ななちゃんと逃避行
2.ななちゃんと逃避行
僕たち二人は、久しく手を繋いで歩く。幼稚園や小学生の頃以来かな。
「どこに行くつもりなの?」
僕が問う。
「私たちのことを知ってる人がいないところ。できるだけ遠くに行こう。」
ななちゃんは、真っ直ぐ遠くを向いて答えた。その目は希望に溢れているものではなく、何かを諦めているような、どこか寂しいものだった。
これからの旅が、ずっと続くものでなく、有限なものだということを諦めているようなそんな目だった。
僕は、少しでもこの、可愛くて、綺麗で、可哀想な幼なじみのために何かしてあげたいと思った。
僕の家である程度の荷物を詰め、二人でてくてくと歩いて、駅に着く。
僕とななちゃんは切符を買った。その瞬間さえも、手をはなすことはなかった。
「夜の逃避行だね〜。私、ずーっと誰かとこうして逃げたかったの!」
ななちゃんは意気揚々と喋る。
「とりあえずちゃんとした服と靴を買おうよ。通帳の中にお年玉のお金があるから。」
「え〜、私のこの綺麗な体があればこの格好でも十分だよ〜。」
ななちゃんは、自分が細くて華奢という自覚があるみたいだ。しかし、そんな格好でいられたら俺が困る。
「…そんな格好の子の横を歩きたくないよ。一緒に逃げるんなら、とりあえず東京で降りよう。服を買って、明日からの逃避行に備えてどこかの満喫で寝るんだ。」
「…私はユ◯クロはいやだよ。可愛い黒のワンピースが良い。高いやつ。」
そう言ってまた、けたけたと笑って見せた。
僕たちの逃避行は、まだまだこれからだ。