16.
駅前の待ち合わせの15分前につくと、そこにはもうかなりの人数がいた。
逞しい二の腕をみせつけるようなタンクトップに半パンスタイルの村雨、赤いジャケット姿の私服は期待のルーキーで鋼の狼----京介君。
急に声をかけられてびっくりしたがテツくんもいた。
ほどなくして現れたのは、茶色がかった金髪をポニーテールに結んだ美人、
武老人セレンだ。村雨を通じて知り合って何度か話したが、普段からキョウスケ君に積極的に絡んでいてみていてわかりやすい。将来は姉さん女房かな?
何か過去に事故に巻き込まれた時に知り合っていたとかなんとか。
「みんな~、おまたせぇ~」
ズゥン、ズズゥン・・・と地鳴りを響かせ、土煙と共にバクシンバクシン!してくる巨体、あれはこころちゃんだ。薄手のワンピースが女の子らしくてかわいいよね、イメージにもぴったり!ちなみにそんなことを言うと、うぅ、恥ずかしいよぉ・・・ととってももじもじしていた・・・まったく、 こころちゃんは可愛いね!
待ち合わせ時刻ほぼぴったりに、唐突に肩を叩かれた。
「ボクが最後だね・・・ごめん、皆お待たせ」
振り返ると、そこには明日菜がいた。
いつものようなお団子ではなく、少しウェーブのかかった黒い長髪をおろした、
シャツとパンツスタイル。今日は珍しく目の下にクマもなく、眼鏡もかけていない。
なので、綺麗な顔立ちをさえぎるものがないぞ。
よく見れば駅前を歩く男たちもこちらに注目している気がする。
「おう、明日菜。今日は雰囲気変えたんだな・・・そういうのも可愛いと思うぞ」
「か、可愛・・・?!」
かあっ、と赤くなる明日菜に、ケラケラ笑う俺。もうっ、とふんす!とむくれていた。
「よし、全員そろったな。それでは行くぞ」
村雨に先導されて俺たちはプールに移動した。
村雨はふんどしスタイルを希望していたが流石に憚られ、海パンをレンタルしていた。
さすが鍛えているだけあってこの中でもダントツの筋肉具合。同じ男としてはちょっと羨ましいところもある・・・うほっいい漢って感じ。
キョウスケ君は競泳用といった感じのブーメランパンツで、「せっかくだから競泳用コースで存分に泳いでみたいので」との事。この子結構ストイックだよね。
「ところで部長や先輩とも勝負をしてみたいのですが・・・先輩泳ぐことも結構強いですよね。あと普通に戦ってもつよくないですか俺と一戦模擬戦をお願いしたいのですが」
キョウスケくんは勝負事好きだよね、こんな所でも誘われてしまった。
泳ぐことは苦手じゃないだけだし俺は喧嘩とかそういうのとは無縁だぞと適当に誤魔化しておく。
中学の頃に柄にもなくバトルに精を出したら地獄の筋肉痛に苦しんだからな・・・
そういえばあの赤い髪の少年は元気にしてるかなぁ・・。
ちなみに村雨は「いいだろう、俺が相手をしてやる」と結構ノリノリ。
この師弟はどっちも勝負事が好きなので似た者同士だと思う。
あと分の悪い賭けにつっこみがちなところもそっくりだし、
プールにいったら2人で競泳バトルでもしてそうだな。
ちなみにテツくんはそれどこで買ったの・・?というようなストライプ柄で半袖ひざ下までつながっている昭和風水着。あ、俺は普通の海パンね。
着替えを終わって施設に移動すると、巨大なスライダーや流れるプール、競泳用プールなどがあるとんでもなく広い屋内プールだった。勿論出店などもあるが、今日はスポンサーの招待日だからかどの出店も無料だそうで。
「イェ~イ、そこの男子たちぃ、お・ま・た・せ」
そういいつつキョウスケに飛びついているのはセレン。布面積がやけに少ないモノキニ水着が目に眩しいぜ。ちなみに抱き着かれたキョウスケ君が一切体幹がブレてないのすごいよね、女の子に飛びつかれたのに体の軸が揺れさえしなかった。さすが鋼の狼だぜ。
そんなキョウスケくんにからんでいるセレンを応援していると、水面にズン、ズンと振動の波紋が走った。
恐竜のテーマパークの映画でこんなのあったよな、と思っていると、そこには「さざんか」とひらがなでかかれた名札を胸に付けた、スクール水着のこころちゃんがこちらに手を振りながら走ってきた。
「みんなぁ~、待たせちゃってごめんねぇぇぇぶっるぁぁぁぁ」
屋内プールに響き渡る、強力WAKAMOTOな重低音ヴォイス。
圧倒的な腹囲をはちきれんばかりのスクール水着で包み込んだこころちゃんだ!
にこにこ笑顔が眩しくってかわいいなぁ。
こころちゃんは学校の皆でプールだから学校の水着を持ってきたんだって!
こころちゃんはいつだってよいこなのだ。頑張り屋さんなのもポイント高いぞ!
ちなみに後で聞いた話、スクール水着をもってきたこころちゃんに女子陣が今度一緒に水着買いに行こうね!こういうときはお洒落な水着を着るものだから!と力説したらしい。
こころちゃんならどんな水着でも可愛いと思うけどねー。
「・・・村正ァ」
「おう、明日菜!」
明日菜は腰にパレオを巻いたブラジリアンビキニで、普段は着ぶくれして隠れがちなスタイルを惜しげもなく全開にしている。
出る所はでて引っ込むところは引っ込んでいる凄いスタイル。
今日の明日菜は黒髪ロングの正統派美少女!って感じを前面に出してきてるな・・・。
普段身だしなみに無頓着なだけで、明日菜はお母さんにでものすごく美人なんだよな。
気安い関係だからあんまり意識していなかったけど。
「うぅっ・・・、何か言ってよ、そんなに、変?」
恥ずかしそうに身を捩る明日菜。
うっ、普段とのギャップでなんだかちょっとドキってするぞ。
「・・・明日菜」
「・・・う、ハイ!」
照れたままにシャキッ!とする明日菜。
「・・・特盛り?C?いや、もっと----D、まさか・・・Eかっ!!」
「-------------そういうところだぞ村正ァ!」
明日菜のしなる跳び蹴りが俺の顎を打ち抜いた。
ついつい照れ隠しのつもりで言ったけど、あっ、あっあっあっポックルしちゃう視界が暗転しちゃ-----




