19.
キョウスケくんと柄にもなくバトルした翌日、案の定筋肉痛で欠席した。
とはいえ流石に2日連続休みはよくないので痛む身体で登校した。
のそのそと席に移動すると、俺の様子に明日菜が声をかけてきた。
「うわっ、しんどそう。生きてる?」
「お前がマフティー構文なんてするからだぞ明日菜ァ・・・!オレノカラダァボドボドダ!」
・・・ついいっちゃったけど今の謎言語はギャレンくんを思い出すなぁ。
ギャレンくん元気してるかなぁ?
「・・・ねぇ、村正。お昼一緒にいいかな?」
その日の昼、珍しく遠慮気味に聞いてくる明日菜に驚きながら答える。
「どうしたんだよ、いつもなら有無を言わさず席をくっつけてくるだろ」
「あー・・・いや、ほら。一昨日のお詫び・・・的な?」
そういいつつ明日菜が手にしているのは2人分の弁当箱。
「まじか助かる。・・・購買で買うかなって思ってたんだよ」
・・・全身筋肉痛で朝から弁当作るって場合ではなかったんだよなー。
「うい、それではよしなに」
そういって席をくっつけると、いそいそとお弁当を広げる明日菜。
からあげ、たまごやき、アスパラのベーコンまき、その他もろもろ。
色とりどりの料理は、俺がかなり好きなものばかりだった。
「・・・村正がよく食べてるもの、作ってみたんだけど」
「すげぇ、よく見てるな・・・俺の好物ばかりじゃん!やるな明日菜ァ!」
そういって、手を合わせていただきますをする。
からあげを一つ、頬張る。
・・・?!これ凄く美味しいぞ!!
「うおおお、すっげえ美味しい!」
そんな俺の言葉にガッツポーズを取る明日菜。
「イェーイ!・・・いやぁ、村正と交換してたおかずの味から、
あたりをつけて味付けしたんだよね---隠し味はゆずでしょ・・・ビンゴ?」
当たってるぞマジかよすげぇな明日菜
そういえば家でも親の手伝いとか家事してるって言ってたな・・・
久我斗兄貴もそんなこと言ってたし。
なんだかんだいいお母さんになると思うぞ明日菜ァ!
「うまい!・・・うまい!うまい!うまい!」
美味い!
どれもこれもすごく美味しい!
凄く俺の好みの味付けがされてるぞ・・・
普段おかずを交換して食べることもあったけど、
俺が家でする味付けにかなり寄せてきてる・・・僅かなヒントから凄いな明日菜・・・
美味いものに美味いといって召し上がるのは作った人と食材への感謝なのだから美味いが止まらない・・・止まるんじゃねぇぞ・・・
「わかったから!
そんなこと言ってると映画のラストで胴体に穴あけられて死んじゃいそうだからやめてよ」
あまりに美味いを連呼したのでクラスメートからもすごく注目されて明日菜も恥ずかしそうだった。すまんな明日菜でも美味いが止まらない!
おっと、思わず夢中になって食べてしまった・・・
「すまん明日菜、だいぶガッツリ食べてしまった」
「いいって、元々食べてもらうために作ったんだし」
そういっておにぎりをパクパクですわ!する明日菜。
「なんかすまん・・・」
「いえいえ。美味しいっていって食べてくれるのは嬉しいし、好きなだけ食べていいよ。ボクはのこったものでいいから」
------そんな事言われると多分全部食べてしまうぞ
というのが顔に出ていたのか、「どーぞどーぞ」とケラケラ笑う明日菜。
くっ・・・俺はすっかり明日菜の手の上のモンキーって感じだ・・・
くやしい・・・でも、
何をどうしても美味いに決まってますわ
美味すぎて手が止まりませんわパクパクですわ
「ご馳走様です!!」
そういって空になった弁当箱を前に手を合わせる
「はい、お粗末様でした」
明日菜も手を合わせて、お弁当を片付けていく。
「めっっっちゃ美味かった!ありがとう明日菜ァ!しゅき!」
「しゅ・・!?----そういうところだぞ村正ァ!」
顔を真っ赤にした明日菜にぼふぼふと叩かれていると、テツくんがじっと外を見ていたのに気づいた。
あっ、テツくんそこにいたのね。
「テツくんどうした?」
話しかけると、「いえ-----」と言葉を濁らせる。
テツくんにしては珍しい反応。
テツくんの視線を先を視るが、誰もいない。
さっきまで廊下に誰かがいてこちらをみていた、のだろうか。
「すみません。気のせいだと、思うのですが」
テツくんのその言い方が、気のせいじゃないような気がした。
まさか・・・ね。




