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SIDE隣町:ケイコク

-----------ボスが新しい女を連れてくるらしいぞ

そんな言葉でアジトがざわついていた。

あれやこれやとなにやら器材を引っ張り出してきて準備している様子だ。

・・・まぁ、俺には関係のない話か。

そんな事を思いながら窓辺から外を見下ろしていると声をかけられた。

「貴方は向こうに混じらないのですね」

振り返ると、薄い桜色の長髪を左肩に流してロールした眼鏡の女がいた。

一見すると有能な美人秘書、といった雰囲気だ。

薄い胸元をきわどく開いたスーツ姿。

身体つきは華奢でひどく線が細いが、女に興味がない俺から見ても美人で・・・妖しい魅力を感じる。

眼鏡の奥の表情は理知的だが、浮かべる表情は退廃的なアンバランスさが人目を惹く。

「あぁ、俺はそういうのには興味がない。アンタ、見たことない顔だな」

「これは失礼、申し遅れました。わたくしは古谷野こやのやすか・・・多羅篠様の配下の人にご紹介いただき、今日初めて此方に参りました。

多羅篠様にビジネスの交渉に、ですわ」

くすり、と笑うがその目が笑っていないように見えるのは気のせいか?

「そうか。俺は有馬加速アリマアクセルだ」

名前を名乗られたので名乗り返して、視線を窓の外に向ける。

「そうですか、有馬様。--------どうして貴方はこのようなところにいるのですか?」

「・・・あぁ?」

古谷野と名乗った女の言葉に、顔を顰めながら振り返りなおす。

「貴方は多羅篠様の一味の方に不快感を抱いている筈なのにその下に身を置いている。

それがどういう事なのか、わたくし気になりまして。・・・個人的な興味からですけれど」

「-----全力で闘いたい男がいるんだ。そのためにはここにいるのが一番手っ取り早い」

「あらあら。どんな大層な理由かと思えば、そんなくだらない理由でしたか」

そう言って、嘲るような表情をする古谷野。イラつき、睨むが怯む様子はない。

「くだらない・・・くだらないだと?お前に何が解る」

「わかりませんわよ?だって貴方とわたくしは今日初めて会ったんですもの。

くすくすくす・・・でも滑稽ですわね、有馬様。

そんなに闘いたいのなら直接挑みに行けばいいだけなのではありませんか?

こんなところでわざわざ燻る理由にはならないのではなくて?」

徹頭徹尾こちらを舐め切った態度の女に、立ち上がって顔を近づけて睨みつける。

「-----俺には俺の理由があるんだよ。いずれここに居る奴らは全員俺が潰す」

「・・・そうですか、そのいずれ、がいつかはわたくし大変気になりますが。

・・・その際に何かご入用でしたら是非お声をおかけくださいまし。

勉強、させていただきますわよ?」

笑っているが目は笑っていない。

・・・まるで人の心の中を見透かしたような女だ。

古谷野はコツコツとヒールの足音を鳴らしながら、俺の隣の窓に立ち、外を見回す。

「不愉快だ、失せろ。俺は女を殴る真似はしたくない」

「そうですか、心根は腐っていないのに在り方が歪んでしまっているのですね。

今からでも遅くありませんわ、早々に鞍替えしてはいかがです?

今なら格安で鞍替え先をご紹介、できましてよ?」

「-------くどいぞ!」

そう言った時にはそこに古谷野の姿はなかった。

「・・・どうしたぁ、有馬ァ!?」

億から俺の声に反応した誰かの声が聞こえる。

「チッ・・・なんでもねぇよ!」

・・・あの女、現れた時はヒールの音なんてしなかった。

最初からそこにいなかったかのように存在感が亡く、去るときも急に存在感が無くなった。

・・・音もなく表れて、雲か霞のように消えやがった。

まるでそこに存在していないかのような感覚。

-----------クソッ、狐にでも化かされていたみたいだ。


けど、あの女の言っていたことが、心に刺さった。

何者だったんだ、あの女。

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― 新着の感想 ―
[一言] キラキラネームに違和感が出ないくらいにはキラキラネーム多いですよねこの作品
[一言] ん、存在感が自由にできるのはあの人だけど、さて。
[一言] 警告か、確かに有馬の考えは歪みすぎ。なんの言い訳にもならない、多羅篠グループの構成員。知立家が介入し、包囲網が完成しつつありそうですね。現行犯で芋づる式に潰す方向だから、明日菜は囮なんでしょ…
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