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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異界管理官メイの見文録(仮)

かくれんぼ少女の薄幸、または隠れさせ妖女の執行

作者: 者別


「おじょうちゃん、こんなところでどうしたんだい?」

 ……あの時、空き家? の物陰にかくれていた私は、声をかけられた。



「お父さんやお母さんはいっしょじゃないのかい?」

「……ともだちとかくれんぼしてるの」

 今にして思えば、家の持ち主かどうかもわからない不審者にそんなことを答えるべきではない、というかさっさと逃げるべきシチュなんだけど。

 その時は子供だったから、まだ小学校へ上がる前の話なのだから仕方がない。



 だけど、そのときのことは、今でも……鮮明に覚えている。



 声をかけてきた男はいきなり私の手首をつかんで、顔をなめて? きた!


 近づいてきたおっさんのキモい顔と、ヌメッとした感触の気持ち悪さに私は思わずつかまれてた手を振り払おうとした。

 すると自分でも意外なほど力強く、変質者の手を引きはがすことができていた。

 けれどその時は無我夢中だったから、そんなことはお構いなしにあわてて逃げ出した。


 なにあれ!?

 わかんないけど、キモい!


 私は空き家? から飛び出して必死で走った。

 けれど、逃げても逃げても……走っても走っても、どんなに全力で走っても……男が追いかけてくる。そんな足音が聞こえていた。


 こわい、キモい、こわい!


 こんな時に限って、助けてくれそうな人もいなかった。自分と男以外には誰も見つからない!

 逃げるしかない、と考えた私はひたすら走った。


 わっ!? ……あぶなかったあ


 コケそうになって、なんとか踏みとどまったためにちょうど足の止まった私は、息を整えながら後ろを振り向いてみた。


 まだいるかな……わ、ふつうにいた!

 こわい、キモい、こわい、こわい、こわい!!


 得体の知れない恐怖と気持ち悪さにゾクゾクと震えながら、自然と足が動き出していたのをよく覚えている。



 どれだけ走ったかわからない、胸とのどが痛くて、息が苦しくて、目がかすむ……

 かすんだ目で、やたらカラフルな色をしたカベを見た。


 あお、あか、みどりのシマシマもよう……たてもの? おみせかな?


 私は息も絶え絶えになりながら、見つけた建物に駆け込んだ。

 誰かいれば、助けてもらえるかもしれない……そう考えた私は建物の中をよく見もせずに、夢中で駆け込んでいた。



「誰?」

 女の人の澄んだ声がきこえて、声のしたほうに目を向けると……そこには黒い服を着たお姉さんがいた。


 お姉さんの声がとてもきれいだったことを覚えている。

 それと、お姉さんを見た瞬間にギャン泣きしたことも。



「大丈夫、大丈夫だから」

 お姉さんは泣きじゃくる私を抱きしめ、頭をなでながら何度もそう言ってくれた。

 押し付けられた柔らかな胸はなぜか……母とは比べられないほどに、まるでお姉さんこそが本当のお母さんのような……そう感じさせる、自然な温かさと匂いがした。

 そう感じると、すごく安心して……すごく眠くなった。


「大丈夫だから、今はおやすみ」





「ごはんよー」


 …………いつの間にか私は、家のベッドで眠っていた。


 多分、あのお姉さんが家まで運んでくれたのだろうと勝手に納得した。



 その後、翌日の夕方……前日に私が遊んでいた辺りで死体が見つかったらしい。

 中年男性の絞殺体。


 後で調べて知った話では、周辺に生えているものらしき草が束ねられて、緑のひも状にねじられていて……それが、死体の首を強く締めつけていたらしい。

 ただ、それ以外には何の手がかりもなく、十年以上過ぎた今でも有力な情報は一切寄せられていないらしい。

 

 被害者は、私を追いかけてきた不審者だったのだろうか?

 被害者の顔写真が見つからなかったから、確かめようもないけど。



 ただ、あのとき私はなぜか……


 あのおねえちゃんのことは、だれにも だれにも おしえない。ぜったいに。


 誰かからあそこで遊んでいたことをきかれても、あのお姉さんのことは、絶対に、何があっても、誰にも言わない。

 そのことだけを、幼心に強く決心していた。


 ……けど結局、そんなことは誰にも聞かれなかった。周囲の人が、きっと気を使ってくれたのだろう。

 なぜなら…………それどころではなくなったから。

 次の日、事故で父が亡くなったから。



 父のことは、もうよく覚えていないけど。

 多分優しかった記憶があるし、少なくとも嫌いじゃなかった。




 小学校に上がって、父のことが少し落ち着いたころ……ささいなことで母とケンカした私は、あのお姉さんに会いたくなった。

 私は放課後や休みの日に、あのときの小屋がありそうなあたりを歩き回った。けれどいつ探し回っても、何度探しても……あの派手派手しい色を塗られた壁の建物は見つからない。


