第二十七章 亮太、探偵する。
ある日、亮太の昔の親友の友彦から着信があった。
亮太は、「箱入り娘に電話するなと言っただろうが。なにか用か?」と男から電話があれば、変な噂にならないか心配している様子でした。
友彦は、「先日、陽子のどこが箱入り娘だ?あばずれの間違いじゃないのかと指摘しただろうが。それだったら、何故電話番号を教えてくれたんだ?」と不思議そうでした。
亮太は、「あばずれで悪かったな。緊急事態の為だ。何か緊急事態か?」と何事か知りたそうでした。
友彦は、「俺とお前の間に、どんな緊急事態が発生するのだ?じつは、俺は友達の坂下武と二人で探偵事務所を経営している。」と説明を始めた。
亮太は、「ああ、それは昌子から聞いて知っている。それのどこが緊急事態なのだ。昌子で思い出したが、結婚式の準備は進んでいるのか?」と自分が紹介したカップルなので、その後の事が気になっている様子でした。
友彦は、「昌子さんと何箇所か結婚式場の下見にいった。今のところ、どこかの素晴らしい教会にする可能性が高い。しかし、亮太には仲人を引きうけてほしかったな。坂下に、仮の主人になるように依頼しようか?」と嬉しそうでした。
亮太は、「偽物の夫婦が仲人すれば、お前達も、偽物の夫婦にならないか?それは縁起が悪いぞ。」と断った。
友彦は、「亮太、お前いつから縁起をかつぐようになったんだ?何か良い方法はないか考えておくよ。結婚式については、詳細がきまれば一番に亮太に教えるよ。」と仲人についてはまだ諦めていない様子でした。
亮太は、「楽しみに待っているよ。ところで何か用か?」と本題に戻した。
友彦は、「あ、そうそう、緊急事態がどうだこうだと話を逸らすから忘れていたじゃないか。」と不愉快そうでした。
亮太は、「忘れるような、しょーもない用事で電話したのか?」と不愉快そうでした。
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友彦は、「そんな事ない。実は現在、ある女性の調査をしているが、いつも女子トイレなど、男性が入れない場所で見失っている。探偵事務所には女性スタッフがいないのでどうにもならない。恐らく、どこかで着替えたのだと思われる。礼金弾むから、亮太、女子トイレなどにフリーパスのお前の力を貸してくれよ。」と泣きつかれた。
亮太は、「昌子さんに頼めばいいだろう。」と乗り気ではありませんでした。
友彦は、「昌子さんに、こんな事は頼めない。陽子だから頼めるんだ。」と説得した。
亮太は、「何だ?それ。俺だったら良いのか。」と不満そうでした。
友彦は、「そうじゃなく、昌子さんとは、まだ、そんな事を頼める仲ではないのだ。亮太とは長い付き合いだから頼むよ。」と仕事に行き詰って困っている様子でした。
亮太は、「それじゃ、俺が昌子に頼んでやろうか?」と逃げようとした。
友彦は、「間に人を挟めば、何故、直接頼まなかったのかと、昌子から問い詰められて、結婚が破談になったらどうしてくれるんだ!」と余計な事はしたくない様子でした。
亮太は、「仕方ないな。仕事が休みの日だけだぞ。取り敢えず今週末に探偵事務所にいくよ。」と結婚が破談になれば折角紹介したのにと泉に責められそうだったので仕方なく了承した。
友彦は、「ありがとう、亮太。期待しているよ。それじゃ週末待っているよ。詳細はその時に説明するよ。」と調査の目処がついて安心した様子でした。
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亮太は、週末探偵事務所に友彦を訪ねた。
対応した坂下は友彦に電話して、「おい、天女のような絶世の美女が、お前を訪ねてきたぞ。俺が相手しておくから早く戻ってこい。」と予想外の来客に慌てていた。
しばらくすれば探偵事務所に友彦が戻って来て、「陽子、今日は来てくれてありがとう。頼りにしているよ。」と亮太に感謝していた。
亮太は、「待っているといっていたのにどこに行っていたのだ?本当に期待されているのかな?」と疑問に感じている様子でした。
坂下は、「お前が呼んだのか?こんな美女を呼んでおいて待たせるとは失礼じゃないか!しかし、お前にこんな美人の知り合いがいただなんて知らなかったよ。紹介してくれよ。」と嬉しそうでした。
亮太は、女子トイレなど女子力を強調する必要があると判断して、泉が選んでくれたブリッコ服を着て来たのは失敗だったかな。と坂下の視線を気にしていた。
友彦は、「それはこの仕事が終わってからな。今回の仕事は、男性の入れない場所でいつも見失っているから陽子に頼んだ。依頼者には、出張中の女性調査員が戻ってきたので任せて下さいと説明している。坂下、留守番頼んだぞ。おい、陽子いくぞ。」と友彦は亮太と調査に向かおうとした。
亮太は、「天女のような絶世の美女をこき使うなよ。」と不満そうに友彦と出かけようとしていた。
友彦は、「おまえのどこが絶世の美女だ。あばずれの間違いじゃないのか。」と笑いながら亮太と出かけた。
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移動途中、友彦は、「彼女は週末の夕方に出かけている。帰りが遅いので、風俗などの仕事をしてないか心配した両親が、彼女に直接確認したが、「私を信じて。」と何も答えなかったそうだ。それで心配した両親から調査依頼された。」と説明していた。
