SIDE久我斗:裏口戦
まもりさんが走り去っていく音が聞こえる。
本当に強い人だ、と思わず笑みがこぼれる。
「おいおいどこにいくんだよ爆乳処女のネーチャン。
おめーの処女膜も俺様がいただいてやるっつってんだろ」
ほのかちゃんの頬を舐めながら多羅篠が俺を指さす。
イチイチ態度が人を舐めた野郎だぜ、
やってることも言ってることもな。
「-------行かせねぇよ」
そう言って身構える。
ヒグマと呼ばれたデカブツも、重心を低くして攻撃に備えているのが解る。
「あの、正吉のお姉ちゃんを遂行する彼女が、
俺はお気に入りなのさ。
小さいころに面倒見ていた男の子に、
大きくなってから再会して胸をときめかせてしまう所なんか最高だ!
強い子だ、惚れがいがある!
俺の人生をくれてやってもいいほど!
そうだ!俺はついに見つけた!文化の神髄おねショタ成長のすばらしさを!!」
そういいながら全身の気を整え臨戦態勢に持っていく。
「あぁ、おねショタァ?何言ってんだテメェ?
惚れた女なのにヤらねぇとか意味わかんねぇよ、
お前、恋愛対象にすら見られてねーんだろうが」
あぁん、とわけがわからないという顔をする多羅篠。
お前みたいに女を抱くことしか考えてない奴に、この浪漫はわからねぇだろうよ。
「んな事ァわかってるんだよこの七光りがァ」
「なんだと?イラつく野郎だ・・・やれ、ヒグマァ!」
俺の挑発にあっさり乗る多羅篠。
お坊ちゃんは煽り耐性が低いようだな。
「だったらそのままオネンネしてなぁ!
受けろよ、俺の強さを!」
そういってヒグマに跳びかかる。
様子見なんてできる相手じゃないのを肌で感じる。
全力で顔面を蹴りに行く、が、
「俺の蹴りを受けた?!」
微動だにせずに俺の蹴りを顔で受けた。
「ハッハッハ!弱い弱い!」
多羅篠がそう言えば、顔を桁俺を掴みにかかろうとするヒグマ。
掴まったらマズい、と飛びのいて距離を取り直す。
「俺が弱い?俺がウィークリィ?」
「貧弱貧弱、弱すぎだぜぇ」
そういってニヤニヤしながら煽る多羅篠。
「----冗談じゃねぇ!」
二度、三度とヒグマの顔面に蹴りを見舞っていく。
こちらを掴もうとするヒグマの動きをステップし、バック転し、
すべて回避しながら何度も攻撃を続けるが、効いている様子はない。
距離を大きく取り、再度加速してからの飛び蹴りを顔面にいれた。
・・・だが、平然としている。
「本当に弱いなオマェ?」
「じゃあこれならどうだあッ!・・・必殺のLV3ブリッツゥゥゥァ!」
俺の奥の手、渾身の技だ。
高く跳躍してから全身を旋回させ、加速して蹴りを叩き込む。
ヒグマの顔面に蹴りが入り、その衝撃の余波で土煙が舞った。
----------完全に入った感触だ。
ヒグマの顔面に思い切り蹴りを突き立てている・・・取った!!
「捕まえたぜグラサン野郎」
---------嘘だろ。
多羅篠の声がする・・・ヒグマは全くの無傷だった。
それどころか、土煙が晴れるとその左腕で俺の足を掴んでいた。
「・・・やれヒグマァ!」
足を掴まれたまま地面に叩きつけられる
「ッンの野郎!!」
意識が持っていかれそうになる、だが妹と弟分、それにまもりさんの身の安全がかかってるんだ。
掴まれたまま、振り上げられる瞬間にヒグマの顔面を蹴る。
だが何度蹴りを淹れても、ダメージを受けた様子はない。
そんな筈はないはずだ。
ダメージは確実に通っている筈なのに---------
「これが俺の強さ、ドーピングブーステッドマンのヒグマだぁ。
非合法な改造を重ねて強くした俺に従順な怪物だ、
お前らが束になっても勝てるシロモノじゃねぇよ」
そういって再度地面に叩きつけられ、
足を掴まれて逃げられないまま、今度は足で踏みつけられる。
「踏みつぶせヒグマァ!」
全身に嫌な音が響く。
何本か、折れた。
「もっともっとだヒグマァ!」
多羅篠の声に合わせて、
足を掴まれ地面に叩きつけられては
何度も何度も踏みつけられる。
その度に身体のどこかが折れる音を聞きながら、
なんとか立ち上がろうとするが立ち上がるために必要なところがもう折られたようだ。
---------なんて化け物を作ったんだ、多羅篠ッ・・・!
遠くなっていく意識の中、高笑いをする多羅篠と、
ざまぁみろ、とでもいわんばかりに満足そうなほのかちゃん。
・・・そうか、ほのかちゃんはもう、そっち側に行ってしまったんだな
子供のころから知っている子だから、やはり悲しい気持ちになる。
・・・すまん、正吉。明日菜を、まもりさんを頼む
そう思いながら、意識が暗転していった。




