SIDE剣道部:表門到着
先に行ってくれという剣道部の皆を後に、セレンを後ろにのせて全速力で自転車をこぐ。
「うおおおおおおっ!間に合え!!」
入り組んだ裏道を、必要なら坂から飛んだりしながらひたすら走る。
ちょうど見晴らしの良い平地に出たところで、遠くにビルが視えた・・・あそこが多羅篠の根城か!
だが俺の前にいかにもガラの悪そうな連中が立ちふさがる。
「隣町の連中だな?多羅篠サンから近づけるなって言われてンだよ、お前らはここまでだ・・・おっと後ろのオネーチャンはおいていきな」
正直こんな雑魚に関わるのは時間の無駄だ。
速攻で片付け--ん?
自転車から降りようとすると、背後から地響きのような音が聞こえる。
振り返れば土煙をあげて、何かがこちらに走ってくる・・・あれは鳥か?飛行機か?違う
----自転車に乗ったモヒカン軍団に牽引された、
玉座に鎮座したハート様・・・じゃなかった山茶花先輩だ!!
猛然と自転車の群れが爆走してくる。
荷車か何かの上に玉座のようなものが鎮座していて、
それに座った山茶花先輩が両腕をくみながらこちらを睥睨している。
・・・ここは20XX年もしくは世紀末なのだろうか。
「ヒャッハァー!ハート様ァ!剣道部の一年と多羅篠の部下がにらみ合ってますぜェ!」
「オラオラオラァ!ハート様親衛隊参上だぜオラァァ!待たせたな剣道部のぉ!」
先頭のモヒカンたちがこちらに手を振っている。
「うん、みえたよぉ・・・蹴散らしちゃおう!」
そう言って片腕をあげる山茶花先輩。
「モヒカンさんたち、やっちゃって--------蹂躙だよぉ!」
アラララライララライ、と咆哮をあげてこちらに突っ込んでくるモヒカンの集団。
「な、なんだあのバケモンとモヒカンどもは・・・?!」
多羅篠の手下たちが戦慄している・・・気持ちはわかる。
とうっ☆と玉座(?)から山茶花先輩が着地すれば、地震のような振動が足元を揺らす。
「ふ~・・・キョウスケ君、セレンちゃん、ここは私たちに任せて、先に行って?
----------ここを殲滅したら、すぐに追いつくからっ」
にっこり笑う山茶花先輩。
俺たちの横を通過し、自転車に乗った肩パッドモヒカンたちが不良へと襲い掛かる。
ウィリーのように自転車で不良の顔を引いたり、
不良にチェーンをひっかけて引きずったり、絵面がマッドでマックスなアレか世紀末だ。
山茶花先輩とモヒカンたちは結構バイオレンスな見た目だが・・・今はとても頼もしい。
「ありがとうございます、俺とセレンは先に行きます!
後からうちの部員も合流する筈です!ご武運を!!」
「きをつけてねぇ、2人とも怪我しちゃダメだよぉ?」
そういいつつ、その隙に近づいてきた多羅篠の部下を平手打ちする山茶花先輩。
吹き飛ばされた多羅篠の部下の全身がボキボキに変な方向を向いて地面を転がっていく。
流石の破壊力・・・観ているだけで冷や汗が出る。
「汚物は消毒だー!」
「オレァクサムヲムッコロス!!」
「こんなところで、コドモタチニイワレナイ!」
モヒカン達も絶好調なようだ。
・・・敬礼して、自転車を走らせる。
「いつ見てもすごい人たちだよねぇ~」
「あぁ・・・世の中には上がいる・・・いや、本当に・・・凄いな」
セレンと話しながら、道中多羅篠の部下を振り切って指示されたビルの入り口前へとたどり着いた。
「俺たちが一番乗りか」
「キョウスケがバイクより速い速度でペダルこいでたからじゃないかなぁ」
そんな事を言いながら自転車を止めて、ビルへと走る。
「なんだこいつら?これから多羅篠様がお楽しみだって時によぉ!」
「くそっ、まだ多羅篠様が帰ってきてねーのに来やがった?!」
「相手は2人だ、多羅篠様が帰ってくる前にシメちまえ!女は俺たちの玩具にするぞ!」
そういいながらビルの中からガラの悪い連中がぞろぞろと出てくる。
-------が、1人、2人、と続けて崩れ落ちる。
「ライアットって暴動、って意味なの。・・・勉強になったでしょ?」
俺の後ろには、自転車を降りたセレン。
ギターケースから取り出した、
簡易組立式のモデルガン(合法)・・・もとい、自分の身長程もあるライフルを構えていた。
「援護するわよぉ、キョウスケ。
------まだ悪の親玉は帰ってきてないみたいだし、気合いれていかないとね!」
わおーん、と言いながらライフルを撃っては一発撃つごとに多羅篠の部下を仕留めていくセレン。
一応、合法モデルガンだとは聞いているが凄い威力だな・・・
いや、セレンの腕前がいいのか。
どちらにせよ俺も負けていられない。
「---------よぉ、鋼の狼、南野キョウスケ。・・・会いたかったぜ」
ゆるいウェーブの赤い髪。
一目で鍛えているとわかる男が歩いてきた。
「お前に恨みはないがお前の強さに用がある。
お前を倒させてもらうぞ」
「・・・お前が何者かは知らん。今は時間がない、速攻で倒させてもらう」
そう言って初手から全速力で踏み込み、突進する。
「俺の名は有馬加速!俺の強さの糧になれ南野キョウスケェ!」
「・・・退け!」
お互いの拳がお互いの顔に、腹に、めり込んだ。




