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今日はテツくんがいない一日だった。
・・・寂しくなんてないよ!
昨日のほのかがあやしかったので明日菜にぴったりくっついていたつもり・・・だ。
日中もトイレ以外は側にいたし、帰り道も明日菜を家まで送るよといったが、友達と予定があるからと言われたのでギリギリまで粘ったが置いていかれてしまった。
・・・どうしたものか、こっそりストーキングするか・・・?
と思っていたところで村雨に声をかけられた。
その間に明日菜を見失ってしまったので、剣道部を見学することにする。
相変わらず村雨とキョウスケ君の動きは人間離れしてるなーと思いながら剣道部の部活を見ていると、スマホが鳴った。
そこに表示されている名前は----テツくんだ。どうしたんだろう。
「井上さんが多羅篠に攫われたようです--------場所を送ります」
珍しく切迫した声で、しかしなぜか小声のテツくんの言う言葉に、
「明日菜が・・・多羅篠に攫われた・・・?」
と思わず繰り返す。
「警察にも連絡したのですがこの街の警察がどれだけ動いてくれるかわかりません!山茶花さんには連絡がついたのですが村雨くんが電話に出なくて、連絡を---すみません電話を切ります」
明日菜が?
クソッ、どうして・・・
やっぱり後をストーキングしてでもついていくべきだったか・・・!
続いてスマホに送られてきたのは、地図だ。
隣町のハズレにあるビルにマークがされている。
ここに、明日菜がいるのか。
スマホを握っていると肩を掴まれた。
「村正。今の話、詳しく聞かせろ」
真剣な表情をした村雨だ。
観れば、キョウスケくんや、セレン、その他剣道部員が動きを止めてこちらを見ている。
「詳しくはわからない!テツくんから明日菜が多羅篠に攫われたって連絡が来た。
場所は・・・ここだ。すぐに助けに行かないと」
「どこだ、見せろ」
そう言いスマホを覗き込む村雨。
「電車やバス、タクシーでは時間がかかるな。・・・待っていろ、俺の親友なら・・・10分もたたずに足を手配してくれるはずだ」
アイツ・・・プールであったあの人か!
「部長。俺たちは自転車で先に行きます。全力で最短ルートを移動します」
キョウスケくんと、セレン、それに剣道部のみんながこちらをみている。
「わかった。頼んだぞ」
「ありがとう、キョウスケ君、セレン、それに皆!!」
応ッ!(一人だけ、は~い任せてぇ!という返事だったが)という言葉を残してザザッと走って行った。
・・・セレンがギターケースを担いでいったのが気になった。
・・・剣道部なのにギターケース?
「---------落ち着け村正。井上は無事だ、必ず間に合う。
・・・大丈夫だ・・・!」
焦れる気持ちで、ぎり、と歯噛みする。
・・・しかし、テツくんは今どこにいるんだろう。
どうして明日菜が攫われた事がわかったんだろう、
とふと思った。




