追想2.
最初はものがなくなるという些細なものだったが、
気づくと上靴やノートがなくなるようになった。
結果から言えばあの時転校していった女の子をいじめていた女子が犯人だったのだが、
俺の様子がおかしいと思ったところで動いたほのかに助けられた。
女子の動きに目を光らせ、俺の物をゴミ箱に捨てているところを拿捕し、
俺に嫌がらせする女子に真正面から文句を言ったのだ。
ぼろぼろとなきながら、「しょうちゃんは何も悪いことをしていないのにどうしてそんなことができるの??」と叫ぶほのかに、クラスの一同は押し黙った。
女子たちがやっていた事は逆恨みでしかないので、
俺の私物を隠したり捨てていた女子生徒とそれに関わった女子は、
親を呼び出されて再度注意を受けていた。
ほのかの頑張りで、女子からのいやがらせはなくなったのだが、
それだけでは終わらなかった。
ノートがないぞ・・・とノートを探していたら、
教室のゴミ箱にビリビリにされた俺のノートがあった。
それをみてゲラゲラ笑う男子に、
あー・・・今度は男子からの報復だな、と思いつつ、
代わりのノートどうしようかなぁと悩むのだった。
そういえば転校していった女の子をいじめていた主犯格の男子は、
俺に嫌がらせをしてきた女子の事が好きだなんて言われてるから、
理由はそのあたりだろうね。
どうやって解決しようかなぁ・・・。
その日の昼休み、一人の女子に話しかけられた。
「ねえ宮田くん、・・・まだ、何か困っていることない?」
この子はサヨちゃん。
ほのかとは幼馴染の男子がいる同士で気が合うのか、
よく一緒に行動している子だ。
本当はサヨコというのだけれども、
ほのかがサヨちゃんと呼ぶので俺もサヨちゃんと呼んでいるのだ。
「んん・・・?いやぁ、別になんもないぞ」
余計な心配をかけてもなぁ・・・と頭をかきつつ答えると、
「ヤハリソウイウコトカ」
という声とともに、ツカツカツカ・・・と唐突な早歩きで歩いくる男子が一人。
面長な顔のイケメンのこいつは橘 歯車連くん。
このサヨちゃんの幼馴染で、俺自身も、
お互い幼馴染の女子がいる同士で仲が良い。
なので俺、ほのか、サヨちゃん、ギャレンくんはお互いに仲が良いのだ。
ギャレンくんはじっと俺をじっとみつめると、
「その純粋さを利用されないようにしろ」というと席に帰って行った。
何を言いたいのかよくわからないときがあるが、
今回はきっと心配してくれたのだろう。
やっぱりお前いいやつだぜ橘さん!
そんな日々がしばらく続いたある日、
体育の時間にそのことは起きた。
男女別ドッヂボールの時間で、俺以外の男子が、俺だけをボールで狙ってくるようになったのだ。
同じコートの仲間も、ボールを受け取れば露骨なパスボールで相手にボールを回す。
全員が俺を狙っているなぁ、と思い、
これどうするかな・・・と考えていると俺とボールの間に割って入ったやつがいた。
「カテゴリー8か、面白い」
ギャレンくんだ。
カテゴリー8ってなんだぁ?と手加減について聞く伝説超異星人のようなリアクションをしてしまう。
ギャレンくんはよくわからない言葉を話すときがあるんだよな・・・。
そうしていると、ギャレンくんが受け止めたボールをすごい勢い投げ返して相手を当てた。
「-------ヒドォオジョクッテルトヴッドバスゾ!」
ギャレンくんを中心に熱風が吹いたような怒気に、
俺とギャレンくん以外の男子がビビッて動きを止める。
「なんだよお前、村田をかばうのかよ・・・てめえら、まとめてやっちめぇ!」
あの子をいじめていた男子だ。
その声に、周囲の男子が俺たちを取り囲むような動きをする。
ボールを行き来させながら内外から狙ってきた。
コートの中にはいつのまにか俺とギャレンくんだけになっており、2対その他という異様な様相だ。
ちらりと教師の方を見るが、
女子の方がわちゃくちゃと盛り上がっていて担任の教師は女子のほうにかかりっきり。
こちらを見ていないため助けは望めない。
「お前、あいつらにいじめられてるだろ」
ボールを回避しながらギャレンくんが言う。
「いい、わかっている。
----転校していったあの子がいじめられているのは俺もサヨコも薄々感じていた。
だけど何もできなかった、いや、しなかった」
俺に投げられたボールをギャレンくんがかばって受け止める。
「自分達がいじめられるのが怖かったからだ。でもお前はあの子を助けた。
だから今度は俺が・・・俺たちがお前を助ける!
もう見て見ぬふりはしない-----辛味噌!!」
辛味噌ってなんだろうと思っていると、
そう言って投げられた剛速球が相手の男子の腹にめり込み、崩れ落ちる。
あの子と俺ををいじめていた男子だ。
「ギャレンくん・・・」
---------それ、やりすぎじゃね?
感動的でとてもうれしい気持ちだけれども、尻を上に崩れ落ちてビクンビクン痙攣している男子をみるとちょっと可哀想になってしまう。
あ、ショワアアブチュッブリュッブリュリュリュリュと漏らしはじめた。
よっぽど痛かったのだろうか・・・南無。
辛味噌脱糞事件と名付けられたこの事件で男子からのいじめはなくなった。
件の漏らしてしまった男子はショックだったのか不登校になり、
その後暫くして隣町へ転校していってしまった。
脱糞男子は最後まで俺やギャレンくんに謝らず、
恨めしそうな、憎しみを込めた目つきで睨んで去って行った。
別に俺は謝ってくれればそれで許したんだけどね・・・。
その後ほかの男子達から謝罪されて、俺はそれを許していった。
人間誰だって間違えるものだしな!
そんな事もあり俺のいじめはおちついたのだった。




