SIDEこころ:こころのココロ(中)
小学生になったころの私は、臆病で、
いつもおどおどしていて自分の思ったことを口に出せなかった。
変わった髪色のことを言われるのも恥ずかしかったし、
クラスの他の子が怖かった。
でも、学校で飼育しているうさぎさんは、いつもふわふわもこもこしていて可愛くて、
うさぎさんだけは怖くなかった。
だから飼育委員になって、うさぎさんにご飯をあげたり、もふもふするのが私の学校で唯一楽しい事だった。
「ウサギが好きなの?」
そう言って話しかけてきた男の子が一人だけいた。
いつも元気で、時々ちょっとおかしなことを言って、
それでいて人にやさしい男の子だった。
その男の子の周りにはいつも何人も友達がいて賑やかなのに、
わざわざ私に話しかけてくるなんて不思議だな、と思っていた。
でもその男の子は一度話しかけてきてからは、
あれやこれやといろんな事を話しかけてくるようになった。
変わった子だなぁと思いつつも、
話しかけてこられること自体は嫌いじゃなかった。
飼育委員をの事も褒めらて、
好きでやっていることだからと言ったら「ありがとう」と言われた。
なんでありがとうって言われるのかよくわからなかったけれど、
それでも人の役に立ったのならうれしいな、と思った。
そんなある日、何がキッカケだったのかはわからないけれど
クラスの子たちにいじめられるようになった。
最初は足を引っかけられたり、無視をされたり、
些細な事だったけれども、ある日の放課後にたくさんのクラスメートに囲まれて、
ぶたれたり、髪の毛を引っ張られたりした。
おばあちゃんが買って送ってくれたランドセルを踏みつけにされたりもして、
とても悲しかった。
そんな事をされていると、いつも話しかけてきてくれる男の子が教室に入ってきた。
----おうしょうきち、おまえをまざれよ
1人が、男の子にそんな事を言っていた。
男の子は、驚いた様子で私たちをみていた。
このままじゃ、この男の子も私みたいにいじめられちゃうかもしれない。
-------だいじょうぶだよ
どうすればいいのか迷っていたのか、固まっている男の子と目が合った。
だから、大丈夫、と伝えた。
頑張って、笑いながら。
でも、そこからその男の子はすごい剣幕で怒って、
私を捕まえていた子たちを、どんどん倒していった。男の子はあっという間にクラスの子たちを蹴散らして、私のランドセルを拾って私て、私に逃げるように言った。
その時にはもう、起き上がった子が男の子に掴みかかっていた。
そこから私は無我夢中で職員室に駆け込み、
泣きながらそのことを伝えた。
上手く言葉にできなかったかもしれないけれど、
ただならぬ事態なのは伝わったみたいで先生たちが大慌てで教室に駆けこんでくれた。
そうして私のいじめが明るみになり、
いじめていた子たちは学校やそれぞれの親にこってりしぼられたみたいだった。
そしてそのことを知ったお父さんとお母さんは、
田舎のおじいちゃんおばあちゃんの所に引っ越そう、という話になった。
うさぎさんや、男の子と離れるのは嫌だなぁと思ったけれど、
私にはどうすることもできなかった。
お別れの最後の日、口下手な私が感謝を伝えために、
精一杯の気持ちを込めたお手紙を渡しすと、
てれくさそうに紙袋を渡してくれた。
中に入っていたのはウサギさんの髪飾りで、とてもうれしくて。
-----------ずっと大事にするね、と自然な笑顔で言えた。
「いつか、きっと、また会えるよね・・・正吉くん」
車にのっても、顔を出して、遠くなっていく男の子にいつまでも手を振っていた。
そうして男の子の姿が見えなくなってから、わんわんと泣いた。




