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4.

「ごめん、今日は友達と約束してるんだぁ」

そういって申し訳なさそうに放課後デートを断られた。・・・最近おなじみになった光景だ。

終業のチャイムの後、ほのかを教室に迎えに行きつつ放課後デートに誘ったが、今日も今日とて断られた。なのでいつものようにほのかを見送る、

そう言って手を振りながら歩いていくほのかを見送っていると、すぐ隣から声がした。

「準備はできています」

「うおおっびっくりした!」

俺のすぐ隣には、俺より頭一つ背の低い小柄な男の子・・・テツくんがカメラを構えて立っていた。

「いきましょう、村正君」

そうしててくてくと歩き出すテツくん。

存在感は希薄だがいざというときの行動力がすごいのと、こうみえて怖いもの知らずなのだ。今日のテツくんは、なんというか“やる気”に満ちているのを感じる。

「またせてごめーん!」

パタパタと後ろからかけてきたのは明日菜だ。

俺たちの随分先を(存在感を薄くしながら)早足で歩いていくテツくんを見失わないようにしながら、追いついてきた明日菜の方を向く。

「ボクなりに最近のほのかの予定とか、聞いて回ってきたんだけど・・・少なくともボクの知る限りの女子は最近ほのかとは放課後や土日に遊びに出かけてないよ。春休みぐらいから付き合いが悪くなった、って」

春休み、という言葉にドキッとする。

俺とのデートが断られるようになったのもそれくらいなのだ。

・・・ほのかに限って、まさかそんな事はないよな?

考えながら歩く様子の俺を、なんかゴメン・・・と謝ってくる。

「いや、明日菜が謝ることじゃないよ、こっちこそ気を使わせてごめんな。むしろいろいろ調べてくれて、ありがとう」

「なんだよ、急に殊勝な事言われると照れるじゃん」

それから明日菜が女子に聞いてきてくれた色々な情報を聞いていると、春休み明けからほのかはよくスマホのメッセージで誰かと頻繁にメッセージをするようになったり、あまり人のいないところで誰かと電話をしたりしているようだった。スマホのメッセージについては、テレテレとした様子からクラスが違う俺---恋人---とやり取りをしているのだろう、とほほえましく思われていたようだが・・・それ、俺じゃないぞ。そもそもほのかは自分から頻繁にメッセージを送るような性格ではないのだ。

後者の電話については女子たちもよくわからなかったようで、最近よく電話をしてるなぁ、と不思議がられていたとの事。

・・・なんだよそれ、俺といる時はそんなそぶりを見せなかったじゃないか。

そう思ったところで、そういえばほのかと休日に出かけたのはいつだったかな・・・と思ったところで春休み前から、ほのかと一日出かけることをしなくなったな、とぼんやり思い返していた。

去年のクリスマスイブ、ほのかから、体調を崩したという急な連絡が来たのでお見舞いに行こうとしたら断られ、結局自宅でぼんやりすごしたクリスマスイブまで記憶がさかのぼると切なくなった。

明日菜と話したり、テツくんを見失わないように、ほのかに見つからないように2人で歩いていく。テツくんの存在感が強くなったり弱くなったりしているのはほのかにみつからないようにだろう。ほのかに見つかりそうになるとスゥッ・・・と存在感がなくなり、逆に俺たちがテツくんを見失いそうになると、ここにいますというように存在を認識させて来る。

テツくんはスポーツは苦手だからというけれども、何かのスポーツですごく花開きそうな才能の気がするぞ。

すると、テツくんがカメラを構え、写真を連射しているのがみえた。

テツくんの視線の先を追う。

「・・・嘘だろ?」

そこには、見間違えるはずもない。俺の愛しい彼女のほのかが、この間のイケメン・・・2人でホテルから出てきたあの男だ・・・と、仲睦まじく腕を組み歩いている姿があった。

「嘘、ほのか・・・なんで?」

隣にいる明日菜も、やはり驚いて声を上げていた。

今すぐにでも駆け出したいような気持ちと、目の前の現実が信じられない気持ちで心の中がぐちゃぐちゃになっていく。

そんな俺の様子に気づいた明日菜が俺の身体が崩れ落ちないように下から支えてくれた。


随分と距離は離れている筈だが俺の様子を察知したテツくんが俺の方を振り返ると、手早くスマホを操作した後、まるで最初からいなかったかのように完全に気配を消し、(恐らく)ほのかを追いかけていった。凄い、あれが“存在しないクラスメイト”の実力だ。

ほぼ同時にピロリンッ、と俺のスマホが鳴ったので開くと、そこにはテツくんからのメッセージが届いていた。

「後は僕が追いかけます。村正君はどこかで休んでいてください。井上さん、村正君をお願いします」

ごめん・・・ありがとうテツくん・・・

「・・・とりあえずあそこ、ファミレスに入ろう?テツくんには私が返事しておくから、ほら、あるいて、しっかり!」

そういって俺の腕が明日菜の肩に回され、よろよろと近くのファミレスに入っていく。

店員さんが驚いた様子だが、「こいつ空腹すぎて元気がないんですよあはは」と笑いながらごまかしてくれているのを遠くの音のように聞いていた。

「ねぇ、嘘だと言ってよほのか」

どこかで何かのアニメで見た気がする台詞だな、とひとりごちながら、俺は明日菜に誘われてファミレスのソファーに崩れ落ちた。

「・・・あんたをバラバラに吹き飛ばさせはしないし、ミンチよりもひどい事にもさせないから」

ぽそり、と。

そんな明日菜の声が聞こえた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「嘘だと言ってよバーニー」からの引用など、沢山の作者が、ガ○ダ○シリーズのセリフなどを引用している事を多くの作品で見かけます。 そして私は作者と共有している知識が有ると思うと、作者に親近感や…
[一言] うーんこれは…ざまぁ内容は学校中の人から嫌われて自主退学orホテルから出てきたところを撮られてそれを教師陣に誰かが匿名で提出からの退学その後家族からは絶縁されるまでが王道の流れ!(主人公から…
[良い点] 作者様、安定してクズ共を描かれますね。 流石です! 間男に至ってはまだセリフもないのにクズ臭がしますw [一言] ざまぁ ざまぁを早よ…
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