調査対象の自宅に到着して待機していると母親から着信があった。
「探偵さん、家の前にいるのでしょう?今でていったのでよろしくお願いします。」と期待している様子でした。
友彦は、「はい、今、家の前にいます。以前説明させて頂きましたように、今回は女性調査員と同行していますので任せて下さい。」と安心させて電話を切った。
玄関から出て来た調査対象を見て亮太は、「えっ!?彼女は総務部女子社員で、真由美の横に座っている石頭の堅物女じゃないか。名前は、確か石川照子だったかな。彼女にどんな裏の顔があるのだろう。」と亮太も調査に積極的になった。
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駅の公衆トイレに入ったので、亮太も入り洗面台で化粧直しをしているとトイレから出てきた。
亮太は面識があるので、慌てて顔を隠して、あんな真面目な堅物女が、あんな派手な服を着るとは驚いた。矢張り風俗かな?何するんだろう。と思いながら、トイレの外で待っていた友彦に、タクシー乗り場で待っている変装後の彼女を教えて、タクシーに乗車した彼女を車で尾行した。
友彦は、「しかし、変装前と全然違うじゃないか。あれじゃ、見失うな。」と何故見失ったのか納得していた。
亮太は、「何言い訳しているんだ。着替えた事が解っていたんだろう?荷物があるだろう。同じカバンを持っていたじゃないか。全然違うから変装した意味があるんだ。違わなければ変装する必要はないだろう。」と指摘した。
友彦は、「それは結果論だ。今だからわかったんだ。」と逃げた。
タクシーは山奥の淋しい場所に向かった。
亮太と友彦は、「どこにいくのだろう。こんな淋しい場所で風俗は考えられない。何かの秘密クラブかな?」などと雑談しながら尾行していると、タクシーはやがてスナックの前で停車した。
照子は勝手口からスナックに入った。
亮太と友彦は、「勝手口から入った事を考えると、スナックの従業員かな?」と想像していた。
「こんな山奥の人通りもない淋しい場所にスナックがあったとは驚いたよ。客は来るのかな?従業員を雇う余裕があるとは信じられないよ。本当にスナックかな?秘密クラブかもな。」と、このスナックには何か秘密がありそうな予感がしていた。
「それだったら、会員制だとか何か書いているだろう。でないと普通の客が来るだろう。採算を度外視してまでここにスナックを開店する理由が何かあるのではないか?」などと雑談しながら、友彦はスナックに入ろうとしていた。
亮太は、「彼女は石川照子で、うちの総務社員で面識がある。俺が入るのはまずい。お前一人で入れ。商社の社員だった頃は、女子社員は制服だったので、このブリッコ服は、彼女に見られてないし、男っぽい俺が、まさかこんなブリッコ服を着ているとは思わなかったのだろう。気付かれなかったよ。」とスナックに入る事を拒否した。
友彦は、「えっ!?そうなのか?了解した。そうか、ばれなくてよかったな。ここで待機していろ。」とスナックに入ろうとしていた。
亮太は、「待機?スナックに客として入れば時間がかかるだろう。俺は一人で待っているのか?俺の役目は終わったから帰るよ。お前、スナックで飲めば車の運転はできないだろう。車は、俺が乗って帰る。お前は電車で帰れ。」と亮太は友彦から車のキーを受け取りここで別れた。
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数日後友彦から着信があり、「先日はありがとう。今回の調査は、両親に娘さんがスナックで静子という名前でアルバイトしていると報告書を郵送して終了した。その後、電話で、そのスナックには何か秘密がありそうなので、娘さんの為に追加調査しようとして相談したが、両親は、スナックの名前か場所かオーナーか何かわからないが、俺が提出した報告書から何か心当たりがありそうな口ぶりだった。あとはこちらで調べると断られたよ。礼金を渡したいので喫茶店で会おう。」と連絡があり、週末喫茶店で礼金を受け取り雑談していた。
友彦は、「結婚式の仲人は亮太に頼みたかったが、夫婦じゃないとお前から断られた。どうしても亮太に仲人をしてもらいたいから神父さんやお互いの両親や昌子とも相談した。仲人は夫婦でなくても良いそうだ。泉さんとは夫婦のような関係だろう?泉さんにもお願いした。亮太とだったらいいと引き受けてくれたぞ。」と仲人を引き受けるように説得していた。
亮太は、「俺でいいのか?何を喋るのかわからないぞ。」と笑っていた。
友彦は、「お前を信用しているよ。それに泉さんがいるから大丈夫だろう。俺達を引き合わせてくれて感謝しているよ。」と依頼していた。
亮太は、「わかった。引き受けるよ。」と引き受けた。
友彦は、「ありがとう。それじゃ、お願いするよ。話は変わるが、亮太、誘拐事件や詐欺事件などに首をつっこんでいるようだな。今回のような事もあるし、俺の探偵事務所で非常勤の調査員を引き受けてくれないか?」と依頼した。
亮太は、「今回のように、その都度話をすればいいじゃないか。俺の名前が週刊誌に掲載されたので、探偵事務所のスタッフとして名を連ねて広告塔に使おうとしてもダメだぞ。」と断った。
友彦は、「そうか。わかった。そうするよ。今後何かあったら頼むよ。」と読まれている。と諦めた様子でした。
次回投稿予定日は、6月17日を予定しています。