25.
「スタンガンと言っても痛みを感じるだけで気絶したりするほどの威力はないのが欠点ですね。
不能にできればよかったのですが」
手に持ったスタンガンを持ちながら言うテツくん。
今日姿を視ないと思ったらこんなところにいたのか、しかしその姿何?!
「多羅篠に接触するためにこの姿で潜り込んでいました。
今日、ようやくこの根城に潜入できたところで井上さんが運び込まれてきたので驚きました。
あとは皆が助けに来てここがバタバタしている隙に気配を消して潜んでいたんです」
姿は美女のままにテツくんの声で淡々と説明していく。ちょっとシュールだ。
しかし本当になんでもできるねテツくん!!頼りになりすぎる!!
「次はそちらの大きい人の相手をすればいいんですね」
そう言ってスタンガンを握りながらコツコツと足音を立てて近づいていくテツくん。
「無茶だ・・・テツくん・・・!」
痛みに呻きながら声を上げる。
「そいつを捕まえろヒグマァ!俺を舐めやがって、そいつもブチ犯してやる!!」
ヒグマが頷き、テツくんに手を伸ばすが、そこにテツくんの姿はなかった。
「-------?!」
ヒグマの後ろからスタンガンを押し当てているテツくん。いつの間に?
「あまり効いていないようですね」
そう言いながらてくてくと歩き、その姿が掻き消える。
「どこだ?!どこ行きやがったクソガキィ!!探せヒグマァ!」
多羅篠が叫びながら周囲を見回している。勿論ヒグマも。
ほのかに助け起こされて、上半身を起こせる程度には回復しているようだ。
「とっとと捕まえろヒグマァ!」
多羅篠の指示にに、ヒグマがテツくんの姿を追うがするが、その姿は見えない。
コツコツ、コツコツと時折足音が聞こえるが、
それはいったいどこから聞こえているのかよくわからない。
スタンガンでの攻撃を警戒しながら、周囲を警戒するヒグマ。
攻撃をしようにも、捕らえようにも、姿も気配も感じないのだ。
---------ただ、申し訳程度の足音がいろんな方向から聞こえる。
きっとてくてく歩いているんだろうけどもどこにいるのかさっぱりわからない。
しびれを切らしたヒグマがやみくもに手を伸ばし、振り回し、探そうとするが当然、当たらない。
コツコツ、コツコツ
一見するとシュールな光景だが、俺たちは固唾をのんで見守った。
これが存在しないクラスメイトの100%の全力、本気の力。
今聞こえている足音でさえ、自分の位置を特定させないための幻惑に思えるほどだ。
・・・その間に俺の身体も動かせる程度には回復したようだ、
まだ痛みはあるが立ち上がったりはできるぞ
「くそっ、これじゃらちが明かねぇ・・・ん?」
多羅篠が立ち上がって、動けるようになっていた。
何かに気がついた多羅篠が、走り出した。
その先にあるのは、消火器?
「ヒャハハハハ!こういうのはなぁ、点じゃねぇ、面で攻めりゃいいんだよぉ!」
そう言ってヒグマの方に消火器を向け、発射する多羅篠。
------しまった!!
消火器の煙に、テツくんの姿が浮かび上がる。
ゲホゲホ、と咳をして動きを止めたテツくんの胴をすかさず両手で掴み、持ち上げるヒグマ。
「やめろー!・・・くそっ、テツくんを離せッ!」
そんな光景に立ち上がろうとしたがまだ身体がふらつく。
明日菜とまもねーちゃんがそれぞれ支えてくれるが、
走って駆け寄れるほどには回復していなかった。
「随分と面白い手品だったなぁ、えぇ?
俺様の大事なおいなりさんをいじめてくれたんだ、
もう男だろうと関係ねぇ・・・てめぇもハメ狂うまで可愛がってやるからな」
そういいながらヒグマにつり上げられたテツくんに近寄っていく多羅篠。
「だいたい、こんなの時間稼ぎにしかならねぇ。
俺様のおたのしみタイムがほんの少し先延ばしになっただけなんだよ!!」
「最初から敵うとは思っていませんでした」
捕まえられた状態で、いつもと同じように話すテツくん。
「あぁ?」
訝し気に聞き返す多羅篠。
「村正君が言ってくれた事です。
人それぞれみんな良いところがある、長所がある、と。
だから僕は僕に出来る事をしました」
「何言ってんだおまえ、話、通じてるか?」
ポツポツと喋るテツくんの様子に妙なものを感じたのか、動きを止めている。
「僕ではこの人を倒すことはできません。
だから姿を現す前に、このフロアに皆がいることを連絡をしておきました。
あとは時間を稼げばいいだけです。
---------------だから貴方の言うとおり、これはただの時間稼ぎです」
そこで多羅篠がテツくんの言っていることを理解した。
勿論、俺たちも。
「村正くんが向き合わなければいけないのは、この男とそこの女です。
-----------それ以外の障害は僕たち皆で排除します」
壁が破壊される轟音が響く。
俺がガラスを割って入ってきた時とは違う、
もっとデカくて重いものが入ってきた。
---窓辺を視れば、大穴が開いている。
砕けた壁の瓦礫と土煙の中心で、地面に右拳を突き立てて着地したような姿勢
-----床パンのポーズで、そこにいた。
驚異の胴囲をセーラー服に押し込んだ、
大きな体のツインテール姿。
「正吉くん、皆、もう大丈夫。・・・私が来たよ!」




