いつかの夕暮れ
遠くに陽が沈みつつある、夕暮れ時
去年----いつだったかの帰り道を明日菜と二人で並んで帰っていたときのこと。
「ねぇ、やっぱりボクって変なのかな」
「何がだ?」
唐突に聞いてきた明日菜の声が、なんだか暗く感じて聞き返す。
「ほら、普通の女の子ってアイドルだメイクだってそういうのに夢中でしょ?こうやって、ゲームに夢中になって、いつも目の下にクマ作ってるのってボクぐらいじゃん」
そんな事を言う明日菜の顔が影になってうかがえない。
そういえばクラスの女子たちになんかそんな話をされていたような。
「----全然変じゃねぇよ。明日菜らしくていいんじゃね?」
「・・・ボクらしくって何さ」
「お前はゲームに目を輝かせて勝敗に一喜一憂してる時の顔が一番かわいいって事だよ」
「かわ・・?!な、何だよ!ふざけてるの?」
俺の答えを冗談と受け取ったのか、膨れた様子の明日菜。
「ふざけてないさ。だって明日菜はよく人に気を配ってるし、
なんだかんだで優しいし、
あと裏表なく感情を出してくれるから付き合いやすいしな。
そういうところも俺は好きだぞ。・・・友達としてだけどな!」
「何それ、褒めてるのかけなしてるのかよくわかんないよ」
「褒めてるぞ」
「・・・・・・そ。ありがと」
そういって暫く、無言で並んで歩く。
なんだかちょっと照れくさいぞ。
「あ~あ・・・ほのかがちょっと、羨ましいな」
「何でだよ。明日菜は明日菜のいいところがあって可愛いじゃん」
「もう!そういうのはほのかにいっぱいいってあげなよ----あんまり私に言っちゃダメだよ」
「あれ、今お前私って言った?」
「いっ・て・ま・せ・んー」
そう言って顔をあげた明日菜の様子はいつも通りだった。
一歩、二歩、三歩。跳ねるように俺の前を進んだ明日菜がくるりとこちらを振り返る。
両手を腰の後ろで組んで、黒ぶち眼鏡の奥の目が弓を描いて。
その頬が少しだけあかいのは、夕焼けのせいなんだろうか?
-----------はにかむような、照れるような、そんな表情で。
「ボクも村正が好きだよ。・・・友達としてだけどね!」




