SIDEまもり:お姉ちゃんと兄貴
隣町の情報屋に行こうとしていたところで、井上さんに声をかけられた。
そのまま隣町に移動して今は2人で歩いている。
・・・何で父に頼まれたなんて嘘をついてまで私を手伝ってくれたんだろうか
何とも言えない気持ちで、切り出すタイミングをはかっていると井上さんの携帯電話が鳴った。
失礼、と電話を取った井上さんの様子が、真剣なものに変わる
「何・・・明日菜が攫われた、だと?」
聞き捨てならない井上さんの言葉に思わず足を止める。
「解った、俺も行く。お前も無茶するなよ正吉」
「-----------詳しく聞かせてください」
私を見る井上さんが、困った・・・という様子で思案した後、
「妹が攫われたようです。それも、ちょうど今我々が追っている男に。申し訳ないが急いで助けにいかないといけない。行き道で安全なところまで送りますので----」
「私も行きます。今「正吉」っていいましたよね。正吉君絡みなんですよね」
つまり、正吉君と仲のいい女の子が---今回は井上さんの妹さん----が、
多羅篠に酷いことをされそうになっていて、
正吉君と井上さんはそれを助けようとしている、と。
「その通りですが無茶だ、どんなの相手が出てくるかもしれないんだ。ねもりさんは助けを呼んでくれればいい」
「多羅篠一家は警察にもコネを持っています。
すぐに動くとは思えません。
少し時間はかかりますが現地へいってうちのSPを呼びます。父への説明と・・・証拠のために私もいきます」
「だからってそんな危ないことをさせられませんよ!」
頑なに譲らない私に井上さんが声を上げる
「言い争ってる時間が惜しいです、急ぎましょう。・・・大丈夫ですよ、井上さんが守ってくれますから」
そう言ってにっこりと笑う。
この人が考えていることや嘘をついてまで私を助けてくれたことの理由はわからないけれど、悪い人ではない。
今も、自分の妹さんを助けようと必死になっているからだ。
「-----ッそれは殺し文句ですなぁ。
・・・わかりました、いきますよきもりさん!」
そういって私を抱えて、凄い速度で走りはじめる井上さん
「きゃあ?!ちょ、ちょっと----」
「この方が早いので失礼します!しゃべると舌をかみますよ!!」
裏道から裏道へ、壁を走って登って、ビルの屋上から屋上へ飛び移って、
飛び降りて着地して、また走る。
信じられない動きだけど、凄い速さで一直線に走ってる・・・この人、本当に人間なのかしら?
珍しく口数が少ないのは、妹さんが心配だからだろうか?なんて思う。
・・・待っていて正吉君!今度はおねーちゃんがたすけてあげる!




