2.
「ごめん、今日は家の用事で買い物があるの
・・・今度また埋め合わせするから!」
終業のチャイムの後、
ほのかをデートに誘ったがまたもや断られてしまった。
最近はほのかとデートできなくて寂しいのだが
・・・用事があるなら仕方がないか。
とはいえ春休みあたりから、
ほのかにデートを断られることが多くなったのは感じている。
朝、顔を合わせて喋るといつもと変わらないのだが、
土日のデートや、
放課後の下校デートは打率半分以上で断られている・・・気がする。
ほのかもほのかで用事や友達付き合いがあるだろうし、
無理に誘うわけにもいかないので、
そういう時はおとなしく見送るようにしている。
こんな風にデートを断られたときは、
夜寝る前にはメッセージをいれてくれる時もあるので、
きちんと気にしてくれているんだな、と嬉しくなる。
・・・ほのかも忙しいんだろうな、人気者だからな。
そんな事を考えつつ、じゃあしょうがないか、
という様子で笑って返す。
ブスッとした表情で見送られたら気分悪いもんな。
「そっか・・・またタイミングあうときに放課後デート、しような」
そういうと、「うんっ!」と満面の笑みでこたえてくれるほのか。
やっぱり俺の彼女は最高だぜ・・・
そんなことを思いつつほのかと別れその背中を見送ると、
「んっふっふ・・・」という声が背後から聞こえた。
その笑い方はやめろ、
あとどっかの警部っぽい声色を出すのもやめろ。
「フラれちゃいましたねぇムラマササァン?」
そこにいたのは明日菜だった。
しかもすごくいやらしいニマニマ顔をしている。
「しょうがないだろ、用事があるんだから。
それにデートならいつでもできるんだしさ」
「ヒューッ!この聞き分けの在る彼氏面!
明日菜さん特製アスニカポイントあげる」
そういってウインクをしてくる明日菜。
なんだその勝利のポーズキメッて感じの動きは。
「前から気になってたんだけどそのアスニカポイントがたまると何かいいことあるのか?」
「バエる」
そういって人差し指を伸ばした拳ごと右腕を上に突き出す明日菜
「ばえる・・・?あぁ、映えるのか」
インスタかなにかでばえるってあったよな、それかな。
「・・・ってことで彼女に振られてヒマなしょ・う・ちゃん!
ここはボクと久しぶりにダンガムVSでもやりにいかない?
最近顔出してないから腕が鈍っちゃってさぁ」
そういいつつクイクイクルンッと両手でエアコマンド入力をする明日菜。
「・・・いいだろう。久しぶりに地獄を見せてやるよ」
「言うじゃん、でもそれ死亡フラグじゃない?」
ケラケラ笑う明日菜と、
ショッピングモールにあるゲームセンターへと向かうのだった。
「めっちゃ腕鈍ってるじゃん」
「・・・ヨワクッテゴメンネ」
クレーンゲームでとった猪の被り物を被りつつ心の底から謝った。
全然やってなかったから、
即死コンボどころかコマンド入力すらおぼつかない。
学校からショッピングモールに移動するのに30分ほどかかって、
そこから90分はやり続けただろうか。
筐体に項垂れる俺を、
はいはい他の人のじゃまにならないようにねーと引っ張る明日菜。
ショッピングモールの2階にあるゲームセンターから、
ショッピングモールの横の通りが展望できるフードコートのテラスに引っ張ってこられた。
ついでにジュースを奢られた。
ズズズ・・・タピオカジュースってまだ店先にあるんだね。
「まったく、こんな情けない姿ほのかちゃんにみせられないね・・・見せられないよ!」
「俺チンカスに・・・俺チンカスだった・・・」
ドンッ
タイミングよくそんな音がしたので、
音のした一階を見る。
モデルみたいなイケメンが、
黒髪の美少女を連れてショッピングモール横のラブホテルからでてきたところだった。
道を歩いていた人と勢いよくぶつかったイケメンを、
美少女が助け起こしている。
・・・あれ、あれって・・・
「嘘・・・ほのか?」
俺の隣で明日菜が呟いた。
「・・・まさか」
明日菜の声に俺は否定の呟きで返す。
丁度そのタイミングでラブホテルの前でとまったタクシーに2人が乗り込んだ。
「・・・見間違い、だろ」
遠目だからハッキリとはわからない。
でもあの黒髪、あの横顔は・・・。
そしてあの服は俺とのデートでほのかが着てきたことのある服だった。
・・・まさか、ほのかが・・・浮気?
そんな馬鹿な事、あるわけないだろう?
と首を振り、嘘だ、見間違いだとうわごとのように繰り返す。
でも昨日のことといい、
心の一部ではあれはほのかじゃないか、と思う自分もいる。
そんな俺の背中を、明日菜は俺が落ち着くまでゆっくりとさすってた。
そうして俺は呆然と座り込んでいると明日菜が、靴を脱ぎ、靴下になるとフードコートのイスの上に、両腕を組んで仁王立ちした。
対宇宙怪獣用戦艦の甲板で仁王立ちする決戦兵器がこんな立ち方して登場するよなぁ。
キリッとした顔で、明日菜が告げた。
「ボクの名前は明日菜。君は・・・寝取られている!」
「ロンリーウェエエエイ!!!!!!!!!!」
そのポーズとその立ち方でそれかよ、と落ち込んでいたはずなのに思わずツッコんでしまうのだった。悔しい・・・けど少し元気出た!
朝に投稿と言いましたが、書きあがっているのでお昼にご飯を食べながら読めるように予約投稿しておきました!