 結局、数年の間……お姉さんには会えなかった。



 次に、お姉さんと会えたのは……あの日だ。


 あれは小学校六年生の夏休み前。あの日のことは、どんなに忘れたくても……忘れようとしても、忘れられないだろう。




 母は突然、家に男を連れてきた。

 母はその男が、私の新しい父親だと言った。


(えみ)ちゃん、よろしくな」

 私の前で屈んで、目線の高さを合わせてそう言ったあの男の目は……なぜかとても気持ち悪く感じた。

 なぜか子供の頃を思い出して、とても気持ち悪くなった。


 今にして思えば、あれは私に向いた欲望を感じ取っていたのだ。

 けどそのときは、()()が何を意味しているのかまだよくわからなかったから、どうしようもない。



 そして、三人で家に住み始めて三日めの、日曜日の朝。


「ちょっと買い物行ってくるから、留守番よろしくね」

 そう言って母がひとり外出した……たぶん、それが引き金だった。


 リビングでテレビを観ていた私は突然、突き飛ばされた。

 私は床に倒されながら、自分を突き飛ばした力の側へ目を向ける。


 目の前にあの男がいた。

 そう気付いたときには、男にのしかかられていた。


「えっ、なに……」

「静かにしろ、静かにしろよ」

 重いし、あつ苦しい。


「なに、なによ!? やめてよさわんないでよ!」

「うるせえ静かにしろ!!」

 手首をつかまれながら怒鳴りつけられて、ビクッとした……のを感じたと同時に、頬にヒリヒリした痛みが走った。


「痛った!? なんなの!? ちょふざけんな!」

 私は思わず空いた手で頬を押さえながら怒鳴り返していた。すると男の舌打ちが聞こえた、気がする。

 その直後、お腹にギュッとした痛みが走った。


「あゔっ、うぅ……げっ!?」

 変な声が出た……と思ったところで、お腹の痛みがもう一段強くなった!


 いたい、いたい! やめて、なぐらないで! こわい!


 私は、痛みと恐怖で目をつぶっていた。

 シャツを首のあたりまでまくられたような感覚がしたけれど、また殴られるのが怖くて、必死に声を抑えた。



 やがてお腹の痛みがやわらいできた。

 すると、目をあけなくても身体を触られていることがわかってしまう。そして、次に腰へ手をかけられたことがわかってしまう。下……ハーパンを脱がそうとしているのだろうか?


 いや、やめて……こわい、いやだ、こわいよ…………


 けど私は痛みよりも怖さで、目をあけられない。大した抵抗もできなくなっていた。



 たすけて、たすけて……



 カチャリ


 鍵を回したような音とそれに続く足音が、その時はまるで救助隊の声のように聞こえた。


「ヤバい、財布なくしちゃったかも!? ねえ二人とも知らな……って、えっ!? えっ!?」


「ち、ちょっと!? 何してんのよリョウ!!」

 母の声が聞こえて、男が軽く振り向いたのが見えた。

 私は目をあけて、とっさに手を伸ばした!


「ぐぁっっ」

 男の悲鳴が聞こえて、男が顔をおさえて起き上がったのが見えた。

 私は指にからみつくような生温かいぬめりを感じながら、男の下からはい出した!


「うあ痛えッ、め、目ェッ!? 俺の目!?」

 男が私を捕まえようとやみくもに手を伸ばしてくる。私は逃げることしか考えられない!


「うっ、ぐっ、待てよテメェ!!」

 私は靴をはくのも忘れて裸足のまま、全力で外へ走り出した!



 どれだけ走ったかわからない、足と胸とのどが痛くて、息が切れて、頭がクラクラして目はかすむ……

 かすんだ目に、やたらカラフルな、派手な色合いの壁が映った。

 どこかで見たような、青、赤、緑のシマ模様……



 そう思ったところで、フッと力が抜けた…………



「誰?」

 聞き覚えのある声がして、私は気が付いた。

 とてもきれいな声。あのときと、おなじ。


「あなたは……」

 あのときのお姉さん……なの?

 見た目も声も、あのときとまるでおなじ。


「……友達とかくれんぼしてるの」

 お姉さんは真顔でそう言った。

 なにを言っているのだろう? と、よく見ると……お姉さんはなぜか、母の使っていた財布によく似た小物を手に持っている。


「貴女は追われているのでしょう? とりあえず、友達の代わりに隠れなさい」

 続けてお姉さんはそう言って、空いた手で私の手を引いた。

 私は疲れと安心感からか、小物のことを聞くどころか抵抗する気にもならなかった。



 お姉さんに連れてこられた部屋は、四方の壁が白く光る小さな部屋だった。


「あなたは、どうして……」

 どうして、私が追われているとわかったの?


