後って・・・何それ、意味わかんないよ・・・!!」
そう言って、頭を抱えながら叫ぶほのか。
前はここでテツくんに背中を押されたが、
今は俺が自分で覚悟を決めて言わなければいけない。
-----------汚い言葉であっても、自分の意志で、強い言葉で。
「お前が起こしたことの重大さを考えろ。
こんな騒ぎだ、
どうやっても警察沙汰だし明日菜を助けるために、
俺と一緒にかけつけてくれた奴らも良くて停学、
下手したら退学になるかもしれないんだぞ。
多羅篠をいいように殴った俺だって、停学か退学をくらうかもしれない」
「何?なんでぇ・・・?なんでぇ?なんでしょうちゃんがぁ?」
あぐえぐと泣きながら聞き返すほのか。
「考えることから逃げるな大馬鹿野郎。
俺は散々に多羅篠を殴ったからな。
それにお前は誘拐犯の一味だ。
未成年だから逮捕はされないかもしれないが、
なんらかの罰は逃れられないし退学は免れられないだろう」
退学、という言葉に顔を青ざめて絶叫する。
「いやー!!そんなの嫌っ!そんなことしたらしょうちゃんの隣にいられない!
やだ!やだやだ!やだーーーーーーーーーーーっ!!」
「やだですむかよ犯罪者。お前は誘拐、俺は傷害。
お前も俺も経歴に傷がつくんだよこの股ユル腐れビッチ、
-------お前の所為でな。
確かに直接の実行犯は多羅篠かもしれないが、
きっかけはお前だ。
お前が明日菜を誘拐しようとする多羅篠にのって明日菜を誘い出した。
お前がしでかしたせいでどれだけの人間が迷惑を被ることになったと思うんだ」
「ビ、ビッチって・・・ひどい、わたしそんなんじゃない!
私はしょうちゃんが好きなだけ、私の所為じゃない!!私は悪くない!!」
「二股かけて一年も他の男とヤッてながら何が好きなのはあなただけだよなんて寝言は寝ていえよドグサレビッチ!!
------お前が悪いんだよ!!目を背けるな!俺を視ろ藤島ほのか!!!」
こと此処とに至って頭を抱えて蹲ろうとするほのかのところまで歩き、
腕を掴んで立ち上がらせる。
「や、やあっ、やあっ」
身を捩り逃げようとするほのかを掴んで立ち上がらせると、そのまま窓辺に歩いていく。
「視ろ!!これがお前が起こした惨状だ!!!」
そこには、このビルの周囲で倒れている多羅篠の部下や、モヒカンたち、剣道部員の皆。
立っているものも、無傷の者はほとんどいない。敵も味方も皆傷ついて、ボロボロだ。
「あっ・・・あっあっ・・!!」
「お前が多羅篠と仕組んだ誘拐騒動で、ここにいる皆が傷ついた。
その目でよく見ろ、これがお前が望んだことの結果だ。
お前が起こした馬鹿みたいな騒動だ。
満足か?お前はこれで満足か?
何か言えよ、言ってくれよ藤島ほのか」
呆然とした様子で、外の様子に見入っている。
「自分を助けようとした友達をお前は売ろうとしたんだよ。
その手で友情をドブにブチまけたんだよ糞馬鹿女」
「わ・・・わたし、わたしこんなつま、つまも、つもりじゃ、なかったの・・・」
「こんなつもりじゃなかったというのはお前の想像力不足だ。
今この場で怪我をして倒れている全員にお前は私は悪くない私の所為じゃないこんなつもりじゃなかったといって声をかけて回れるのか?
これをみてもお前は自分が悪くないと言えるのか?