「大丈夫、大丈夫だから……わからなくても、大丈夫だから」

 質問はさえぎられた。


 部屋に閉じ込められた私はまた、フッと力が抜けて……部屋のすみでズルズルとへたりこんだ。




 次に気が付くと私は、知らない部屋のベッドで寝ていた。


 あとで警察官から聞いた話では……私は路上で、あの男()()()死体の横で倒れていたらしい。

 文字通り首から上が無くなった死体のすぐそばで、そこから吹き出す赤い血を無防備に浴びて倒れていた……のを、母が見つけたらしい。


 けれど、警察官から死体について話を聞かれた記憶はない。


 死体の様子から、明らかに子供は犯人たりえない……司法解剖の結果、死体は重機かなにかの、相当に大きな力を受けて頭部を吹き飛ばされたものと推測されたそうだ。

 しかし当日の現場付近では重機を使った作業どころか、大型トラックの一台も走っていなかったらしい。


 この事件も、他には何の手がかりもなく……七年過ぎた今でも有力な情報は一切寄せられていない。と、聞いている。




 私は中学進学まで学校を休むことになった。

 少しの間だったけど、男の人が怖くて外に出られなくなってしまったのだ。


 とは言っても、少し休んでからは……男の人でもたとえばクラスの子とかおじいちゃんとか、あいつみたいな()()()を感じない人が相手ならなんとか普通に話せるようになった。

 それで私はなんとか、正気でいられた。



 けれど、母は壊れてしまった。


 母は、普段は無気力にただ座っていて……私の姿を目にしたときだけ元気になった。

 ……金切り声をあげながら私に掴みかかるか、近くにある物を投げつけてくるのだ。


「この泥棒ネコがあ! あたしのリョウを返せッ! がえぜぇっッ!!」

 私に暴力をふるおうとするときだけ、母は元気だった。



 私は、そんなつもりじゃない。

 私は、とてもこわかったのに。


 私のことを、心配してもくれない母親。



 初めのうちは、母の相手をするたびに泣いていたけど……いつしか母の態度にも慣れてしまった。



 働けなくなった母と私はNPO? の人の助けで生活保護を受けるようになって、私は家事と母の世話をしながら中学に通った。

 前の年の正月までは毎年訪ねてきて、お年玉をくれていた親戚は誰一人家に来なくなった。連絡すら取れなくなった。



 中学では、校舎にいる間はだいたい疲れて寝ていた気がする。

 だからかどうかは分からないけど、特に誰かとおしゃべりしてた記憶もないし、友達らしい友達もできなかった。

 ……きっと、陰でいろいろな噂話もされていたのだろう。



 そして母の様子は、一年、二年と……時間がたつにつれて悪くなる一方だった。

 カウンセラー? の医者は「時薬(ときぐすり)とはよく言ったもので、時間がたてばだんだん落ち着いてきますよ」なんて言っていたけど。


「どろぼネコぁ! あだおどこかえ゛ぜぇッ!!」

 私に暴力をふるおうとするときだけ、母は身体を動かすようになっていった。



 返せるものなら、いますぐ返すよ。

 だから、私の居場所も返してほしい。


 どこかにあったはずの、私の居場所。



 私は母の世話をしながら、休みがちながらなんとか中学を卒業した。


 その間、私は何度も路上であのお姉さんのような声を聞いた。



 ふふ……や…………とても……つよ…………ころ……ちか…………



 その微かな声を聞くたびに、私はお姉さんに会いたくなって……立ち止まって辺りを見回していた。


 ……けど大抵は車が、ときどきロードバイクが私の横ギリギリの所を走り去っていくだけだった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ……………………私は、そんな日々を過ごしてきた。

 そして今、中学卒業から四年が過ぎたところ。


 母の介護をしながら定時制高校を出たけれど、特に感動はない。

 卒業証書をもらって半月過ぎたけれど、私の生活は別に……何も、変わっていない。

 まるで回復しそうにない母の介護を続けながら、振り込まれるお金で生活するだけの日々。


 昔のことを思い出してみても、そこに楽しかった記憶は見つからない。

 逆に先のことを考えてみても、そこに明るい未来はありそうにもない。



 ……私の生活には、別に……何もない。


 あるものといえばいくつかの、トラブルとお姉さんの記憶くらいのもの。


 私の中には他に何も。



 私はうつむき暗い気持ちを抱えながら、いつものスーパーへ向かって歩いていた。



「マ、ママ…………マウンテン」

「デュゥーーーーー!!」


 えっ、えっ!? 何こいつ、えっ!?


 気持ちが沈んでて気づかなかった。

 私の行く先には謎の叫び声を上げる裸? いやパンツだけはいてる男がいて、誰かの悲鳴が遠くから聞こえた。


 パンツ男の手には細長い包丁。


「デュゥーーーーー!!!!」

 パンツ男が私に向かって走り寄ってきた!