-----------ほら、口に出せ。言ってみろ。
俺の前で、明日菜の前で、この場にいる全員に、聞こえるように言ってみろ。
私は何も悪くないってな!!!」
「---な、さい」
最初は、蚊の鳴くような小さな声で。
「めん、なさい!ごめん、なさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!!あああああああああああっ、うわああああああああああああん!!私が、私が!嫉妬したから!私が!浮気したのは私なのに!しょうちゃんを盗られたくなくてっ!嫉妬したから!あああっ!ああああああああっ!!」
そういって、ぼろぼろと涙を流し、顔をグシャグシャにして泣きわめくほのか。
手を離せば、顔を手で押さえて、ごめんなさい、ごめんなさいと泣き叫ぶ。
・・・随分と乱暴な事を言ったし酷いコトを口にした。
敢えて口汚い言い方を、腹をくくって言った。
胸糞の悪くなるような言葉でほのかを攻め立てた。
前回と同じ過ちは、しないように。
-----------それでも、覚悟して言ったけれど・・・やっぱり嫌な気分だ。
はー、とため息をつく。
「ごめん、ほのか」
泣き続けるほのかに、謝る。
そんな俺の様子に、ほのかは泣きながら、なんでしょうちゃんが、あやまるのっ、とえずきながら聞いてくる。
「俺はほのかに甘かった。
中途半端な俺の甘さがほのかを追い詰めた。
長い間ずっと一緒にいたから、
浮気をされても、結局ほのかとの縁を切れなくて、
ほのかにこんな馬鹿な事を起こさせた。
俺は一回目の浮気の時にハッキリとお前を突き放すべきだった。
その後もお前に甘い顔をするべきじゃなかった。
原因は俺にもあるんだ。一方的に責めたけど、ごめん、ほのか。」
そう言ってほのかに頭を下げる。
「・・・違う、しょうちゃんは悪くないっ・・・私がばかだったの…!
好きだって言いながら他の男の人に身体を許して、
ただ気持ちいいことに溺れて、好き勝手にやって・・・
本当は、しょうちゃんのためなんかじゃなかった!
ただ自分が気持ちいいからしょうちゃんを裏切ったの!!!」
地面に伏せながら、そう絶叫するほのか。
「許してもらえると思った!どうせあやまれば今迄みたいに元通りになるって、
パパもママもしょうちゃんも、みんなみんな許してくれるから!
私はかわいいから!!!
だから大丈夫だって自分に言い聞かせて!
私はしょうちゃんを裏切ってました!
明日菜がいなくなればしょうちゃんの隣に戻れるってそう思って・・・
明日菜を多羅篠君に売ろうとしましたっ・・・・!!!」
ごめんなさい、しょうちゃん、ごめんなさい明日菜ちゃんと、地面に伏せながら泣き続けるほのか。
「・・・私もぶってごめんほのか」
近くに歩いてきていた明日菜が、しゃがんでほのかの背中をさすりながら声をかけている。
「明日菜ちゃんはわるくないっ、わたしが、わたしがばかだったから・・・!」
「じきに警察が来る。誰もかれもしょっぴかれて、大騒動は店じまいだ。
その先はきっと、俺とお前のゆく先が交わることは無いよ。
ごめん、本当にごめんほのか。
それと、今までずっと一緒にいてくれてありがとう」
精一杯の気持ちを込めて、正直な気持ちを伝えると、
ほのかの泣き声がさらに大きく強くなった。
何かを言おうとしているけれども、えずいて言葉にできないような。
「なァに無事解決しました、みたいな顔してるんだよ・・・ゴミカスどもが・・・てめぇらのせいで滅茶苦茶だ・・・」
気づけば、多羅篠が立ち上がっていた。
ダメージが浅かったのだろうか、迂闊だった----
まもねーちゃんが多羅篠を捕まえようと走るが、その手にキラリと光るものが見えた。
床に散らばっていたガラス片だろうか?
「駄目だまもねーちゃん近づくな!!」
俺の言葉に動きを止めるまもねーちゃん、とりあえずベネッ!
こちらに向かってくる多羅篠を睨む。
「俺の人生を滅茶苦茶にしやがって、死ねよやぁっー!」
咄嗟にほのかを庇おうとする明日菜をかばう様に、2人の前に身体を滑らせる。
オーガニックな語尾でガラス片を突き出してくる多羅篠から、二人をかばう。
-------南無三!!
襲い来る痛みに目を閉じるが、胸元にとんっ、という軽い衝撃を感じるだけで、痛みは来なかった。
「・・・守ってみせるって言ったろう、ジェリ・・・村正君」
「テツくん?!」