 ヤバっ、逃げなきゃ……


 と思ったときにはもう、すぐ目の前にパンツ男と包丁があった。


 少しずつ 鋭い 包丁の刃 近づいてきた

 このままだと お腹に 刺さっちゃう

 死ぬ前の スローモーション ってやつ なのかな……


 少しずつ 包丁の刃が

 あっ 先が 服に さわった……


 え 何かが 青い 横から?



 ポスッ、と軽く小突かれたような感覚で私は我に返った。


「ヒーローは遅れて現れる、それがメヒカーノ」

 私の前でキョドるパンツ男とは別の、あの声が聞こえる。 

 予感がして、澄んだ声の聞こえた方向に振り向くと、やっぱりあのお姉さんがいた。


 あの時とも、あの時とも同じ姿と声のお姉さん。



「aquAura」

 どこからか現れたお姉さんはパンツ男を指差しながら、何かをつぶやいた。

 するとすぐに、パンツ男の顔に青く輝くかたまりが被さった!

 パンツ男は息ができないのか、あわてた様子でかたまりに手をかけて、かたまりを叩きながらのたうち回り、そのうちにピクピクと震え出して……止まった。




「大丈夫……良かった」

 お姉さんは私に近づいてきて、私を抱きしめて、うなじの辺りに手を添えてきて



 こ、これって……!?


 抵抗できなかったのか、抵抗しようという気が起こらなかったのか、私にはよくわからない。

 わかったのは、やわらかいこと、あたたかいこと、そしてとても血なまぐさいこと。


 とても血なまぐさくて、気持ち悪い。吐き気がする。

 キスってこんな感じなの……?


 とりま一回どいてもらおう……嫌だからというよりは、早く離れないとお姉さんの顔面にゲロとかぶちまけてしまいそう。



 私は口を閉じつつ手でお姉さんを押しのけようとした。

 けれど口にも手にも力が入らない。いや、力が入らないどころか……口や手が動かせている、口や手が自分の身体としてつながっているという感覚すらない。


 抵抗どころか、いま私には何もできない。



「じゃあ、そろそろ行きましょうか」

 けれど、口を離してくれたお姉さんの声ははっきりと聞こえている。



 それからのことは、私にはよくわからない。


「私と行きましょう。こんな、苦しきことのみ多かりき……憂き世など捨ててしまいなさいな」


 正直言って、もうどちらでもいい……けれど、どちらかに決めたとしても意思表示することはできそうにない。

 身体が動かない、どころか私の身体はどこにも無いかのような感覚。


「親御さんのことなら、大丈夫だから」


 何も無い、どこにも無いのなら……もういいのかな……

 私はもう、どうでもいい。




「あら悲し、想いは果つる、身は捨つる……憂き世の笑みに、満つる時なし」


 いつの間にか、目も見えなくなってきた。










「そろそろ処理終わったぁ? メイ」


 やがてお姉さんとは別の、子供? の声が聞こえてきた。けれど、やはりその他には何も無い。


「ええ、先程お隠れに」

「おかくれ?」

「お嬢さんは、お隠れになりました」



「今のところは……敬意を払うべき、大事なお客様でしょう?」












 二人の声は聞こえ続けている。私はまだここに存在している、ということなのだろうか。



「ところでショボー、聞いてた予定より早いけど大丈夫?」

「こう何回も運命ねじ曲げて引きのばしてると、例のうるさいヤツらがね……そろそろかなって感じ」

「そう、貴女がそう感じているのなら間違いないでしょう」


「それにしても、この子……これだけの(こころ)の力を持ちながら、数度の改変を経てもこの界の人々に(ほとん)ど影響が無いなんて」

「それはまあ人間いろいろ、異界もいろいろ って感じよ」

「うん、それはその通りだし、個人的にはありがたい存在だけど……何というか、憐れに思えてしまう」

「つかあのさあ」


「あわれだかなんだか知らないけどさあ!? 何キスなんかしてんのよこのエロ!!」

「あっ…………いやあれはそのあくまでも口腔内投与、この子への効果的な投薬のためであって」

「メイのバカ! ウワキモノ!!」



 子供のがなり声のあとから、

 ドスッ、ドスッ、ドスッ、ぐちっ、ぐちゃっ

 と……鈍い音がリズミカルに、途中から響きを変えながら繰り返し聞こえてきた。


「いっ痛だだだだ、ちょ待って!? この子落としちゃうから待って今はダメッ痛だい痛だい!」

「うるざいアダシだっでツラいんだぁ!! メイのバカぁ!!」



 私はもう、どうでもいい。

 けれど、聞こえ続ける二人のやり取りはどこか心地よかった。

 心地よくて、ニヤニヤしながらずっと聞き入っていた。

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